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オペラ歌手「使い捨て」? 自己責任?(朝日新聞記事に関連して9.8夕) [オペラの話題]

 オペラに関することは、ギャラとかキャンセルとか、歌手の動向とか、なんでも興味があるんですが、新聞では、めったに取り上げられることのないオペラの話題が久々に取り上げられています。昔ならスクラップブックに貼って保存ですが、今は、パソコンに記事を取り込んで保存ということですね。左の小さい画像をクリックすると読める大きさにになりますので、関心のある方は、どうぞ。キャンセルの件は、知っていましたが、ギャラの部分には、興味をひかれました。やっぱりね、と思いましたが、こんなに差があるとは、正直吃驚しました。20倍ですよ20倍!ウソみたい
 ルッジェーロ・ライモンディの過去の公演記録とか現在の動向を追っかけるのがせいいっぱいで、他の歌手のことはあまりわかりませんが、オペラ歌手が野外とか大ホールでコンサートというのは最近の傾向で、そういうことをしないのがオペラ歌手だったのだと思います。バス歌手の場合は、集客できないということもあるかもしれませんが。なにしろ、ミラノ・スカラ座で、バス歌手が単独でコンサートをしたのは、ライモンディがはじめてなんだそうです。今では、ちょっと名が売れるとバス歌手でもソロリサイタルもやっちゃうようですが。ですから、私は、バス歌手の地位をバリトン、テノール並に上げたといいますか、活躍の場を広げたのは、ライモンディの功績ではないかと思ってるんですけど....
 ギャラの話に戻りますが、ザルツブルグのギャラが、1公演=約1万2千ユーロ、現在のレートが156円ですから、187万2千円。2〜3年前に発表されたメトのギャラが1公演=1万5千$、現在のレートが113円ですから、168万5千円。ということは、為替の変動も考慮して、1公演=150万〜200万円ということでしょうか。もちろんこれはトップクラスの歌手のことです。
 ところで、1984年のパリ・オペラ座のギャラの資料がありますが、一声10万円?$?といわれたパヴァロッティでも、1公演=約9万フランスフランだそうですから、当時のレート、1フランスフラン25円として、225万円、ということはオペラ歌手がオペラの舞台で歌う場合のギャラは、20年来ずーっと横ばい状態ということですね。それに比べて、コンサートは、楽して、儲けられるということですか。パヴァロッティがいつまでも「さよなら公演」をやめられなかった理由もそんなとこなんでしょうね。
 金儲け主義のエージェントに躍らされて、使い捨てになったとしても「自己責任」ですから、自分でちゃんとスケジュールの調整をしましょうってことですよね。
※参考:1984年の大卒初任給=13万5千800円 1997年頃〜現在まで、20万円前後。


 さて、私が赤く塗ったこの記事の〆、
「今年の同音楽祭で大喝采を受けたプラシド・ドミンゴや、6日に亡くなったルチアーノ・パヴァロッティのような大歌手はもう現れないのかもしれない」
 この文章ひっかかりますね。だって、この二人が、スタジアムでマイクを使って歌うという、まさに商業主義、金儲け主義のハシリを作ったんじゃないですか。ワールド・カップ絡みの「三大テノール」第1回目は、1990年ですから、三人とも50歳前後で、オペラファンにとっても楽しいイベントだったと認めますが、その後、このメンバーで続けたのは、商業主義ではないでしょうかねぇ。2002年横浜アリーナでは、いったいいくらのチケット代だったのかといいますと、一番安い席でも1万円、それから3万、7万5千円、最高で12万円(パーティー券付?)です。
 こういう野外のスタジアムでの大規模コンサートについて、彼らは、「オペラファン拡大のため」とか言っていますが、詭弁ですね。こういうことに批判的なオペラ歌手もいるんですから。実際には、高額チケットで話題を集めただけで、あれで劇場に足を運んでオペラを見ようと思った人がいるのか疑問です。私が思うに、彼らは、マネジメント側が、ではなく彼ら自身が「人気のあるうちにどんどん稼ぎたい」という「大歌手」だったと思いますけど......それがいけないとは言いませんけど.....

参考:
ワールド・カップ絡みの三大テノールコンサート」:
1990年ローマ、94年ロサンジェルス、98年パリ、2002年横浜アリーナ


ワールドカップとは無関係に、1996年6月東京国競技場で「三大テノール日本公演」、日本を皮切りに世界一周公演。どこを回ったんでしょうね。全然知りませんでした。
※1999年1月東京ドームで「3大テノールニューイヤーコンサート」
これも知りませんでした。もっといろいろありそうですね。

★数年前にもつっこみどころ満載のオペラ関連の新聞記事を記事にしていました。やっぱり、ドミンゴ大歌手が登場しますよ。コメントに全文掲載していますから、読んでみて下さい。ドミンゴが後継者を「指名」??


