不満の伝え方 127 [J3 叱る・不満を伝える]
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2005.12.10不満の伝え方 127
ー「お父さん、お帰りなさい」のない日!ー
12月2日(金)夜といっても、7時前。いつものように帰宅した。
いつもは、妻と娘二人が出迎えてくれる。そして、一人一人とハグする。ずっと続いてきている我が家の習慣だ。
1日の仕事の疲れが半減する幸せなひとときであり、仕事の場から家庭へと気持ちの切りかえの儀式でもある。
今日も「ただいま。」と言って、玄関に入ると同時に、クニコが駆け寄ってきて、私の胸の中に飛びついた。
いつものように、そのまま抱っこして「あっかわいい。」と言って、ほっぺにキスした。
ところが、その後誰も来ない。もう一度「お父さん帰ったよ。」と言っても、誰も来ない。「おかしいな。」と思って家の中に入ると、アキコはエレクトーンの練習をしていた。
妻は、「ごめん。」と言いながら、「今、あーちゃん(実母)の手伝いをして手を離せなかったの。」と言う。
「妻はしょうがないとして、アキコは問題だな。」と思った。
さて、アキコにどう言ったものか。
A「エレクトーンの練習ぐらい何だ! お父さんは1日働いてきているんだぞ! まず、お父さんが帰ったら玄関に来て迎えるの!」
ある意味で、これは私の本音だ。しかし、この言い方ではダメだ。おそらく叱られるのが恐くて、アキコはこれから気をつけるようになるかもしれないが、叱られないためにやるのでは意味がない。読者のみなさんだったら、どう言いますか。?(思考時間1分)
私「何だ、エレクトーンの練習をしていたのか。お父さんが帰ってきたのはわかっていたんだろ?」
アキコ:うなずく。
B私「アキコ、お父さんはアキコが玄関に来てくれるのをとっても楽しみにしているんだよ。アキコを抱っこすると、仕事の疲れもふっとぶんだよ。(エレクトーンの練習の途中でも来てね。)」
一瞬Aの言い方も頭によぎったが、「これはわたしメッセージの方がいいな。」と瞬時に判断して、先のBの言い方になった。
Aの言い方では、様々な反発を呼ぶ可能性があった。少し予想してみると……。
○私「エレクトーンの練習ぐらい何だ!」→アキコ「エレクトーンの練習だって、大事なの。もうすぐ発表会があるから。」
○私「お父さんは1日働いてきているんだぞ!」→アキコ「アキコだって、ずっと学校で勉強してきたよ。そのうえお母さんから『発表会が近いからエレクトーンの練習をしなさい!』って大変なの。」
○私「お父さんが帰ったら玄関に来て迎えるの!」→アキコ「お父さんだって、来ないことあるじゃない。」
やはりAの言い方をするのは得策ではない。
相手を責めるメッセージを送る前に、どうして問題か、なぜそうして欲しいか自分の心に問うてみた。それは、出迎えてくれないと、私がさびしいからだ。言い換えれば、出迎えてくれるとうれしくなり、疲れもふっとぶからだ。だったら、その気持ちをそのままアキコに伝えればいいわけだ。その方が父親としての私の気持ちが伝わり、Aの言い方のような反発も少ない。
私「アキコ、お父さんはアキコが玄関に来てくれるのをとっても楽しみにしているんだよ。アキコを抱っこすると、仕事の疲れもふっとぶんだよ。」
アキコも、そうしたお父さんの気持ちを聞けば、「エレクトーンの練習をしなきゃいけないけど、いったん止めてお父さんを出迎えよう。お父さんは、楽しみにしているから。」と、自発的に判断・行動するだろう。
実際、その後はずっと今まで通り出迎えてくれている。
このような、相手の言動を評価し責めるのではなく、わたしの感情や考え方を伝えるやり方を、アイ(I)メッセージとか「わたしメッセージ」と言う。親業では、「わたしメッセージ」と呼んでいる。(親業の専売特許ではない。)
前親業訓練協会理事長の近藤千恵さんによれば、子どもが親からのメッセージを受け止めやすくなるには、次の三つの部分がそろっていることがポイントだという。
次に、近藤千恵『子どもに愛が伝わっていますか』(三笠書房)から引用する。
1 子どもの問題となる行動やことがらを非難がましくない形で伝える。
2 その行動によって親が受ける影響を具体的に伝える。
3 それによる親の感情を正確に伝える。
この三つがそろうことで、子どもには、親が何を考えているかがよくわかります。実例をあげましょう。
●あなたが家のなかで大きな声でさわぐと……………………………(行動)
●頭にガンガンひびいて、本を読みたいのに集中できなくて………(影響)
●おかあさんイライラしちゃう…………………………………………(感情)
この三つの部分でできた「わたしメッセージ」を「三部構成のわたしメッセージ」と呼びます。
このメッセージでは、「親への影響」の部分が入っていることがとくに重要です。「影響」の部分がないメッセージを出してみても、それは、あることについて親が嫌な感じをもっているということが伝わるだけで、子ども自身が納得して自分の行動を変えるところまでは、子どもの心を動かしにくいのです。「影響」の部分が入ることで「どうして」それが気にかかるのかが子どもに伝わり、これが説得力を高め、子どもが行動を変えやすくなるわけです。(以上、前掲書126ページから128ページまで引用)」
私の場合も、親業などに学んで時々使う。たとえば、「食事中にいすに立ったりすると(行動)、転んでケガをしないかと心配で(感情)、落ち着いて食べられないんだよ(影響)。」と言ったり、「部屋を掃除してくれていると(行動)、すぐに仕事に集中できるから(影響)、とってもありがたいよ。(感情)」(肯定のわたしメッセージ)と言ったりする。
今回の場合、「アキコが出迎えに来てくれないと(行動)、抱っこできなくて(影響)さびしいんだ(感情)。」ということになる。分かっている行動など省略されたり、影響と感情が融合しているような表現になることもある。
一番大事なことは、きちんと自分の気持ち(感情)やなぜ問題あるいはよいだと思うのか(影響)少し掘り下げて、相手を責める前に私の率直な気持ちを伝えることだと思う。
そんな率直な気持ちの伝え合いの中で、お互いの気持ちを大切にし合う土壌(文化)ができてくると思う。
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