SSブログ

天国と地獄… (天国編) [あの日から今日まで]

衣替えの季節…。この年、新調されたピカピカの制服に袖を通したその日、始業と共に”彼”が上司を伴ってやって来た。

その途端!オフィス内に居た私以外の人達の顔に緊張感が走った。(何この感じ?)

オフィスはフリースペーススタイルになっていたので、社長室などはなく、来客の際にもお客様とすぐに顔を合わせられるといった具合だ。

周囲の雰囲気に反して、アポなしの来社に驚いた感じで 「あ!どうも…。」そう言って社長は自ら二人を応接スペースへと促した。

応接に向かう途中の社長から、「入れたてのコーヒーね」と笑顔で言われ、社長が笑っているなら、トラブルではないと判断し周囲の異様な空気をとりあえずは無視して給湯室へ急いだ。

応接室での様子も和やかな会話がはずんでいたので、いったい何だったのだろうと思いながら席に戻ると、勤務年数が古めな二人が好奇心むき出しの面持ちで飛んできて、私に尋ねる。

「応接、ヤバい感じ?」 (何なのよー?)

「別に普通だったけど…何で?」

「あッ、だったらいい。何でもない。」

奥歯に物が挟まった様な言い方とはまさにこの感じなのか…とイヤな気分になった。

それほど長居することもなく、笑顔は保たれたまま三人は応接から出てきた。

「突然、失礼いたしました。お時間が頂けるようでしたらご出席ください。」と”彼”が言い。

「はい。私が無理でしたら他の者に出席させます。わざわざどうも。」と社長が答えた。

その会話を耳にした時に”好奇心”は消えたらしかった。

まぁいっか!耳に入らない事を無理矢理に詮索するのは趣味じゃない。と気分を切り替え、帰ろうとする”彼”に目を向けた…と同時に

「配達はいつも通りの時間に後ほど伺います!失礼しました!」と言って帰って行った。

その直後、社長が手招きをして私を呼んだ。すると、消えたはずの”好奇心”はまた復活し、社長と私の会話に向けられたように見えた。 (もういい!シカト)

「美由、今度の日曜日あいてる?」

「はい。」

「だったら、俺に同行して。新社屋が完成した記念パーティーに招待されたから、配送窓口の担当だから美由が行ったほうがいいだろ?」

「わかりました。」 (きゃーやったぁー!)と心の中ではガッツポーズな気分を抑えて答えた。

「じゃあ決まり。後で連絡しておいて。」

予期せぬ”休日出勤”は、私をとてもしあわせな気分にしてくれた事は言うまでもない。

ただし、このしあわせな気分は週末の日曜日までの期限付きである事は、その時の私に気付く術はなかった…のである。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。