新国《ばらの騎士》鑑賞:2007.6.15 [オペラ生舞台鑑賞記録]
ジョナサン・ミラー演出の《ばらの騎士》を見てきました。《ばらの騎士》は、いろいろ映像で見られますが、長いので、一気に通して見たことがありません。劇場に行って、目にとまったのが、終演10時10分。6時開演で25分の休憩2回をはさんで終るのが10時過ぎ、そのせいか、いつもより、持ち込みのサンドイッチ等で、腹ごしらえしている人が目立ちました。
時代設定は、1912年に移してありましたが、所謂、読み替え演出ではありません。《ばらの騎士》の初演は、1911年1月26日、その翌年ですから、作曲された時代に置き変えたということです。
私たちには無縁の貴族の生活を覗いて大笑い、そして、最後は、ほろりさせられ、音楽は、ワルツにのって心地よく流れて行く、休憩とカーテンコールを含めて4時間半の長丁場ですが、とても楽しかったです。
印象的だったところはいろいろありますが、1幕で、チビちゃんのお小姓が朝のチョコレートを持って来て、テーブルに置いて、二つカップがあることを指差し確認、ということは、使用人たちは、オクタヴィアンがいることを知っているということなんでしょうね。マルシャリンが、鏡台の前に座って髪を整えてさせている間、鏡越しに、遠くにいるオクタヴィアンと目配せしたり、そして、若いオクタヴィアンと自分を同時に鏡の中に見た時に、自分の老いを感じる場面。そして、ご用聞きとか、元帥夫人に取り入ろうとやって来た人々が去り、一人になった元帥夫人が、タバコをふかし、物思いに耽る1幕の終わり.....絵になっていました。
けっこう、細かく演出されていて、思い出すときりがないのですが、気になったまま、終ってしまったのは、元帥夫人が、レストランの特別室に忘れて行った、コート。最後に、かわいいチビちゃんのお小姓が戻ってきたので、よしよし、コートを取りに来たんだな、思ったのですが、テーブルの上の食べ物を見つけて、つまみ食いして帰っちゃいました。つまみ食いといえば、いろんな場面で、つまみ食いしてました。貴族の館といえ、なんか自由な雰囲気を感じました。
休憩時間にオケピットを覗いてみましたが、いろんな種類の管楽器がいっぱい、楽譜も見ただけで、難しそう〜でした。(1階4列目で鑑賞)
歌手さんへの一言コメント
エレナ・ツィトコーワElena Zhidkova(オクタヴィアン):
ロシア出身。前回の《こうもり》のオルロフスキー公爵に続いての出演です。相変わらず、ほっそり小柄ですが、声に深みが増し、ちょっと太くなった(声が)感じでしたが、マリアンドルになった時との差があってよかったです。新国のアイドルとして健在で、観客の大喝采を受け、とても嬉しそうでした。また、新国に来て欲しいですね。
カミッラ・ニールント Camilla Nylund(元帥夫人):
1968年フィンランドのヴァーサ生まれ。とても大柄な美人です。顔はほっそりですが、かなりのグラマー(死語かしら)。その立居振る舞い、表情にも気品があり、これだけ大きいと威厳もあります(近くで見る価値有り)。マルシャリンの年齢は32歳(未満)ということですが、オペラ年齢で言えば、今が、最高のマルシャリンかもしれません。3幕の元帥夫人登場は、威厳に満ちて美しく、曲線的なS字型シルエットの黒のドレス(右写真)がとても素敵でした。こういうドレスは、グラマーでなければ似合いませんね。※出産直後で、ちょっと太めなんだそうです。
ペータ・ローゼ Peter Rose (オックス男爵):
イギリス出身、ということは、ピーター・ローズかしら? 貴族には見えませんでしたが、粗野・下品、高慢・自己中で好色、しかも弱虫というオックス男爵を好演。この役、非常に低い音がありますが、よく響いてました。また、第2幕後半で、『オックス男爵のワルツ』をワインを一瓶飲み干して、機嫌を直して調子良く歌っていました。
オフェリア・サラ Ofelia Sala (ゾフィー):
スペインのバレンシア出身。衣裳とか髪型のせいか、ゾフィーのお母さん(亡くなってるんですね)かと思いました。かなりのキャリアがあるようですから、若くはないのかも知れませんが、一所懸命、毅然とした態度をとろうと努力している様子が、可愛らしく、ポッチャリタイプですが、小柄で、オクタヴィアンとの釣り合いもよかったです(右下写真)。最後のオクタヴェアンとの二重唱もよかったです。
♪ムーティ指揮 カヴァーニ演出 ミラノ・スカラ座2001年《仮面舞踏会》オスカル NHK-BS2放送(6.17追記)
ゲオルク・ティッヒ Georg Tichy (ファーニナル)
