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国道169号線は行き止まり国道にしてはどうか 2 [ひとりごと]

国道169号線は行き止まり国道にしてはどうか?」の記事を
書いてから約1ヶ月。そのあいだに、何人かの方からメールを
いただいた。

A「国道169号線は、僕たちの地方と大阪をつなぐ大切な道路です。
  行き止まりにしてしまえなんて言わないで、整備を願う方で
  よろしくお願いします。」(同様な意見3通)
B「国道169号線は大台ケ原ドライブウェイへの連絡道であり、
  閉鎖になると困るのではないでしょうか?」
C「ネットワークの発展形態についてですが、なにを言っている
  のか、よくわかりません。」

などといったところである。
 

Aのようなご意見をお持ちの方は、国道169号線による受益者であり、
そういった考えをお持ちの方も、当然いらっしゃるだろう。けど、全体の
利益、あるいは国民の税金を投入するにあたってのコスト対効果を
考えた場合、閉鎖した方がいい、と私は言っているのである。
それは言論の自由というものであり、自分にとって不都合であるから
といって、私に対して「そんなことは言うな。」と言ってくるのは、失礼
というものであろう。
 
Bは単なる早とちりである。私は国道169号線を全部なくせ、なんて、
一言も言ってないのである。今回、崩落事故のあった伯母峰峠の区間を
閉鎖してはどうか、と言っているのである。こういう人は小学校の時、先生に
「人の話は最後まで聞きなさい。」と怒られたクチであろう。
 
Cは読解力が不足しているのではないのか、と思うけど、私の文章力
の不足もあるのかもしれない。そこで今回は、Cの「なにを言っているのか、
わかりません。」とおっしゃる方のために、少し解説を加えたいと思う。
 
 
図1 A,B,C,Dという4つの町

 

いま、仮に図1のようにA,B,C,Dという4つの町があって、それを道路
で結ぼうとした場合、最初は図2のようにリング型のネットワークになる。

図2 リング型のネットワーク

 

コンピュータでいうと、初期のトークンリングが、こんなかたちであった。
リング型のネットワークをつくる理由は単純で、それがいちばん公平だから
である。仮にAとBを結んで、C,Dは結ばないということになると、
C,Dの住民から文句が出るだろう。これまでの道路は、だいたいこういった
かたちで発展してきたと思われる。

けれども、こういったリング型のネットワークだと、だんだん不便になって
くる。同じような太さの道路しかないと交通量の増減に対応できないし、
また、AからDに行くのに用もないBの町を通らなければならない。
ということで遠回りになるのである。そこで、図3のようにバックボーンと
それに対するアクセス、というかたちのネットワークに移行する。

図3 バックボーンとそれに対するアクセス

 

コンピュータでいうと、初期のイーサネットとかFDDIなんかが、こんな
かたちであった。これなら、バックボーンを太くすることにより交通量の
増減に対応できるし、AからDに行くのに用もないBの町を通らなくても
すむ。現在の幹線国道とそれに対するアクセスというのは、だいたい
こういったかたちのネットワークであるといえよう。

図4 ハブに対するアクセスとハブ同士を結ぶバックボーン

 

最後には、図4のようにスター型のネットワークに移行する。その地域に
とっての生活の重要な拠点となる地域がひとつのハブになり、そのハブ
に向かうアクセスを中心に、スター型の道路網が整備されるというかたち
である。また、ハブとハブを結ぶバックボーンが形成される。
コンピュータでいうと、現在、主流となっているスイッチを使ったイーサネット
がこんな形である。道路でいうと、高速道路のインターチェンジと、
そこに対するアクセスというのは、こういったタイプのネットワークである
といえよう。
 

まあ、実際には、地形その他の問題があり、こんなにきれいな形の
道路ができるわけではない。また、どこに行くにもかならずハブに
行かなければならないという考え方も現実的ではないけど、だいたい
ネットワークというものは、こういうかたちで発展していくものだと
思っていただければいいだろう。

そして、図3とか図4の段階になると、ABCDのすべてをつなぐリング型
の道路は不要になってくる。最初のころはすごくありがたかったけど、
この段階になると、バックボーンとかハブに対するアクセスがいい方が
ありがたい、ということになるのである。
 
そういった意味では、道路に対するニーズは、時代とか交通環境により、
刻々と変化していくものだし、いまや、すべての町を公平につなぐという
考え方が、必ずしもニーズに合っているとはいえないのである。
また、クルマに乗っていると誰もが思うことだけど、「最短距離」を行く
ことがいちばんありがたいわけではない。「最短時間」でしかも「安全」
に行くことがいちばんありがたいわけである。峠道を徒歩で行くしかない
時代とは異なるのである。
 

そのように考えた場合、国道169号線の伯母峰峠のように危険な峠道を
維持管理する必要性って、どこまであるのだろうか。
 
 
 
将来、この地区における道路網のグランドデザインを考えた場合、
図5のようになる。
 

図5 近畿地方南部における道路網の将来像

 

まずは名古屋、大阪という大都市が大きなハブとなるのは当然であり、
その2つのハブをつなぐ第二東名が、この地区の経済を支える主要な
バックボーンとなる。
また、この地区の住民の生活を支える主要なサテライトハブは松阪、尾鷲、
熊野、新宮などであり、これらを結ぶ幹線道路として、伊勢自動車道や
近畿自動車道紀勢線、あるいは国道42号線がある。
現在は、このように整備されつつある過程ではあるが、それでも伯母峰峠を
越えて大阪に行く人なんか、ごく少数であることは想像に難くないし、それよりは
上北山村の人にとっては熊野市へのアクセス、川上村の人にとっては
奈良、和歌山方面へのアクセスがいい方が、ずっと暮らしやすいはずである。
 
そういった実際のユーザーのニーズに合わせた場合、伯母峰峠の区間を
維持する必要性なんか、ほとんどないのではないか。
 
仮にどうしても必要と言うのであれば、上北山村の村道として維持するのが
スジというものであろう。国道とは、国民全体の財産ともいうべきものである。
ごく一部の人にとってしか利益がないのであれば、国が維持、管理をすべき
ではない。税金の使い方として著しく不公平であり、納税者としては納得でき
ないし、当然のことながら賛成しかねるのである。
 



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