”決別宣言” [あの日から今日まで]
早い!!!ここまで、色々な思いに阻まれて、足踏みしていた分だけ…そうと決めてしまったら一気に加速する。
一週間後の会社の締め日を待って、社長にその旨を伝えるべく時間の都合をつけていただくようにと告げた。
「改まって何?」
「すみません…ご無理を言ってお世話になっておきながら、身勝手なお願いがあります。」
「まさか、辞めたいって?」
「…はい。新入社員の研修期間と引継ぎもあるので、二ヶ月後をメドに。」
「何かあった?」
「いえ…。あくまでも私個人のわがままです。」
「納得出来る理由じゃないね…。」
「どうしてもやりたい事をみつけました。年齢的にも今でないと…。」
「ココに居ては出来ない事か?」
「はい。申し訳ありません。」
「わかった。美由の意志を尊重する。でも、時期は三ヶ月後にしてもらう。これは譲れない!美由が抱えてる仕事をシフトする為には最低でもそれくらいは必要…。いいね?」
「わかりました。そういう事でお願いします…。」
「これだけの損失を与えた…という事に恥ない結果を出すように。」
多くを追求せず、同意と激励の言葉をかけてもらった時、一瞬だけ”罪悪感”が私の胸をよぎった。
以前…”美由の事は心配していない”そう言ってくれた社長に対しての”裏切り”であるように思えたからに他ならない。
そういう思いを”踏み付け”にしてしまう行為であると解かっていても、手に入れたい”無二の想い”がある…。
せめて”後ろ足で砂をかける”そんな結果を出さないように、何にも負けない強い意志を持って前に進もう…そう思った。
そして…翌週の月曜日の朝礼で社長の口から”その事実”が同僚達に語られ、それに納得出来ない人物がいたのである。
この何ヶ月かの間、私の相棒として私と”彼”の一番近くにいて、尚且つ最近になって”私と彼の関係”の一部分を知った…亮クンだ。
仕事で二人になるのを待っていたかのように彼は言った。
「美由サン、ボク何も言いませんよ。辞めないで下さい…。」
亮クンの真剣な眼差しを見て、中途半端な回答をしたのでは、自分が知ってしまった事が原因だと思わせてしまう…そんな事は許されない!そう思った。
事実は逆で、”あの日の出来事”が私の背中を押してくれたのだから…。感謝することはあっても、亮クンのせいなんかではない!ということも伝えなければならない責任が私にはある。
「亮クンが何も知らないコトにしてくれた時に思ったの。隠してると悪いことしてるみたいじゃない?雅サンからどれだけの話を聞いたかは知らないけど、隠さなきゃいけない事じゃないはずなのよ、本当は…。」
「そうですよ。だったら…。」
「でもね、ココに居たらやっぱり”今以上”進めない。それが我慢出来ないくらいの気持ちになっちゃったの…それだけのこと。」
「じゃあ勇気ある撤退ってコトなんですか?」
「亮クンのおかげかな(笑)」
「わかりました。残りの時間はボクが全力で守りますから(笑)自由に動いて下さい…。」
この日のランチは会社の人間の出入りしない店を選んで、亮クンと共に過ごした。
その時の会話で、亮クンが禁止されている社内恋愛を続行中である事を知らされ、”あの日”にその事を”彼”に告白して”男同士の秘密の交換”をしたという事実を聞いた…。
そこまで話してくれたお礼の意味も込めて、亮クンの追い風になればと思い、社内恋愛を禁止と言っている社長の本意を内緒で教えてあげた。
ココでまた社長への”裏切り行為”を重ねることになる。(これは許されるハズ(笑))
若い社員が多いこの会社で、恋愛関係がもたれた時、結果として上手くいかない事だってあるはずで、その時にどちらかが会社に居づらくなり、仕事以外の理由で大切な人材を失うことになるのを極力避けたい。そう考えた社長は、表面的に社内恋愛を禁止する事で”水面下での恋愛”であればその恋の行方は当人同士の問題で終わらせる事が出来るであろう…と、社員に対する配慮からされたものであるということ。
亮クンと、その彼女(察しはついたが追求は避けた)が二人で頑張って来た事への敬意もあった。そして、若い二人の心の重荷を少し取り除いてあげられたらそれでいい…と思った。
何より”残りの時間を全力で守る”と言ってくれた、亮クンに対しての”置き土産”ということにした…。
こうして、大切な相棒の”快諾”を受けた私には”もう1つ”の告知の義務が待っていた。
その日の夜…私から”彼”に電話をした。
「私、会社辞める…。」
「何で?」
「あの会社に居たら出来ない事をしたくなったから…。」
「…そっか。」
「それだけ?」
「ローラーに足挟むようなマヌケな社員はクビ?と思ったよ(笑)」
すぐに話をズラした”彼”の態度で確信した。
≪”彼”は私の気持ちに気付いている≫
この”確信”が的外れでなければ、私が言った言葉の意味も理解してもらえるハズだ。
そして、私の中に”覚悟”が出来ている事までも伝わって欲しいと願った…。
後は”大好きオーラ”をmaxで発しながら待つ!何があっても、ひたすら待つ!!!
クリスマスの夜に内緒で聞いたあの言葉を…。
会社を去ると決めた事は、”臆病”で立ち止まる事しか出来ない私との”決別宣言”であったと思う。
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