1949年6月9日生まれ。オーストリア出身。新国には《道化師》トニオに続いての登場。トニオも名演でしたが、役柄的には、こちらの方が合っているかな、なにしろウィーン少年合唱団出身ですから。
公演日程:2007年6月9,12,15,17,20日 【指揮】ペーター・シュナイダー 【演出】ジョナサン・ミラー 【美術・衣裳】イザベラ・バイウォーター 【照明】磯野 睦 【舞台監督】大澤 裕 【合唱指揮】三澤 洋史 【合唱】新国立劇場合唱団 【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団 | |
キャスト 【元帥夫人】カミッラ・ニールント 【オックス男爵】ペーター・ローゼ 【オクタヴィアン】エレナ・ツィトコーワ 【ファーニナル】ゲオルグ・ティッヒ 【ゾフィー】オフェリア・サラ 【マリアンネ】田中 三佐代 【テノール歌手】水口 聡 【警部】妻屋 秀和 【ヴァルツァッキ】高橋 淳 【アンニーナ】背戸 裕子 【元帥夫人の執事】秋谷 直之 【ファーニナル家の執事】経種 廉彦 【公証人】晴 雅彦 【料理屋の主人】加茂下 稔 【帽子屋】木下 周子 【動物商】青地 英幸 【レオポルド】三戸 大久 |
>元帥夫人が、レストランの特別室に忘れて行った、コート
そうそう、私もあれを持っていくんだろうと思いました。つまみ食いしただけで行っちゃったので、あれれ?!でした。映像のオットー・シェンク演出のだと、ゾフィーが落としたハンカチを拾って行くんでした、たしか・・
>つまみ食い
みんなしてやってるって感じでしたね・・
TBします。
by euridice (2007-06-16 21:52)
euridiceさんの方でもコメントさせていただきましたけど、この演出なら新国行きたいな~と思います。keyakiさんの記事を読んで益々行きたくなっちゃいました。こういう、小ネタと裏設定の多い演出大好きなんです♪
>ペータ・ローゼ Peter Rose (オックス男爵):
>イギリス出身、ということは、ピーター・ローズかしら?
はい、そうです!ローズはENOで活躍している芸達者なバスですね。記事の写真で確認しました。私が見たときも良い仕事してましたけど、新国のプロフィールはなぜにドイツ語読みなんでしょう?(^^)ドイツ語歌唱だから?
by Sardanapalus (2007-06-16 23:21)
感じの良い演出ですね。
小芝居もたのしそうです。
>オフェリア・サラ
あ!
スカラ座の仮面舞踏会のオスカルちゃんですね!
私の中では今まで見た中で一番好きなオスカルです~。
こんな美人さんだったんですね^^
by (2007-06-17 00:50)
euridiceさん、
>ゾフィーが落としたハンカチを拾って行くんでした、たしか・・
これが台本通りみたいですね。
気になりますよね、あのコート。15日だけ、あのチビちゃんお小姓が忘れたとか......あの子役はバレーをやってるようなかんじでしたね。
by keyaki (2007-06-17 01:03)
Sardanapalusさん、
数回見ないと、全部は把握できないですね。
1幕の終わりで、突然、降り始める雨が、がらんとした部屋の壁に写し出される影で表現され、マルシャリンが一人、タバコをふかす....幕、というような美しい場面も印象に残っています。
>>イギリス出身、ということは、ピーター・ローズかしら?
おぉ、やっぱり、ご覧になってるんですね。
ドイツだと、ペーター・ローズって言われてしまうんでしょうけど、日本では、ピーター・ローズという表記の方が、出身地がわかっていいですよね。
by keyaki (2007-06-17 01:18)
りょーさんって、ほんと、記憶力抜群!
>>オフェリア・サラ
ネットで調べた略歴にはスカラ座出演のことも書いてありましたが、それって、私、見てないです。いつの公演かしら。BSで放送されたのかしら。りょーさんのブログで、ずーっと前に仮面舞踏会取り上げてましたけど、そこに書いてあるのかな?
by keyaki (2007-06-17 01:30)
>りょーさんって、ほんと、記憶力抜群!
ほんと!
調べてみました。私も一応見てました...というべきか、録画してました...のほうかも・・
リッカルド・ムーティ指揮 リリアーナ・カヴァーニ演出 ミラノ・スカラ座2001年 NHK-BS2
アメリア:マリア・グレギーナ、リッカルド:サルヴァトーレ・リチートラ、レナート:ブルーノ・カプローニ、ウルリカ:マリアーナ・ペンチェヴァ、オスカル:オフェリア・サラ
>オスカルちゃん
そうだったんですねぇ・・・見てみなくちゃ....
