☆☆☆☆☆ - DVD『犬神家の一族(2006年)』 [ ┣ TV・映画・DVDレビュー]
もう、最初から飛ばすよ。今日は。
『犬神家の一族(2006年)』レビューだ。
期待した俺がバカだった。
よく『リメイクに成功例はない』なんて言われるけど、そんなこたぁない。確かに数は少ないけれど、いくつか成功例はある。 市川監督ご自身も、『ビルマの竪琴』をセルフリメイクして成功しておられる。だからこそ、期待したワケさ。あの名作『犬神家の一族(1976年)』が、30年の時を経て、どうなるのか。
だけどさぁ……、
俺の金と時間と『ときめき』を返せ。
※以下、怒りにまかせてネタバレ全開なので注意
※この作品が好きな人は続きを読まないように
まずはキャスティングだ。
個人的に見ていて納得できたのは、中村敦夫さん、岸部一徳さん、螢雪次朗さん、草笛光子さん、三條美紀さん、以上。 まだ許せたのは、松坂慶子さん、石倉三郎さん、以上。
他は全員ダメ。
あのね、役者には向き不向きがある。
上に書いた以外の役者でも、大好きな役者や認めている役者は多くいた。例えば萬田久子さん。俺はこの女優さん大好きだし、実力を認めてもいる。だけど、役者がその役に合うかどうかは別問題だ。理知的で冷静なイメージがある萬田久子さんには、瞬間沸騰性質の梅子役は向かない。肝心な役どころでこういう失敗をしたら、すべてが台無しだ。だから、映画でキャスティングを専門にする人間がいるんだろ。
その最たる例が、主役とも言える野々宮珠世役の松嶋菜々子さんだ。
俺はこの女優さんを下手とも思ってないし、キライでもない。だけど、松嶋菜々子さんは、芯が強くて挫折しても自力で立ち上がるイメージがある。嫉妬と恨みに囲まれて翻弄されながらも、ひとりの男性を一途に慕い続ける野々宮珠世役は向いてない。旧作の島田楊子さんが野々宮珠世のイメージにピッタリだっただけに、その反動が余計に目についた。
誰だ。
こんなバカな配役したヤツは。
次は脚本と演出だ。
あのなあ、必要なシーンを削って、不必要なシーンを入れるな。
まずは、遺言状が披露された後の、竹子さんの重要なセリフだ。旧作には、竹子さんの『菊乃のことを考えるなら、あたしたちの母親のことも考えてくれるべきよ。』というセリフがあった。このセリフで、松子・竹子・梅子の不幸な境遇を背景にした、彼女たちの野々宮珠世に対する怒りが(曲がりなりにも)正当化される。このセリフ、削ったろ? このセリフを削っちゃうと、松子・竹子・梅子の不遇さが消えてなくなる。単なる物欲に支配されたおばちゃんたちのドタバタ劇になっちゃうんだよ。
あと、いらないシーン。時計の修理を頼んだ珠世に、佐清のフリをしていた静馬が『いまは気が向かないから』とかなんとか言ってたろ。あのセリフ、いるか? 静馬の立場になって、よ~く考えてみろ。いきなり珠世から身に覚えのない時計を差し出されて、前に直して頂きましたわね、ときたもんだ。これは珠世のヒッカケ問題かもしれない。もしかしたら、以前に佐清が珠世の時計を直した事実はないのかもしれない。なにか反応すると、化けの皮がはがされるかもしれない。リアクションすれば、確率は1/2だ。そのときのセリフが、『気が向かないから』か? これがヒッカケ問題だったら、もうここで化けの皮がはがれていることになる。佐清になりすましている静馬の行動としては、黙って立ち去るほうが自然だろ。
それから、極めつけが、佐清の取り調べのシーンだ。金田一の『その人は、松子夫人ですね。』のセリフが消えた。あの一言と佐清のリアクションが、この映画の頂点だったハズだ。金田一に徐々に真実に近づかれていき、いっぱいいっぱいになった佐清が、このセリフで一気に崩れ落ちる。ここまでは事件の積み重ね。ここからは金田一の謎解き。明らかなターニングポイントだ。それがなくなっちゃったから、ヤマがないままだらだらとドラマが続く。なんとなーく謎が積み重ねられ、なんとなーく金田一には真相がわかっているらしく、なんとなーく謎が解けていく。なんだこれ?
他にもいっぱいあるけど、書いてたらキリがないわ。
子供だましか。
おまえら(製作スタッフ)、『犬神家の一族(1976年)』っていう名作映画の看板を使って、どれだけの人と金と時間を使って、なにを考えてこんな駄作を作りやがったんだ。無意味な中村玉緒さんのアップを撮ったり、佐武の生首の造形に凝るヒマがあったら、ちったあアタマ使えよ。
おまえらプロだろ。
これでメシ食ってんだろ。
収益が上がったかどうかは知らないが、俺の顧客満足度は最悪だ。
こんなもん作るくらいなら、30年前のDVDだけ売ってろ!
以上!
あなた、なかなかいいこというわねぇ
by しいらん (2008-01-23 10:41)
しいらんさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
犬神家は、(1976年版のおかげで)思いっきり期待度が高かったので、2006年度版で「期待」がズドーン!と落ちたというか、心の底でバウンドして「怒り」になってハネあがりました;;;。もうね、ホントはまだ言い足りないんですけど;;;。
しいらんさんのblogも少しだけ拝見させて頂きましたけど、20日の記事は深いですねえ;;;。これと21日の記事の「松田優作」で、ちょっと俺のアンテナが反応しましたw。またお邪魔しますので、よろしくお願いいたします。
by みみちゃん (2008-01-23 12:58)
DVD借りて見ましたよ。
まあ、1976年版を見ていない人には平均点でしょうね。
自分が気になったのは、幼い静馬を見た松子が「佐清に似ている。」このせりふがないと、いくら顔がグチョグチョでも偽者だと、母親が気がつかないのは不自然ですね。
良く分かったのは、1976年版の高峰 三枝子さんの松子役の演技は最高でした。
by あまちゃん (2008-01-29 23:26)
あまちゃん、コメントありがとうございます。
なんか、お手数かけちゃったみたいで、恐縮です;;;。
そうですね~…富司純子さんも、本来はいい女優さんなんだけどな~…。なんか2006年版は、全体的に演出がゆっくりめのテンポで、てんやわんやさに欠けるというか。
2006年>1976年と観た知人は、やっぱり最初2006年の印象は悪くなかったと。でも、1976年を観てはじめて全体の意味がわかって、俺の怒りもわかったと言ってましたw。
個人的にスゴかったのは1976年版の坂口良子さん。あれ、栃木の方言のイントネーションなんですよ;;;(俺、栃木出身)。深田恭子さんにそれを求めるのは、さすがに酷だったか…;;;。
by みみちゃん (2008-01-29 23:39)