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小説 「誰か Somebody」 [小説]

誰か (文春文庫 み 17-6)

誰か (文春文庫 み 17-6)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/12/06
  • メディア: 文庫

小説 「だれか」
宮部みゆき 文春文庫(¥648 税別)
オススメ度 ★★★☆☆

主人公(広報誌の編集者)は、「自転車にひかれて亡くなった男性」の過去について調べている。それは、亡くなった男性の娘のうちの一人が、父をひいた犯人を見つける手助けにするために(まだ犯人が見つかっていない)、本を出版したい、と言い、その手伝いをすることになったからだ。

主人公は、いわゆる「マスオさん」。奥さんは大会社の会長の娘だ。取材の手伝いをすることになったのは、亡くなった男性が、義父(会長)の運転手をしていたため、会長からの口ぞえもあったから。
会長の義理の息子だからといって、優遇されているのか?っていうと、そんな事はない。取材のとき、自分の立場が有利に働くこともあれば、逆に、反感を持たれて、つらい思いをすることもある。むしろ、つらい思いのほうが多いかも知れない。実際にどんな事情があろうと、外から見れば、「お金目当てで楽な暮らしをしている人」としか思ってもらえないのだ。

亡くなった男性には、娘が二人いる。(妻は既に病気で亡くなっている)本を出したいと言っているのは、そのうちの一人で、もう一人は、自分の子供時代の暗い記憶から、「父は、事故ではなく、殺されたのではないか。本を出すともっと恐ろしいことを招くのではないか。」と思っており、読者も、「それじゃあ何か大事件に巻き込まれたのかな?でもそれなら自転車でなくても…?」と、心が揺れることに。

主人公は「取材者」であり、事柄について、神の目線で解説されることは、ない。主人公は、見つけた手がかりをもとに、何が事実なのか判断をして、義父(→読者)に報告する。読者に分かるのは、取材者が見つけたことだけだ。
つまり、ホントの本当のところは、わからない。

このパターンは、「理由」(私のレビュー記事)「摸倣犯」(私のレビュー記事)と同じだ。ただ、「理由」や「摸倣犯」で私が感じた、「神の視点で語られていないがゆえのモヤモヤ感」は、今回は、薄いように思った。
それは多分、この作品が、前の二作品と比べて、身近に感じられたから、かも知れない。私たちの普段の生活の中で、「きっとあの人、こう思ったんだよ。」という推理は頻繁に行われるものだ。その延長線上だったから、かも知れない。
または宮部みゆき自身が、こういう描き方に熟達したから、だろうか?

私が、この作品を読みながら思い出していたのは、仁木悦子の「三影潤」シリーズだ。三影潤は、小さな探偵社の探偵だ。ずいぶん前に読んだので、おぼろげなイメージしかないのだが…。

あっ、この作品、「ハードボイルド」なのか!
主人公は探偵ではないけれど、うんそうだ、これ、ハードボイルドだ。二作品と違うのは、ハードボイルドだからだね!なんか納得ー。


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