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星に願いを…②~しし座流星群~ [あの日から今日まで]

”彼”の仕事仲間である裕樹クンの家は郊外にあり、周囲を取り巻く環境は、星を見るための条件を充分に満たしていて、リベンジマッチに期待は膨らんだ。

ところが!招き入れられたそのスペースはというと、どう見ても”単なるワインパーティー”で…どうやら流星群はオプションらしいと すぐに理解できた。

「星の期待は薄いな…(笑)」と小声で私に伝える彼。

「充分…(笑)」私もつられて小声で返す。

こんな時間を過ごせる事すら考えていなかったのだから、私としても”流星群はオプション”で充分な気持ちだった。

そうして、気持ちを切り替えた私は、キッチンで孤軍奮闘している夏ちゃん(裕樹クンの奥さんである)の助っ人として協力を申し出た…。

料理をはじめ家事全般は得意だ…。それもこれも、≪女の子は勉強が出来る事より、家の事が出来る方が大事≫そう断言して憚らなかった、時代錯誤も甚だしい”父の教え”によって培われたものである。

勉強しろ!と言われるよりいっか…くらいの気持ちで母のお手伝いをしていた結果、今こうなってみると、やはり”感謝”しないではいられない。

”こんな光景”にどれだけ憧れて来た事か…キッチンから眺める大好きな人の笑顔…。

その時、夏ちゃんが「雅サンのあんな顔、初めて見たよ。」と言うのだ。

私が不思議そうな顔をしていると、続けてこう切り出す…。

「裕樹から”前の話はするな”って言われてるけど、これだけは言ってもいいかな…?今まで結婚してた時もね、雅サン一人で来てたの。前の奥さんはこういう雰囲気が苦手な人だったのね、だからひょっこり現れて、人知れず帰る…みたいな感じだったから…。」

「そうだったの…。」 

「ごめんね…嫌な話かもしれないけど、でも本当にみんな喜んでるのよ。美由ちゃんが一緒に居てくれるようになって。だから、雅サンからも私たちからも離れないで仲良くしてね…。」

「はい。もちろん!こちらこそよろしくお願いします。(笑)」

「よかった。ごめんね、もう二度と前の話はしないから。」

”彼”が大切にしていて、”彼”を大切に思ってくれる、この仲間の一人として私の場所が用意されていると感じさせてくれた彼女の言葉は、とても温かく私の心を包んでくれた。

 一頻り騒いだ後…。

メインのワインパーティーが終了すると、帰宅組と宿泊組に分かれ”流星群”のことなど忘れ去られてしまっていた。

私は忘れていたわけではないけれど、この”ふんわりした雰囲気”を壊してまでこだわるコトでもないな?と思い言及を避けた。

午前3時…。少しウトウトしたかな、というところで”彼”が私を揺り起こす…。

「美由…。星は?」

 「もういいよ…。」

「お~い!流れてるって!!!」

「えッ嘘ッ

「今、俺が見たので最後だったりして…(笑)」

「そんなコトないよぉ~”群”なんだから

「都会じゃそれほど期待しても…まっいっか、少し待ってみる?」

 毛布とコーヒーを持って部屋から続くウッドデッキに出てみると、夜明け前の一番暗い空が巨大スクリーンのように広がっているだけだ…。

”期待できない…”といいかけた”彼”の言葉が正解かなぁと思ったけれど、ひとつの毛布に包まっている、毛布から出ている部分だけがピーンと冷たくて、心と体がアッタカイこの感触は捨てがたい。

≪こんな感じでずっと側に居られますように…。≫流星をひとつだけでも見届けられたら、これだけは願いをかけなければ!と気合を入れ直して眠気を飛ばした。

「あのさ…別に星じゃなくてよくない?俺に直接言った方が早くね?」

 心の距離が近いと、こんなにも気持ちは見透かされてしまうものなのかな?

どうあがいても、お互いの言葉や行動が噛み合わなくて幾度はがゆい想いを繰り返したか知れない…。

今思ったことなのに、ともすると言葉に出すより正確に伝わってしまうのだ。

「いいの、いいの。私たちには時間がいっぱいあるじゃない?一度、星に願いを預けるくらいでちょうどいいんだから。(笑)」

”彼”にプレッシャーをかけるつもりなど更々なくて、それだけ、焦ってはいないと伝えたかっただけだ。

それなのに「笑えね~!」”彼”はちょっとふてくされ気味に言う。

やっぱり言葉が邪魔になる時ってあるのよ…。

その時”恋の神様”が絶妙なタイミングで流星群に”キュー”を出してくれたのか…

2個の星とそれに連なるように、もう1個…星が流れた

 「ねぇ見たよね星、流れたよね (もう、あわわな私)

「つーか!報告はいいから…(笑)あ~あ、消えた…。」

アレって、流れてる間に願い事を唱えるんですよね? はい!!!リベンジ失敗

「やった俺は間に合った(笑) 残念だったねぇ~」

「いやだぁまたすぐ来るよね?」

「知らね…。何度来ても、美由は同じだよ(笑)寝ようぜ!!!」

今度は私がふてくされた…でも、時間はもう限界。少しは”彼”を眠らせてあげなければ仕事に差し支える。 それならいっその事≪現れなきゃ諦めついたのに≫と逆恨み気分でお布団に入る。

ね、雅サン。何をお願いした?」

 「いい加減”サン”付けで呼ばなくなるように…と美由の”アホ”が治るように頼んだから(笑)次はちゃんと間に合うって…。」

「そんな事?もったいないそれに次は33年後だよ。」

「もったいない?どっちがだよ(笑)何にも出来なかったくせに。」

「あっ!そっか。あと1個は?」

「”アホ”な人の願い事が叶いますように…。って言ってたら美由がしゃべり掛けたから、却下されたかもな…(笑)」

それって…。”アホ”=私と認めれば、私のリベンジは”彼”が果たしてくれたというコトになる? それにしても…”アホ”は微妙…

途切れた願い事が一番大事

≪ずっと一緒にいられます様に…。≫           

 2012年の”金環食”も、33年後の”大流星群”の時も隣にいるのが”彼”と私だったら今を急いだりしません…。そんな思いで、寝息をたてる”彼”を見ていたら、さっきよりもっと”ふんわりした雰囲気”になった…。

   この時すでに”激震”へのカウントダウンがスタートしているとは思いもせず…

 

 

 

 

 

 


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