>美しい場面
1幕フィナーレ、一番美しかったですね。これだけさりげなくというか、変に凝った舞台じゃなくて、あれだけ印象的なのは、珍しいと思います。
by euridice (2007-06-17 06:37)
そうそう
>気になりますよね、あのコート。
他の日に見た方、どうだったか是非教えてください!
by euridice (2007-06-17 06:54)
KEYAKIさん、書き込みありがとうございました。
伺わせていただきました。
あの黒いジャケットですが、どの場面だったか元帥夫人が一度退場して、左通路奥から2回目に登場した際には、着ていませんでした。ですので舞台上で脱いだのではなかったように思います・・
by とーる (2007-06-17 07:51)
とーるさん、いらっしゃいませ。
>あの黒いジャケット
15日には、舞台中央で、優雅に脱いでました....彼女が立ち去った後、暖炉脇の椅子の背に掛けてありました。
こういう細かいことは、けっこう、その都度、違っていたり、歌手さんがいろいろ忘れて、アドリブで処理したりもあるようですね。
いずれにしろ、演出意図とはあまり関係ないようですね。
ありがとうございます。
by keyaki (2007-06-17 08:28)
euridiceさん、
オフェリア・サラのオスカルちゃん情報ありがとうございます。
オスカル似合いそうですね。
黒のジャケット置き忘れの件、外で食事をした時なんかは、いつも家族に、忘れものない?と聞く習慣があるので、やっぱり、気になりましたね。
まあ、お店の主人が、あとで、お届けにあがるんでしょうけど。
by keyaki (2007-06-17 08:35)
keyakiさん、こんにちは!
第三幕は壁も半分塗りかけだし、後ろの壁のパイプも露出していたし、下手のテーブルには前のお客の残飯が無造作に置かれていましたので特別室というよりも、なんだか別の怪しい雰囲気の場所でしたよね。しかも室内の照明がロウソクだけというのも一層怪しいですね。
そこには場違いなマルシャリンが黒い衣裳で登場ということで深読みすることも可能でしょう。お小姓はジャケットを取りに戻ったのですが、ついつまみ食いをしてしまい、結局舞台の真ん中で頬張ってるところで幕になりました。だから上着はあの子が持って行くのでしょう。
とっても卑しい行為ですが、残念ながら今でもありそうな光景だと思いました。
TBさせていただきます。
by (2007-06-18 00:10)
一幕の終りは、印象に残る、いいシーンでした!
シュナイダーもよかったと思います。
オックスは低い音がとても響いていましたね。ワインをガンガン飲んでいたのも驚きましたが。
トラックバックさせていただきました。
by (2007-06-18 00:49)
ばら、けっこう評判よいようですね。keyakiさん、ご一緒したいものですが、実現するのは、いつのぉ~ひぃ~かぁ...♪
ピーター・ローズ氏ね、なるほど。大昔は、歌手ならイタリアンに、バレリーナならロシアンに聞こえる(読める)名前をわざと選んでたこともあるようですが。この場合はつづりが同じ(たぶん)なんで、日本側の問題ですね。しかも、ENOでの活動が多いというなら、なおさら。
ツィトコーワも、以前調べてみたらЖидковаで、どちらかといえばジトコーヴァでしたけど、まあ、この人はプロとしての活動をほとんど(あまり?)ロシアではしていないようです。
最近こういうことにこだわってもしょうがない、と思うようになりました(そのわりにはこうやってカキコしちゃったりしてますが。^^:;)。ロシア人も、エヴゲーニー兄ちゃんはユージン、エレーナおばさんはヘレンとか自己紹介してたりしますし。
by Sasha (2007-06-18 15:34)
ハンナ さん、gonさん、TBありがとうございます。
お二人とも2回ご覧になっているんですよね〜。
こういう演出だと、連日見ても、飽きないでしょうね。
by keyaki (2007-06-18 16:35)
Sashaさん、
>ピーター・ローズ、ペーター・ローゼ
本人が、使い分けている可能性もありますね。
>ツィトコーワ
ドイツもの中心にレパートリーを順調に増やしているようだけど、カルメンはすでに歌っているし、ドイツもの以外では、エボリとかアムネリスもやってみたい...そうですから、Sashaさんの好きなタイプの歌手になる可能性もなくはないわね。
by keyaki (2007-06-18 16:55)
keyakiさん、こんばんは。
あれ?ここに書き込むのは初めてだったかな?ちょくちょく覗かせていただいているので初めての気がしませんが・・・(^^;)。
新国の「ばらの騎士」は17日のマチネに観に行きました。マルシャリンのジャケットはどこに置いたか覚えていませんが、おチビちゃんが持ち帰ることはありませんでした。
TBさせていただきます。これからも宜しくお願い致します。
by YASU47 (2007-06-20 22:39)
YASU47さん、コメントありがとうございます。
私も、オペラ関連のブログは、いろいろ巡り歩いてますので、存じ上げています。
長いオペラで、帰る時間も気になりましたが、みなさん、熱心なカーテンコールで、とてもいい雰囲気でしたね。
by keyaki (2007-06-21 23:06)