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科学コミュニケーターの養成カリキュラム [科学技術インタープリター養成プログラム]

「科学コミュニケーター養成、本格始動か」で、国内の3大学で科学技術コミュニケーターの養成が本格的に始まることを紹介した。そこで、「(科学コミュニケーションの)体系だった教育カリキュラムは存在しない。どんな人を講師に迎えるのか、あるいは座学なのか実践重視なのか、研究活動も行うのか、中身を一から練る必要があるだろう。」と書いたが、北海道大学の「科学技術コミュニケーター養成ユニット」では、カリキュラムやスタッフがすでに公開されている。カリキュラムとしては、講義・実践ともに、科学コミュニケーターの育成を主眼としたもので、さらに教科書作りも進めていきたいらしい。さらに土日、夜間に開講するなど、社会人やダブルメジャーとしての受講も可能なようだ。
 東京大学もwebでは詳細は分からなかったものの、朝日新聞の記事などの情報を総合すると、評論家の立花隆氏や作家の瀬名秀明氏が講師として加わるもよう。現役のジャーナリスト、ライターから直接指導を受けられるようだ。
 たびたび書いてもいるが、このように科学コミュニケーターを養成しても彼らの就職先がじゅうぶんにあるとは言い難い。「科学コミュニケーター養成、本格始動か」では次のように指摘した。

(追記2) 以前書いたことがあるが、となると養成した科学コミュニケーターの行き先が気になる。専門職として養成すると、就職先を狭めることにもなりかねないからだ。さらに、理系博士号取得者ともなれば年齢的にも経済的にも大変になってくる。マスメディア、一般企業ともに、専門職として科学コミュニケーションを学んだ人を雇っていくように、働きかけることも必要ではないだろうか。


 そこでは言葉足らずだったので補足しておきたい。たとえば、科学コミュニケーションを学んだ人が活躍できる職業としては、科学記者、科学ライター、科学系編集者、科学館インタープリターなどがあるだろう。
 しかしながら、新聞、出版などのメディアでは、OJTで仕事を学んでいくのが普通のようだ。つまり、若いうちに就職して、仕事をしながら取材・編集の基礎を学び、一通りの仕事ができるようになってから希望の科学部など科学系の部署に移るという形式である。そのため、科学コミュニケーションの大学院に通ったひとは年齢を積み重ねたぶん不利になる。理系博士号取得者であれば、なおさらだ。しかし一方でこのような人材が求められているのは間違いない。なので、従来型のメディア企業に対しては、科学コミュニケーションを学んだ人を専門職として採用するように働きかけるべきであろう。科学ライターだってそうだ。いきなりフリーで食べていけるはずもないだろうし、行き先を考えなくてはならない。
 むしろ、わざわざ科学コミュニケーション講座を銘打って人材を養成するのだから、今までにない科学コミュニケーションの場を創造できる人を育てるべきではないだろうか。既存の限られた就職先、科学コミュニケーション業界に縛られる必要なんかないはずだ。ウェブを利用した新しい科学コミュニケーションの形を作り出してもいいし、サイエンスカフェのような科学者と市民とをつなぐ場を構築していくのもいい。科学教育プログラムの開発、サイエンスミュージアムの設計、企業メセナとしての科学コミュニケーションの企画、広告とのタイアップ、サイエンスアート・・・・科学コミュニケーターの活躍場所はいろいろあるはずだ。これらの場を一から作り上げ、さらにいえばビジネスモデルを確立し、科学コミュニケーションのマーケットを広げるような人が必要だろう。ライティングスキル、プレゼンテーションスキルはもちろん必須だが、ミュージアムマネージメント、サイエンスメディア論、サイエンスアート、教育工学、NPOと市民参加など、広く学ぶ必要がある。(もちろん科学技術政策、科学技術社会論、科学論、科学倫理学なども。)
 そうでないと、ただでさえ限られている科学コミュニケーション業界に人があふれるだけで、科学コミュニケーション自体が広がっていかない気がするのだ。さらにいえば、科学研究を噛み砕いて分かりやすく伝えるだけの受注産業にしかなれないだろう。
 今のところ科学コミュニケーションに熱心な(特に若手の)人々は、アクティブだしアイディアもいろいろ持っているし、そんな心配は要らないかもしれない。だが、5年後、10年後のことを考えたら、科学コミュニケーションそのものの裾野を広げられる人を養成していくべきだろう。

#そもそも、科学コミュニケーション業界をまだ軽視しているからではないかと思う。ひどいものになると、余った博士号取得者の行き先として安易に科学コミュニケーターを挙げてたりもする。そりゃないだろうと思うのは、僕だけだろうか。

(追記)
 何かを書くときは、じゅうぶん調べてからというのは大原則だが、このblogは思い付きで書いていることが多いので、そこまで調べずに書いていることも多い。ああだこうだ批判したり提案したりすることもあるが、そこは許してください。
 さて、本題の科学コミュニケーター養成だが、早稲田大学もプレスリリースがあった。ここは本格的な”修士課程”のコースのようだ。北大は”大学院”ではないようですね。残る東大は、どこにも何も見当たらないのだが・・・。


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