ママの愛~愛のバトン~ [あの日から今日まで]
母を引き止める術もなく、かといって後を追うことすら出来ないいまま、その場所に取り残された…。
≪このままではイケナイ!!!≫その気持ちはあっても動けない。
私の恋を”悲しい恋”と言って涙を流し…会うことすら拒絶した母の落胆を受け入れられないでいる不甲斐無い自分に腹が立った。
その事を”彼”に伝えると…。”それくらいの覚悟はあった”と言い、それでも今夜会って話をすることを諦めないと言う。
そして言われるまま、私はその場所で一人”彼”の到着を待つこと十数分…。
私と”彼”が合流したのを見ていたかの様なタイミングで携帯が鳴った。
「二人揃ったみたいね…。」
「ママ…帰ってなかったの?」
「美由…ママに一時間だけ時間をちょうだい。一時間したら、家に帰ってらっしゃい。」
「二人で?」
「そう…。ただし!ママが彼に何を言っても美由は何も言わないって約束できるならね…。」
携帯から漏れて聞こえる母の声に耳を傾けていた”彼”が≪うん、うん≫とうなずいて≪そう返事しろ…≫という合図した。
「わかった…。じゃあ一時間後ね。」
この電話の後、すぐに店を出た私たちは家までの距離を歩くことにした…。
「どうして、俺が来るまで待たずに全部話したの?」と静かに尋ねられた。
”彼”にしてみれば、自分の口からきちんと話したかったのかもしれない…。
でも、”彼”の気持ちを全面的に受け入れた、その気持ちを私の言葉で語るべきだと思っていた…と答える。
「じゃあ…後は俺とママの話でいいって事だね?俺が何を言われても美由はママに何も言うなよ…。」
勤めて冷静に話してはいるものの、”彼”の手はいつもならこんなに汗ばんではいない…心は平静を保てないでいることを”繋いだ手”が教えてくれた。
少し時間を持て余した私たちは、帰り道を外れてどちらからともなく公園を通って迂回した。”三ヶ月前のあの日”お互いの気持ちを確認した場所だ…。
何も言葉を交わすことはなかったけれど、この場所を通った事で”彼”は私の気持ちを、私は”彼”の気持ちを再確認出来たと思う。
≪どんな非難の言葉も全て受け止めよう…それでも変わる事のない気持ちがココにある…。≫
煙草を一本吸い終えた”彼”が「行こうか?美由は大丈夫?」と言った。
その言葉は、私にではなく”彼”が自分自身に言っているように思えた私は「大丈夫!!!」と確かな口調で答える。
家に帰り、母の顔を見て驚いた…。
私の告白に、肩を震わせて涙を流していた”弱く、小さく見えた母”の姿はもうなくなっていたのである。嫁ぎゆく妹を見つめていた時と同じ”凛とした母”の姿がそこにあった…。
「ひとつだけ正直に答えて…。お子さんと美由、どちらか一方の手を引いて守らなければならない時、アナタが美由の手を引くことはない。そういうコトですよね?」
「そうです。」
「わかりました。亡くなった主人が”お前たちが何より大事だとアイシテル、アイシテル”そう言って守ってきた子です。その子が選んだと言うのであれば、主人から預かっただけの私は何も言う事はありません。」
「それは…”許す”というのとは種類が違いますね?」
「二人で決めた事で、それが幸せだと思えるなら私の賛成などいらないでしょう?」
「いえ、大事なことです。今すぐにとは言いません…でも、いつかはそう言っていただけるように二人で頑張りますから…。」
そう”彼”が言うと、母は立ち上がり部屋を出ようとした…。
「ママ!!!待って…。」と私はたまらず口を挟む。同時に私の腕を掴みそれ以上の言葉を静止する”彼”。
しかし、母は”何か”を手にしてすぐ部屋に戻って来た…。
「”二人で頑張る”と言ってくれるなら心配はしません。この子も、そしてこの子が選んだアナタの事も信じます。 今夜、アナタにこの子を差し上げます。そして、もうしばらく今度はアナタからこの子を預かる…そういうことでいいですね?」
そう言うと、母は手にしていたモノを”彼”に渡した。
見ると…私の母子手帳それから、父がはめていた結婚指輪。
「そこに書いてあるのが、私が一番最初にこの子にかけた”愛情”です。」
そう言われて”彼”は母子手帳を開く…。
≪19××.1.18 午前3時≫
女の子…この子もいつの日か、この痛みと苦しみを味わうのか
でもこんな温かい幸せを抱けるなら、女の子でよかったな。 母
”彼”の目から大粒の涙がコボレタ...。
「私には出来なくて、アナタには出来る事があります…主人がしてきたように、これからはアナタが”アイシテイル、アイシテイル”と言って側にいてやって下さいね。そうすればこの子はいくらでも頑張る子ですから。」
そう言って”彼”に父の結婚指輪を託し、深々と頭を下げた母を見て、私も涙が溢れ出した。
「わかりました…必ず…。」
父と母からの愛のバトンを”彼”が受け取ってくれた日…。
お帰りなさい!
母親はやっぱり偉大ですね。
by 小島澪 (2005-11-13 01:19)
Re:澪サマ
ただいまm(__)m
ご忠告いただいた通りコメントの受け取りに制限をして帰って来ました。
母は偉大…まさにその通り。いくつになっても、親と子のスタンスは変わらない。
生意気な事を言えるようになっただけ…そんな気がしています。
一生、追い越すことが出来ない”人生のライバル”かな(笑)
by mi-mi (2005-11-13 17:19)
素敵なお話ですね。
感動しました。
私もまだまだ母には追いつけそうもありません・・・。
彼もとっても素敵な方でうらやましいです。
by siomame55 (2005-11-16 10:21)
Re:塩豆さま
コメント&niceありがとうございます(笑)
今度は塩豆さんのところにも訪問しますね!!!
また続きを読みに来てください(*^。^*)
by mi-mi (2005-11-17 23:55)