江戸川乱歩『パノラマ島奇談』夢咲く人間花火 [本]
合間合間に乱歩を読む。
江戸川乱歩『パノラマ島奇談』
パノラマ島奇談:この世を経験しない先から、この世に飽き果てていた男、人見広介。自分と瓜二つの大富豪、菰田源三郎が死んだときから、彼は壮大な計画を思いつきます。それは菰田に成りすまして蘇った振りをし、その莫大な財産を使い、自分が妄想してきた地上の楽園を現実に建設しようというものでした……
パノラマ島のビジョンは今読んでも鮮烈に魅力的。細部を見れば間抜けなのに、全体を通せば眩暈がするほど官能的。現代の技術で完全再現した映像化作品が是非みたい。
白昼夢:イカれた男の告白する殺人。まさに白昼夢、強烈な日差しの中一瞬浮かび上がる幻想のような作品。死体のイメージが強烈ですが、屍蝋化死体って本当にそんなに綺麗なんですかね?
鬼:野犬に食い荒らされた死体をめぐる殺人事件。かなり古臭いトリックはいくらでも看破できそうなのに。この事件にこのタイトルはもったいなくないか?
火縄銃:ベッドの上の死体。傍らには火縄銃。子供の頃読んだガキ向け探偵クイズなんかに載ってたトリック。これが元祖ですか?でも現実には結構ある事故です。
接吻:愛しい妻が写真に口づけするところを目撃した男。ラスト数行が書きたかっただけの作品ですね。乱歩ってこういうのも書くんだ。
以上5編。表題作と”白昼夢”以外は乱歩らしさがあまりない、普通の作品です。ちなみにパノラマ島、コミックにもなってるみたいですが、作画はBLも手がける方。調べたら作者HPトップがいきなり男乳首で軽くショック。見たい……かなぁ。私はドラマの影響で人見=伊東四朗なのでBL作画とは相性が…つかもう一度見たくなったわ、ドラマ版。私の知る限り、もっとも乱歩を分かってる(原作に忠実という意味ではない)井上梅次監督なので凄かったと記憶してますが、さすがに曖昧。
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