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映画 『青い棘』 [映画 あ行 *Movie]

*監督* アヒム・フォン・ボリエス
*脚本* アヒム・フォン・ボリエス、ヘンドリック・ハンドレーグテン
*音楽* トーマス・ファイナー、インゴ・L・フレンツェル
*出演* パウル: ダニエル・ブリュール
     ギュンター: アウグスト・ディール
     ヒルデ: アンナ・マリア・ミューエ
     ハンス: トゥーレ・リントハート
2004年 ドイツ

***あらすじ、感想はネタバレしてます。
ちなみに私自身は、ストーリーを把握してから映画を観ましたが、充分楽しめました(^^)***

*あらすじ*
1927年のドイツの夏の日、同じギムナジウム(寄宿学校)の同級生である労働者階級のパウルと、
上流階級のギュンターは、週末の休日をギュンターの別荘で過すことになりました。
パウルは想いを寄せている、ギュンターの妹・ヒルデに再会しますが、
彼女には見習いのコックであるハンスという恋人がいます。
ハンスはギュンターの元恋人であり、ギュンターは今でもハンスを愛していました。
ギュンターは妹・ヒルデにハンスとの交際を禁じますが、二人は別れる様子はありません。
「真の幸福は一生に一度きり、その後は幸福な瞬間を忘れられない罰が待っている。
ならば一番美しい瞬間にこの世を去るべきではないか。」
という結論を出したパウルとギュンターは、“自殺クラブ”を結成。
“愛が消えた瞬間に、愛を奪った者を道連れに死ぬこと”を誓い合うのでした。
そして絶望に打ちひしがれたギュンターは、自殺を思いとどまったパウルを尻目に、
ハンスを射殺、自らも銃で命を絶ったのです。
1927年にベルリンで実際に起こった事件“シュテークリッツ校の悲劇”を基に作られており、
生き残ったパウルは共犯・殺人罪で裁判にかけられるも無罪となり、後にアメリカへ亡命。
又、ヒルデは図書館の司書としてその生涯を終えています。

                         ****

“『アナザー・カントリー』『モーリス』『眺めのいい部屋』に次ぐ、究極の愛のデカダンスがまたひとつ誕生した”
という広告を目にした時から楽しみで仕方がありませんでした。
期待通り素晴らしい映画で、観てよかったと思っています。
しかし、ギュンターの気持ちは理解に苦しみますね~、もしかしてドラッグ(アブサン)のやりすぎ、学校も欠席しがちだったようなので親が放任しすぎ、で、耐えることを知らないわがままお坊ちゃまのご乱行といった感じでした。
それを言ってしまったらおしまいですか(笑)
“一番幸せな瞬間に死ぬ”なんて、今が一番かなんてどうして分かるのかしら?
私なんて、これ以上に楽しいことがあるかも♪ と常に思っているのに。
小難しい文学を読みすぎなのでは?(;^^)

でも1920年代のドイツはまだ若者の為の娯楽など無かったといいますし、第一次世界大戦の敗戦後の混乱期であったとのことで、実際にその時代に身を置いてみないと、彼らの気持ちなど分からないのかも知れません。
この頃は伝統的な市民階級が崩壊し、労働者階級が台頭してきたということを、見習いコックのハンスによって身を滅ぼされる上流階級のギュンターが象徴しているとも言えますね。
ハンス君、あまりハンサムではないけれど、美しい兄妹が夢中になったのは、自分たちには無いものに惹かれたからではないでしょうか、例えばお金もそうですが、美貌や気品…。
つまりそこに情欲を感じ、欲したのではないかと思うのです。 
そうするとそれほどハンサムでなくてもよろしいかと(笑)
なかなか面白いキャスティングだわ~とニヤリとしてしまいました。

それからヒルデ役の女優さん、とても可愛い人なのですが、私には男を破滅に追いやるファムファタルという妖しさはどうしても感じられず、「私にとってあなたはまだウブな坊や…」と独白するシーンも笑止(;^^)
…しかし、設定が16歳なんですね~、それも凄い(;^^)

この兄妹、ひとりの男性を奪い合いしているのに、それほど険悪ではなくて奇妙な関係でした。
しかし、実際に事件が起きて世間が注目した時、ヒルデはいわゆる“魔女狩り”に遭い、彼女が望んだ“両手いっぱいの男”は多分手に入らず、ひっそりと暮らしたのでしょうから、ギュンターに最も復讐されたのは彼女だったと言ってもいいのではないでしょうか。

