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Psycholinguisticsの"Psychology"とは [Psycholinguistics]

 "Psycholinguistics"という言葉は、日本語では言語心理学、もしくは心理言語学、と訳されるもので、ひとつの学術分野である。"psycho(=心理)"と言葉の中に入っているが、psychologyの中でも、neuropsychology(脳神経心理学?)やcognitive psychology(認知心理学)辺りの、"psychology"だと、私は解釈している。

 これを、違うpsychologyだと思っている・・・の・・・かな?という場に出くわしたことがある。

 私は、心理学に広くないが、その人は、臨床心理学とか、社会心理学のように捉えていたのではないか、と思う。Psycholinguisticsという学術分野について、「言語が関わる、人間の心理」と捉え、例えば、言語と感情(楽しい、嬉しい、はずかしい、等)だとか、言語と人間関係(社会参加、関係修復、集団内行動、等)だとか、そんな風に、その人は捉えていたのではないか、と思う。

 違う。全然、違う。

 と、言えなかったが、やっぱり言いたい。違う。

 Psycholinguisticsは、とても科学的だ。人間をコンピュータのように考えている。どんな信号を送って、どんな信号を処理して、何と何だとバグが起こって、クラッシュして、云々。まさに、コンピュータだ。

 Linguistics(言語学)は、まさに言語そのものを見ようとする学問である。で、Psycholonguisticsは、言語を用いる、ヒトを見て、そこから言語について考えようとしているのではないか、というのが、今のところの私の解釈である。さらに、これは印象にすぎないが、Cognitive Linguisticsは、Psycholinguisticsよりも、もっと「ヒト寄り」だと思う。ヒトの認知的(cognitive)な活動について、言語を通して、その可能性や性格を探ろう、という学問ではないか、と思っている。

 なんだか、とても冷淡な世界のように思えるが、私は、そんなところの勉強をしている。そして、実験そのものや、ペーパーを読んでいると、全くその通り、冷淡だ、と思う。しかし、いざ、実験を組み立てよう、という側に立つと、研究の発想というのは、実に、普段の、自分自身の人間的な生活にアイデアが潜んでいることが多い。同音異義語をどうやって解釈しているのだろう?とか雑音で声が聞き取りにいとき、何が理解に繋がるの?とか、である。

 人間的な柔らかい発想で、広い視野を持ちつつ、同時に、冷たくて、客観的な、鋭い眼力で実験を組み立てていかなければいけない。

 やはり、一人では研究というのは無理なんだな、と実感する。誰かとディスカッションして進めていかないと、こんな大仕事はうまくいきっこない。


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kame8me8

どうもお久しぶりです。もう一人のじゅんですが、混乱を来すといけないのでkame8me8とします。今日先生と歩いているときに青いパーカーをちらりと見かけた気がしたのがきっかけでじゅんさんのブログを覗いてみました。

心理言語学とはどんな学問かに関するコンピュータの例え話はとても分かりやすくて本質をついていると思いました。ちなみに、(じゅんさんも知っている)認知言語学の先生は、心理言語学のことを「退屈な認知言語学のことやね」と言っています。方や(じゅんさんも知っている)心理言語学の先生は、認知言語学を「ルーズな心理言語学のことね」と定義しているようです(笑)。そういう憎まれ口をたたきあえる関係は素敵だと思います。

kame8me8 は、認知言語学の方がややトップダウンだと感じます。認知言語学は、「人間は世界をこんな風に見ていて、それが言語にこう反映される」という全体像があって、それに基づいて仮説を立て実験を行う。また、理論を検証するために実験を行うとは限りませんし、証明以前の、(伝統的な言語学の手法に基づいた)理論構築も認知言語学ですよね。それに対して心理言語学は、ある疑問に答えるために、関連のあるあらゆる理論や概念から有用なものを選んで仮説を立て、実験を行う気がします。そして、とりあえず実験しないと心理言語学にならない。

こう書くと心理言語学の方が科学的であるように思えるかもしれませんが、全体像を与えてくれないところに不満を感じる人がいるかもしれませんから、一長一短であり好みの分かれるところです。

ご存知のように kame8me8 自身はは子どもの言語発達をやっています。言語発達にも、子どもをコンピュータとして見るやりかたと、人間寄りな立場とがありますが、kame8me8 はどちらかというと後者に属します。

長くなりまして失礼しました。また5階に遊びに来てくださいね。
by kame8me8 (2006-02-25 18:13) 

mamemama

おや、kame8me8さん!ご来訪ありがとうございます。ご近所の方にコメントをいただくのは、なんだか嬉しいような、気恥ずかしいような・・・。

あのふたりのやりとり、目に浮かびます・・・。そして、どっちの言うことも「もっとも」だ、なんて思ってしまいます。今学期は、心理言語学の勉強をしていますが、うーん、今のところ、圧倒的に私は認知言語学のほうが、性に合ってます。楽しいです。心理言語学の、あの、こまかーいところを、突いて突いて突きまくって、で、ふとペーパーから顔を上げると、あれ、それがどうしたの?なんて思ってしまう。自分の中で毎回具体的に消化できないままなんとweek8まできてしまいました。

今までも、心理言語学の勉強をしていたつもりだったのですが、彼女のクラスをとって、それは、心理言語学じゃなくて、「言語を対象にした心理学」だった、ということに気が付きました。psycholinguisticsはあるけど、lingpsychology(!)はないですよね。要は、言語学の色が強いんですよね。もう、あっぷあっぷですわ。白旗上げます。

また、青いパーカーを見かけたら、思い出してください(笑)あ、4日、行きますよ♪人間寄りな言語発達研究、楽しみにしています。
by mamemama (2006-02-26 11:12) 

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