my birthday① [あの日から今日まで]
1999年も何が変わるということなく幕が開けた…。
(開けてしまった…と言うべきか?)
私だけが、自分の気持ちと”彼”の気持ちの狭間で揺れ動いていた様に思う。
自分の気持ち…。日々つのる想い、それはとどまる気配を見せない。なのに今いる場所から一歩が踏み出せないのだ。
”彼”の気持ち…。”彼”の口からこぼれた言葉…でも、伝えられたのではなく聞いてしまっただけのコトである。
伝える勇気を持てない私と、伝える意志のない”彼”。
確実に互いの心にある”大好き”と”ダイスキ”が同じ舞台に立つ日が来ないのではないか?という、焦りとも不安ともつかない気持ちが私の心を支配する。
≪”ダイスキ”の言葉をくれる気がないなら優しくしないで欲しい≫
そんな気持ちになるのは、決まって一人の時間だけのコト…。目の前に”彼”がいる時には忘れてしまっているから手に負えない。
まったくもって”子供”だ…今どき中学生でもここまで幼稚な恋などしていないだろうと思われる。
あと数日で、ろうそくが一本増える、誕生日を前にして何と情けない私だこと
それでも容赦なく時間は過ぎ…。1月18日 月曜日 その日は来た!!!
何人かから”おめでとうコール”の後に、奈央からも電話が入る…。
「おめでとう!!!プレゼント送ったから…今日着くはずよ。」
「ありがとう。おめでとうって歳でもないけど…。うれしいよぉ(笑)」
「充分オメデタイじゃない!何やってんのよ、美由もma-saも…(笑)」
「あっ…そのこともう聞かないでって感じ…。」
「聞きたくもないくらい、呆れた話よね?まったく…。」
「でも、聞いたんだ…雅サンから。」
「だいたいね…。美由?私はもう何もしてあげられないよ。二人で覚悟決めなきゃいけないコトだし…。ma-saに”ほっとけ!”って言われたし(笑)」
「うん。わかってるよ…。」
「まぁ…好きなだけ時間かけたら(笑)」
奈央の言うとおりだ…誰かに決めてもらえる事ではない。それでも、”なにもしてあげられない”という言葉に、本当は少し不安になった。
心のどこかに(奈央が何とかしてくれる…)というような甘えた気持ちがあったのだろう…私はそういう”ダメ女”だということを知っているから、彼女はあえてそう私に宣言したのだと思う。
今日が私の誕生日だなんてことを知るはずがない”彼”は、午前中も午後も当たり前に、ごく普通に仕事をしていた。
そして「じゃあ、最終便はいつもの時間で…」と言って帰って行く。
≪今日、誕生日なんだぁ!≫くらい言えたらいいのに…
≪そっか、おめでとう!≫くらいは言ってくれるはずなのに…
私の口は「はい…お願いします。」としか動かなかった。(やっぱりダメ女!!!)
その最終便…荷物の積み込みに立ち会っている時に異変が起きた。
仕事中に余計な会話をして色々詮索されるのを避けようと…その頃の”彼”は沈黙の間を埋める様に”口笛”をよく吹いていた。
主にビートルズ、ストーンズのナンバーだったと思う。
この時も快調に口笛を吹きながら作業を続けていた…。
「じゃあこれが最後の荷物…。終わったら事務所で伝票お願いします。」と言って配送場から戻ろうとした時の…”彼”吹く口笛のメロディーが変わった。
♪happy birthday to you~ happy birthday to you~ ♪
ビックリして振り向いたその瞬間”彼”から封筒をポイッと投げ渡される…。
受け取った不思議顔の私を、(事務所へ戻れ)と言わんばかりに手で合図を送り促した。
戻る途中で封筒を開けてみた…ピンクと白の螺旋模様のろうそくが一本とmemoが入っていて…
どうして、黙ってた?とりあえず、おめでとう!
×××でケーキを受け取って帰って下さい。 雅 と書いてある。
おそらくは、”何もしてあげられないよ”と言っていた彼女が”何もしないではいられない”気持ちで”彼”に伝えてくれたのだろう…とすぐに解かった。
うれしくないはずはない…。でも、私 が欲しいのはコレじゃない…。
そして、甦る想い…。
≪もうこれ以上優しくしないで下さい≫
②へ続く
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