再会(八年前)① [あの日から今日まで]
私の人生において記憶にないほど、色々なことが一度に押し寄せて来た!
自分では逆境に強いと思っていたのに…振り返ってみれば、最愛の父親を失ったこと意外に
コレといった挫折を味わっていなかったのだと思い知った。
《逆境に強いのではなく、逆境を知らないで生きてきた》というのが本当のところなのだ。
何もかも嫌になって…誰の言葉にも耳を貸さず、波に飲み込またまま逃げる様に会社を辞めた。
退職の噂で日頃よりお世話になっていた人からの有難い誘いがいくつかあったにも拘わらず
それなりのポジションにいたから同業他社にはお世話になりづらい…という大義名分をつけて
全てのお話を丁重にお断りし、リセットボタンを押した。
実際は先に記した通り《何もかも嫌になった》それが本心…。
そんな状態でしばらくの間はフラフラした暮らしの中で自分自身を取り戻すことに専念していた。
いつまでもこんなグズグズな日々を重ねても意味がないと思い始めた時
黙って見守り続けてくれた母の勧めもあって、前職とは畑違いの事務職に就く事になる。
慣れない仕事にも少し自信がついた頃のある日、配送業者のドライバーさんが代わると言うので
上司と揃って挨拶に来た。
コーヒーを出しに入った応接室で見た顔…年月や取り巻く環境でイメージは激変しているものの
明らかにずうっと以前に見覚えのある顔だった。
社長の傍らに在った名刺にそっと目をやると、思ったとおり”彼”に間違いなかった。
その翌日から”彼”は定期集配にやって来ることとなり、その日の最終集荷を終えた時
「お世話になります。よろしく」と言って、社長に渡した名刺と同じ、あの名前確認をした名刺を私にもくれた。
(なぁーんだ気づいてないや)と思いつつ、知ってはいるものの当時嫌いな人だったので
「はい!こちらこそ、ご苦労様でした」と通り一遍の
挨拶をして、その日は終わった……と思った。
ところが…もらった名刺の裏に≪俺の事覚えてるかな?telして×××-××××-××××≫
と書いてあった。 ②へ続く
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