SSブログ

天国と地獄… (地獄への序章) [あの日から今日まで]

その日の午後、早速”彼”に社長が出席の意向である事を伝えた。

「そっか、よかったー!」と安心したようだった。

続けて「ついでに私も一緒よ!」と有頂天にピースサイン付きで言ってみた。

ところが!「ふーん…」と妙にそっけない。 あれれ、いけませんでしたか?と、また私の心の中は納得出来ないモヤモヤ感が溢れそうになる。

≪でもいいの!!!行くったら行くんだもん≫ ここで辞めても後悔の日曜日になることは明白である。それなら”行きたい”気持ちを満たしてから後悔したほうがいい…と、その時は思った。

そして日曜日…。

社長直々にお迎えに来て頂き、ちょっぴりセレブなシチュエーションにワクワクした。 いつもより少し?イヤ、かなり気合を入れておめかしをした私を見て

「見違えちゃうね…。」と笑った社長。

「社長に恥をかかせてはいけないと思って。これなら合格でしょうか?」と答えた私。 けれど、本心は当然の事ながら別の所にあった。

それでも「うん。上等だ!」と言われれば素直にウレシイ気持ちになれた。

”見違える”とか”上等” こんな美辞麗句が”彼”の口から出たものであったとしたら?ウレシイ…くらいでは済まされないほど心が熱くなるのだろうと思った。

≪馬子にも衣装≫こんな言葉が返ってくるに決まってる…。と心の中で一人笑い。

でも実際は、もっと最悪で悲しい状況に直面し、熱くなる事は愚か”心が凍る”思いをすることになるとは、予想だにしなかった私である。

パーティー会場に着き受付を済ませると、”彼”の名前がアナウンスされた。

ほどなく、”彼”が姿を見せた。私が欲しかった言葉をあえて”彼”に贈りたい、その姿は”見違えるほど上等”でクラクラした。 (…姿を見せた。ではなくて”魅せた”と記したいくらいだ。)

「お忙しい中、休日にも関わらず御足労いただきまして、ありがとうございます。」 (言葉遣いまで上等じゃないですか…笑)

「いえ。ご招待いただき光栄です。本日はおめでとうございます。」 (こちらはもともと上等なので違和感なし!)

 「それでは、こちらへどうぞ…」と案内された。

えっ!ちょ、ちょっと待って!!! 私は? もちろん、その場所で待てと言われたのではない、でも確実に”彼”は私を見ていない。それは、まるでココにいないかのようにチラリと目を合わせることすらもなかったのだ。

初めて、来るべきではなかったの…?と感じた。 ”時既に遅し”である。

だからと言ってここで帰る訳にもいかず、案内される社長に付いて行く格好で会場へと入る。

そこは、見るからに”偉い人”たちばかりが集まっており、正真正銘の上流な空間となっていた。 名刺交換、談笑、そしてまた名刺交換…。

唯一の救いは、皆一様に”秘書”と思われる女性を伴っていた事だ。私の肩書きは”秘書”ではないにせよ、そう思わせる程度の装いは”武装”していたし、それらしい振る舞いが出来ないほど若輩者ではない…と思った。

「緊張しなくていい。負けてないから (笑)」 社長の言葉で力が抜けて我に返る。

そこからは”なりきり秘書”で気持ち悪いくらいに微笑み続けるしかなかった。

再び、会社の”偉い人”を連れて来た”彼”が社長に声をかける。「お楽しみいただけていますか?」と。

けれども、社長の返事を待たないで、その”偉い人”が社長に深々と頭を下げたのだ。 「その節は、誠にご迷惑をお掛けしました。改めてお詫び…」と言いかけたところで、今度は社長の方からそれを遮るようにして言った。

「いえ。もうその話は…。終わった事にしましょう」 少しだけの笑顔で毅然と言い、その緊迫した空気を一蹴した。

私以外の人だけが知りうる”何か”があった事だけは理解できたが、それがどんな事であったのか?コトの真相は、帰りの車中で社長の口から語られるまで、私の知るところではなかったのである。

 そして、その過去の事実を全て知った時に、この日の”彼”の言動の意味するところまで思い知る事となる。

”来なければヨカッタ” ”来るべきではナカッタ” 凍りついた心の行き場を失くしてしまった私は”言うべきではない言葉”まで切り出してしまった。

せめて、この言葉を飲み込んでいたら…少なくとも凍りついた心が地獄へと導かれることだけは阻止できたはずである。

”言わなければヨカッタ” その一言とは…????

 

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:GBA2005エッセイ

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。