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言葉隠して、気持ち隠さず [あの日から今日まで]

翌日、私の心を支配していた思いは、ただ1つだけだった。

≪早く会いたい

激変した状況に、心が付いて行けないままでいた私は”彼”に会ったら落ち着けるのではないか?と思っていたのだ。

”会う”といっても、私的な会話が許される場所ではない。 それでも、”彼”の存在を確認できるだけで救われる…そんな気持ちでその時間が来るのを待った

そんな私に、神様までが味方してくれたのか…? 午前中の荷受の立会いは、私一人だけの仕事となったのである! (これ以上のチャンスはない

けれど、そんな”好機”に恵まれることなど予測していなかった私は、関係修復の糸口となる”はじめの一歩”をどう踏み出せばいいのか…考えていなかった。

その余裕のなさが幸いして…逆に開き直れたのかもしれない。

≪顔を見て自然と出た言葉を信じよう!!!≫そう決めた…。

ただ、「奈央と電話で話をした」という言葉が禁句である事は、さすがの私もきちんと認識していた。 

(私はいったい”彼”に何と言うのだろう…。)

 そして”彼”が来た 

「毎度!」

「おはよ!」

当然、そんな私の決意を”彼”が知るはずもなく…。ごくごく普通に、ありきたりの言葉だけで自分の仕事を済ませ、さっさと帰ってしまいそうな勢いだった。

「じゃあ、コレ!」そう言って、送り状に受領のサインを求めた。

「はい。ご苦労様です」と、いつもなら言うところである…でも、今日はそれで済ませてしまってはいけない!!!

(さぁ!!!何て言うの?) おい!ワ・タ・シ!!!

そこで、私の口から飛び出したのは…奈央が私に託した言葉だった。

「雅さん…今日の夜は携帯の電源切らないで」

私レベルなら、コレだけ言えただけで上出来であろう…。

色々な言葉を並べなくても、気持ちだけは伝えられたはず。

「了解!」

と”彼”から返った言葉もこれまた短い、いつもと変わらないものだ。

それでも、その”いつも通り”こそが私が一番欲しかった言葉であり、その言葉と一緒にある”笑顔”が私にとって、とても大切な言葉以上の気持ちなのである

 


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