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慰安旅行① [あの日から今日まで]

慰安旅行を週末に控えていた。

二つの理由からこの旅行は私にとって憂鬱の種でしかなかった。≪二つの理由≫それは当然のことながら”彼”に会えないという事と、もうひとつはセクハラ課長の対処方法である。 とにかく、憂鬱だった…。

そんな私に”彼”から意外な言葉が切り出されたのだ。

「慰安旅行だっていうのに浮かない顔してんじゃん?」

「イイコトないもん…。」

「そんな顔してたらイイコトなんて寄って来ないって(笑)」

「……。何にも知らないくせに!」 (八つ当たりしちゃった…。)

「はいはい。でも、そのブス顔のままにしてれば、あの”ゲスな課長”も寄って来ないかもな!」 (気付いてたの? でも”ブス顔”って

「じゃあ、そうする。」

「ブス顔は明後日からでイイじゃん!今からそんな顔されてたら仕事しづらいンですけど…。」

「了解 (”彼”の真似をしてみた)

「…でさ、何もなければ信州のりんご買ってきてよ。」

「何かあったら…?」

「ぶん殴って、ボコボコにして帰って来ちゃえば?(笑)」

「グーでいいかな?」

「当然だろ!!!(笑)」

こんな会話で”セクハラ課長”に関しての憂鬱は少し緩和された。

一方で、こういう”無意識”で”無責任”な彼の優しさによって、私の中で勝手に”大好きポイント”が上がってしまう。

そして、会えない淋しさばかりが私の心を支配するのだ。

いよいよ明日が慰安旅行という次の日の夕方、最終集荷を終えて帰る時に”彼”がこう言った。

「りんご忘れンなよ!」

ただ単に、お土産の依頼をしただけなのかもしれないけれど、前述の通り私は”しあわせ教の教祖”そこは得意技の身勝手な変換キーを使って、

”何もないことを祈っている”と変換して自分勝手に”大好きモード”全開になるのであった。

けれど、帰って行く”彼”のトラックのテールランプが見えなくなった瞬間からまた大きな不安に押しつぶされそうな私が取り残された。

 

 


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