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euridice

おもしろい記事、ありがとうございます^^!
この文脈だと、ドミンゴ&パヴァロッティ=大歌手=商業主義とは無縁
というふうに読めます・・
by euridice (2007-09-11 20:49) 

峠茶屋の爺

お邪魔しますぞ。

デビューした60年代から80年代半ばにかけてのパヴァロッティの声はホンマに凄かった。朗々と明るく輝く高音は空前絶後じゃった。

しかし彼も人の子。80年代後半には声質も重くなり高音の輝きにも翳りが見えてきたのに、何を思うたのか90年代に入ると大勢の人が集まる野外コンサートをしきりと開くようになった。
傾聴すべきパバロッティはもう終わりやと、爺がパヴァロッティに訣別したのはその頃じゃ。keyaki殿が仰せの通り、商業主義におもねた大衆路線への転化に嫌気がさしたのじゃ。

ショーと化した三大テナーコンサートは興行的には大成功を収め、声の衰えとは裏腹にパヴァロッティの人気も益々高まるばかりじゃった。
年収も20億円を超えるまでになったと聞いたことがある。似非友情を装ってでも、こんなぼろいコンサートはそらやめられまへんで。似非友情であった証拠に、二人とも葬式には来まへんでしたな。

だいたいパバロッティともなればオンリーワンであって、三大テノールの一人なんて呼ばれるようではパヴァロッティの名が廃るというもの。三大テノールと呼ばれて一番得したんはカレーラスとちゃいまっか?(ファンの方、すんまへん)

拝金主義、怖いですなぁ。ドミンゴもMETのギャラは皆さんが思ってるほど高くはないと言ってたし、パヴァロッティは(ギャラの安さから?)ドタキャンの常習者。METのヴォルピー支配人もそら頭に来まっせ。
ネトレプコもまだまだ売り出したばかりなのに、いい気になってはいけませんな。別嬪じゃが、ちと知性に欠けるのではと最近感じるのじゃが・・・・・

さて、葬儀が終わったばかりのパヴァロッティじゃが、今日の海外メディアはもう遺産をめぐる骨肉相食む争い勃発の予兆に話題騒然じゃ。
http://news.scotsman.com/international.cfm?id=1450412007
http://www.dailymail.co.uk/pages/live/articles/news/worldnews.html?in_article_id=481109&in_page_id=1811
等々。
遺産総額はなんと250万ポンド(約580億円)以上とのこと(カラヤンより遥かに多い)。ニューヨークのアパートだけでも1100万ドル(12.5億円)以上するらしい。
貧乏人のわしには見当もつかん金額じゃ。

どうもパヴァロッティが死の一ヶ月前に、前妻や前妻との間にもうけた娘達に有利な内容に遺言を書き直したらしく、それを察知したニコレッタ現夫人が躍起になって遺書を捜しているらしい。
さらにパヴァロッティは、現夫人との離婚を友人にほのめかしていたというから
、この種の話題に疎い爺は驚くばかりじゃ。

不世出のテナーには最後まで高潔で偉大な芸術家であってほしかったが、それも叶わぬ願いじゃ。
晩節を汚した感のパヴァロッティじゃが、それでも人々に愛され続けたのもパヴァロッティの人徳じゃろ。声も人柄も天真爛漫だったというところかのう。

金は無くても苦労じゃが、あったらあったでない以上の苦労があるようですな。
by 峠茶屋の爺 (2007-09-11 23:36) 

Sardanapalus

私もこの記事読んで、なぜネトレプコがヴィリャゾンのキャンセルがあってもガラコンサートを全て歌ったのか分かった気がしました。やっぱり大勢相手だと儲かるんですね。キャンセルすると損害も大きいのかな?若いうちからマイクコンサートばっかりやってないで、仕事をちゃんと選んでオペラハウスでじっくり声を育てて欲しいものです。
by Sardanapalus (2007-09-11 23:53) 

keyaki

euridiceさん
>ドミンゴ&パヴァロッティ=大歌手=商業主義とは無縁
とんでもない誤解ですよね。

この記者が「ドミンゴ&パヴァロッティ=大歌手」と思っているのは、商業主義に乗っかって名前を売ったからに他ならないからじゃないですか。
優れた歌手は必要ですが、そういう「大歌手」なんてオペラにはいらないから、もう現れなくてもよろしくってよ、ですわ。
by keyaki (2007-09-12 00:36) 

なつ

>「今年の同音楽祭で大喝采を受けたプラシド・ドミンゴや、6日に亡くなったルチアーノ・パヴァロッティのような大歌手はもう現れないのかもしれない」

こういうのって、往年の映画スターが亡くなった時などにも使われる、マスコミの常套文句ですよね。あと「ひとつの時代が終わりを告げた」とか。

新聞記事の紹介ありがとうございます。
(シコフは「他にも有名歌手4人」に括られてる。。。)
結局、儲けは、お話にならないくらい
大ホール、スタジアムでの観客相手>歌劇場での聴衆相手
なんですねえ。
by なつ (2007-09-12 00:52) 