↑上記のように個人的につっこみどころ満載でしたが、とても良い映画だったと思います。
実際の事件でのパウルの弁護人は、「若さとは何か、という問いに“若さとはワインを飲まずして酔っている状態なのだ”と答えよう。」と、ゲーテの言葉を引用したそうです。
終始たそがれ時の様な映像と、物憂げな美しい登場人物たち、そしてけだるい夢心地の音楽に私もしばし陶酔したのでした(*´v`*)

公式サイト→http://www.aoitoge.com/


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コメント 8

迷い人

 凄いストーリーですわ。
それが、実際起こったことだなんて。
途中までストーリーを読んで、ハンスってそんなにモテるのなら演じてる人は美形かしらと期待しましたわ。

 自殺クラブ....
そういうのに憧れる危険な歳なのね...
パウルが裏切って、ギュンターが一人決行する。
その過程が見たいですわ。
どんな気持ちで、どんな表情で......
想像すると泣けてきますわ。
この映画、色合いがキレイだし、きっと素晴らしい映像美で、哀しみの表情で悲劇を決行するシーンが見れるのですわ。

 思ったよりずっと内容が濃いです。
私も観るチャンスあったら、ぜひ観に行きます。
ミカエラさまの批評も心なしかホットだし、期待できそうです。
紹介、ありがとうございました。
待ってました。
by 迷い人 (2005-11-10 21:31) 

ミカエラ

迷い人さん、こんばんは♪

ハンス君、モテモテでした、しかも超美形兄妹に!
そしてその彼が、ギュンターに撃ち殺される場面が美しかったです(←相変わらずの変態・笑)

>>パウルが裏切って、ギュンターが一人決行する。
↑ここでふたりの階級の違いが露見してますよね、現実的なパウルと夢想的なギュンター。
生活の違いがこういう結果…と思うのは冷めてますか(;^^)
パウルがギュンターの犠牲となって、人生を変えられたように感じて、お気の毒に思いました。
でも、パウルはその後偽名で本を出版したりしたそうですから、案外オイシイ生活を送ったのかも!?

『ドリーマーズ』はご覧になったことがありますでしょうか。
こちらも、未遂に終わりましたが死のうとしたりしますし、兄妹+ある男性の三角関係という点で似ているかも知れません。
by ミカエラ (2005-11-11 21:13) 

TOMCAT

こんにちわ~
劇場に行かれたんですね。羨ましいです。
とても綺麗で、ちょっと危ない表情のオーギュストが素敵でした。
見始めは何だかなぁ・・こいつと思ってみてましたが、何のこと無いあの夢見るような瞳に、少し持ち上がった唇の端に・・色香がたっぷりでしたわ。
ダニエル君はどうでも良いのですけど(笑)恋を諦めるって程の思い入れじゃなかったような気がします。それって自分とヒルデの身分差がそうしてたんでしょうか?湖でもっと積極的になっても良かったような・・余りにストイックでしたね。

どちらにしても、オーギュスト君の勝ちですね。
余韻が少ないのは、ハンスとギュンターのラブシーンが少ないからだ!と一人で思っております

・・ドリーマーズ・・・チェック。
by TOMCAT (2005-11-13 16:34) 

迷い人

ドリーマーズ...
TOMにゃんさんがチェックとあるので、私もちょっと調べてきました。
ベルトリッチの作品だそうで。
エヴァ・グリーンって、オーランドと共演した彼女ですよね。
映像キレイそう。
レンタルあるのかなあ。
by 迷い人 (2005-11-13 19:22) 

ミカエラ

TOMCATさん、こんばんは♪

TOMCATさんはとっくの昔に感想をアップされてたのですね!
しかも美しいお写真付で…。早速コメントさせていただきました。

映像も音楽も美しくて、劇場でしばし素敵な午後を過してきました(^^)v
いくつかレビューを読みましたが、オーギュスト君、評判いいですよね。
ドイツではダニエル・ブリュールと、役を取り合うほどの人気だとか。
私的にもオーギュスト君が一歩リードです、あ、でも一番はハンス役のトゥーレ・リントハートなんですよ。
私の動物的嗅覚が、彼の卑しい雰囲気の中に官能の匂いを嗅ぎとってしまうのです(笑)

