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”彼”の誕生日① [あの日から今日まで]

その日はやけに仕事中にも関わらず”彼”の携帯が頻繁に鳴った。

そして、その内容が業務連絡ではないことは”彼”の話口調で察しがついた…。

日に何度か配達と荷受に来たときに交わす他愛もない会話を密かな楽しみにしていた私は、この何件かの着信に少しの苛立ちを感じてしまい≪無神経な電話たちめ!!!≫などと、罪のない電話にまで逆恨みの発言(心の中で)まで飛び出した。

その日の午後、私にかかった一本の電話で謎が解けたのである。

「ねーねぇ!今日はma-saの誕生日だよぅ!おめでとうって言いたいから来たら私に電話ちょうだいね!」

電話は言うまでもなく、親友の奈央からだ。そしてma-saとは”彼”のこと。

「あっ!そうなの?わかった。後で電話するね。」

何も悟られる事がないように、不自然なほど自然に…?答えた。

この数ヶ月の間に”彼”に何があったのか。それから、私の気持ちの変化についても、彼女にすら何も話してはいなかったからだ。

それから、どうやって”おめでとう”って言おうか?考える時間もないまま”彼”がいつも通りにやって来た。

「毎度!」と普通に言われてしまったら(当たり前だけど…。)

「ごくろうさま!」としかいえないじゃない!!!

”おめでとう”くらい素直に言えばいいのにバカだな私…そう思いながら次にとった行動はもっとバカである。

自分が言えなかった”おめでとう”を奈央が簡単に言ってしまうのと、それに”ありがとう”と答える”彼”を見たくなかったから、奈央の電話番号を書いたメモを”彼”に渡した。

「これ、お誕生日プレゼント!!!」  ”おめでたい”のは私のほうだ。

不思議顔でメモを受け取ったままの”彼”を放置して、その日の集荷に立ち会うことを他の業務のせいにして避けた。

自己嫌悪、自業自得…その夜の私は自暴自棄

ビールを親父チックにグビグビっと飲み、昼間の乙女チックな行動の後悔をしながら携帯のディスプレイに”彼”の番号を呼び出す。

でも、悲しいかなお酒に強い私に”酔った勢い”がつくわけもなくCALLのボタンを押す勇気がでないまま”彼”の誕生日はあと少しで終わろうとしていた。

 


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