keyaki

Sardanapalusさん、
ビリャゾンは、本当の病気のようですが、ネトレプコは、単に過密スケジュールだったということですね。彼女のマネジメント会社が強欲なのか、そういうところとは縁を切っても、もうやっていけるんじゃないかしらね。
よく日本でも、歌手が所属事務所から独立なんてありますよね。
by keyaki (2007-09-12 01:55) 

keyaki

なつさん
常套文句は適切に使って欲しいですよね。
パヴァロッティのこともずいぶん個人のブログでも取り上げられていますが、「今後、オペラ界はどうなるのでしょうか....」なんてのもあったりして???です。
日本でも演歌歌手とか、TVなんかに出るより、地方巡業,どさ回りが一番儲かるっていいますものね。
オペラは、劇場自体が、国の補助金を受けていたりで、そうそうべらぼうなギャラは出せないでしょうね。有名な劇場ほど安いっていいますものね。
by keyaki (2007-09-12 02:08) 

keyaki

峠茶屋の爺さま
イタリアでは遺産の半分を子供たちが均等に、1/4を妻、残りは決まってないので、その1/4の争いになるとかですか? どこかで見ました。いい加減に読んでますので、違っているかもしれませんが。
私が、意外だったのは、離婚でアドゥアさんに全部あげちゃったので、お金がなくて、いつまでも「さよなら公演」で昔の名前で出ていますって、恥を忍んで頑張っているんだと同情していたんですが、とんでもないってことですね。

私は、パヴァロッティの現妻ニコレッタには、ちょっと頭に来てるんですよ。彼女と結婚したとたんにパヴァロッティのホームページが様変わりしちゃって、過去の詳細な公演記録が削除されて、今後の「さよなら公演」のスケジュールになっちゃったんですよね。3人の家族写真をトップページにしたり、出しゃばり過ぎですし。それに、亡くなったらあっという間に、トップページだけにしちゃいましたものね。40公演のうちどれだけ回ったのか確認したかったのに.... 手際よすぎですよ。

>二人とも葬式には来まへんでしたな
好奇心で、面白くもない葬儀の映像を見ましたが、TVが写さなかっただけかもしれませんが、私が顔を知っているオペラ歌手は誰も見えませんでした。参列者の中で、私が確認できたのは、ゼッフィレッリだけ、夏でもあのトレードマークのスカーフを首にかけてました。あと、フレーニは、中継に参加していろいろコメントしてました。フレーニもとても悲しんでましたが、彼女は前妻のアドゥアさんと親しいですからパヴァロッティが生きている間は、このぉ〜若い女にぃ〜、なんて思ってたんじゃないですかね。

オペラ歌手さんたちは、あとで、追悼式でも計画しているのかしら?
でもシーズン始まっちゃいますよね。
by keyaki (2007-09-13 21:33) 

babyfairy

管理人様、お久しぶりです。

>「今年の同音楽祭で大喝采を受けたプラシド・ドミンゴや、6日に亡くなったルチアーノ・パヴァロッティのような大歌手はもう現れないのかもしれない」

パヴァロッティとドミンゴだけが大スターだなんて噴飯ものです。パヴァロッティは確かに不世出のテノール歌手の一人ですが。 オペラ歌手はその多くが(私の追いかけてるフロレス王子も含め)、大なり小なり商業主義に乗っているのではないですか? 聖人じゃないですからね。 そう言えばフロレス王子もペーザロではご近所で交流もあったというけど、葬式には出ずに、英国のプロム(野外&マイク使っての)に出演していましたよ。 そういうのはどうかと思うけど、歌手としても進歩して行っているから未だファンは続けようと思っていますが。。。
by babyfairy (2007-09-15 22:33) 

keyaki

babyfairyさん、お久しぶりです。
商業主義と芸術、なかなか難しい問題ですけど、結局は程度問題でしょうね。
パヴァロッティは、特殊なケースだとおもいます。どうやら、みんなで舞台を作り上げて行くということに関心がなかったようです。彼にとっては、覚えているアリアを次々歌うコンサートが一番楽しかったんでしょうね。

やっぱり、仕事優先ですよね。
フローレスは、歌はもちろんですが、演技的にも進歩してますよね。チューリヒのドン・パスクアーレのエルネスト、おぼっちゃんの雰囲気がよく出ていていいですね。
by keyaki (2007-09-16 02:43) 

babyfairy

Keyakiさん、
フロレス王子はパヴァロッティについて追悼文を寄せています。ファン・フォーラムの方にマネージャーを通して投稿されたのですが、その中で、亡きパヴァロッティとの思い出を懐かしく思い出していました(ペーザロではご近所だったので親交があり、7月30日にはパヴァロッティ宅のディナーに夫婦で出席したそうです)。いわゆる社交辞令の通り一遍な追悼文とは違って心が籠っていると思いました。

やっぱりあれは断れない仕事だったんでしょう。英国人はああいうクロスオーバー的なお祭り騒ぎが大好きですから、 フロレスが来なかったら今後彼は総スカン食うでしょうしね。
by babyfairy (2007-09-16 05:10) 

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