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おタクの恋 ブログ版 10-2 [小説]

10-2

 海宮はアリスを促して車道へ飛び出した。
 通りを渡る途中で二人に気付いた大嶺が立ち上がる。
 輸送トラックの運転席は血だらけだった。 
 放火魔・中藤が黒いドイツ車に乗り込むと彼らはUターンして現場から離脱していく。 
 敵の動きを見定めて大嶺が叫ぶ。
「ウミちゃん、こっちも撤退だ。警察が来たら面倒だろ?」
「そりゃそうだ。オーちゃん、車は?」
「そこの角に停めてある」
「じゃ、エンジンかけて待ってて。俺はみんなを呼んでくる」
 海宮は短機関銃を投げ捨て地下鉄の出口に向かおうとすると両側から影山を支えた極楽寺と夏沢慧が姿を現した。
 極楽寺が大嶺に影山をパスしながら平然と言う。
「そろそろ片付いたころだと思ったの」
《こいつもまともじゃなかったな》
「うわー、これどうなってんですか。早く救急車呼ばないと」
《夏沢慧、まともなのは君だけだ》
 サイレンの音が接近する。
 大嶺が影山を抱きながらあわてて言う。
「やばい。逃げよう」
 夏沢慧が海宮を見つめて尋ねる。
「どうして?」
 大嶺が海宮の代わりに答える。
「法治国家はいろいろと面倒だからさ」
 すでに周囲は夕闇に包まれていた。
 あちこちのビルの窓からこちらを窺う視線が感じられる。
「俺はバイクだからアリスの家でおちあおう」
「彼女はどうする?」
 大嶺が歩き出しながら言った。
「オーちゃんが一緒に乗せてってくれ」
「ええー? 藤井さんちに行くんですかあ?」
「ここにいると警察に事情を聞かれてまずいんだ」
「どうして?」
「夏沢さん、何も聞かずに行ってくれないか」
「それって先輩を信じろってことですね?」
「うん」
「私行きます」
「じゃ、急いで」
 クラスメートたちはどやどやと大嶺の4WDに乗り込む。
 助手席に気絶し続ける影山が放り込まれた。
 現場へ向かう救急車やパトカーとすれちがいながら海宮たちは現場を脱出した。
 三分ほど走り、ようやく落ち着きを取り戻した車内では極楽寺が自慢気に言った。
「ほら、当たったでしょ?」
「え?」
 リアシートで極楽寺とアリスにはさまれて小さくなっている夏沢慧が首を傾げた。
「海宮と影山の銃撃戦」
 極楽寺はアリスに向かって首を伸ばす。
「でもさあ。血まみれになるんじゃなかったの?」
「そういえばそうね」
「二人ともピンピンしてるよ」
「これからなるのかも」
「あのう。なんの話ですか?」
 両サイドの上級生二人のやりとりに夏沢慧はおずおずと口をはさむ。
「いや、何でもないの」
「‥‥‥あのう。海宮先輩のバイク、どっかいっちゃったんですけど」
「え?」
「‥‥‥本当だ。さっきまで後ろを走ってたのに」
「血まみれになりに行ったのかな」
「え?」

(つづき)→http://blog.so-net.ne.jp/kid-blog/2007-07-14


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