>>ダニエル君はどうでも良いのですけど(笑)恋を諦めるって程の思い入れじゃなかったような気がします。それって自分とヒルデの身分差がそうしてたんでしょうか?湖でもっと積極的になっても良かったような・・余りにストイックでしたね。
↑ダニエル君、エリとも愛の無い○○○してしまいますしね~。
まあ、私もどうでもよかったです(笑)

>>余韻が少ないのは、ハンスとギュンターのラブシーンが少ないからだ!と一人で思っております
↑あはは! ギュンターがハンスの誘惑を振り切れなくて、抱きついたところはだいぶ期待しましたが、お邪魔虫が入りましたね、私もギュンターと同じく「早く出て行ってくれ!」と思いましたわ(笑)

『ドリーマーズ』は同性愛ではないのですが、『青い棘』よりは官能的なシーンがたくさんあります。
少しどぎついと思ったところも…(;^^)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0007710SW/qid=1131896763/sr=1-2/ref=sr_1_10_2/249-2902098-5007543
by ミカエラ (2005-11-14 00:46) 

ミカエラ

迷い人さん、こんばんは♪

>>エヴァ・グリーンって、オーランドと共演した彼女ですよね。
↑そうです、『キングダム・オブ・ヘブン』で。
とてもエキゾチックでしたよね、『ドリーマーズ』では、とっても遊び人に見えるのだけれど実は…という意外な役で出ているんですよ♪

ベルトリッチ監督作品ですから、絶対にレンタル店には置いてあるのではないでしょうか。
ちなみにうちの最寄のレンタル店では、ベルトリッチ作品群とは別に、官能的映画群のコーナーに置いてあります。
陳列した店員さん、絶対この作品を観たに間違いないですわ(笑)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0007710SW/qid=1131896763/sr=1-2/ref=sr_1_10_2/249-2902098-5007543
by ミカエラ (2005-11-14 00:48) 

カポ

ミカエラさん、こんばんは♪
以前、ミカエラさんにお薦めして頂いたこの作品、本当に私のツボに直球で飛び込んで来ました。
素敵な作品のご紹介、ありがとうございました!!
やはりミカエラさんのお薦めに間違いはないですわ・・(*^^)v

上のコメントで「ドリーマーズ」と似ている・・というお話がありましたが 言われて見れば 本当に似ていますね~
他人には立ち入る事の出来ない兄妹(姉弟?)の関係がミステリアスで まずそこに惹かれ、もう一人の男がそこにどんな風に絡んで来るのかが またまた興味深い!
特に今回は ギュンターの心情に心惹かれ、彼の哀しみの表情が素晴らしかったこと、映像と音楽に痺れたことで 速攻でDVDを購入しました。

若いって・・ 痛いですね・・ 
もうその痛みを感じることは出来ないおばさんの郷愁三昧の感想でした。(^^;)
by カポ (2006-06-30 20:33) 

ミカエラ

■カポさん、こんにちは(^^)

>>本当に私のツボに直球で飛び込んで来ました。
↑ わ~い♪ カポさんも気に入りましたか~、気が合いますね~ムフフ(^m^)

>>他人には立ち入る事の出来ない兄妹(姉弟?)の関係がミステリアス
↑ そうですよね、ここに言及している人は、私はまだ見たことがないです、確かパンプにもそれに触れている解説やレビューも無かったと思いますし…。
兄妹で男性を取り合っているのに、痴話げんかするでもなく、互いに尊重しあっているような、そして愛し合っていると感じられて不思議な感覚でしたよね。
そして、この兄妹の仲を理解することも割り込むことも決して叶わず、傍観しているような立場が、『ドリーマーズ』のマシュー(マイケル・ピット)と今回のパウルが似ているなと思ったのでした。

>>映像と音楽に痺れたことで 速攻でDVDを購入しました
↑ あのけだるい音楽が素敵でしたよね~♪
今、また聴こうと思って、公式サイトを開こうと思ったら、もう無くなっていました(T~T)

>>もうその痛みを感じることは出来ないおばさんの郷愁三昧の感想でした
↑ もうその頃に戻ることは出来ないのだと思うと一層切なさが増しますよね…。
でも、熟女には熟女なりのお楽しみや喜びがありますわよね~ふふふ♪

トラックバックもありがとうございました、私も後ほどさせていただきます~!
by ミカエラ (2006-07-01 17:51) 

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