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「平成19年新潟県中越沖地震」瓦屋根に関する報告書(平成19年7月16日 新潟県中越沖地震:柏崎市・刈羽村) [屋根には「瓦」]

 今月の初め(8/1~8/2)新潟県中越沖地震の被災地に、所属する愛知県陶器瓦工業組合-技術委員会のメンバーの一人として現地調査に行ってきました。

 末尾に収録した技術委員会としての報告書に併せて、私個人としての所感を含む報告を書かせていただきます。
(最末尾に愛知県陶器瓦工業組合-技術委員会としての報告書を収録してあります。)

 柏崎市内の倒壊建物

 

 今回の視察は、宿泊を長岡市に取り、高速道路の事情により北陸道-柏崎ICで降りることが出来ず西山ICより一般道を走行、その後刈羽村を通り柏崎市内で徒歩調査、そしてJR北陸線で斜面崩壊によって不通となった現場に立ち寄ると行った経路での視察でした。

 刈羽村付近

 刈羽村の倒壊建物

 

 まず全般的な印象についてですが、切り土・盛り土によって造成された一部地域を除き(地盤の問題で地区としてかなりの比率で倒壊)、古い建物のうち何らかの問題があると思われる建物が「選択的に倒壊」に至っているとの印象を受けました。

(上の写真を見ていただいても、屋根に被害がありブルーシートが掛けられた多々物は沢山ありますが、倒壊にまで至っている建物はTV等で受けていた印象に比べてかなり少なく感じられました。)

 

 屋根材の違いによる倒壊の差異については、柏崎地域では元々住宅の大半が「木造軸組在来工法-瓦葺き」であり、他の屋根材や他の工法の建物を見つけること自体が大変難しく(つまり被災物件も瓦屋根、無事な物件も瓦屋根でした)、屋根材の種類による被災状況の差異を明らかにするまでには至りませんでした。

 ただし、数が少ないものの幾つかの被災物件の中には「RC造」や「金属屋根・鈑金屋根(板金屋根)」の建物なども存在しており、瓦屋根だから倒壊したという指摘については明らかに否定できる物と考えています。

   柏崎市内-RC造

 金属屋根

 金属屋根(要注意建物との表示有り)

 金属屋根

 いずれにしても、新興住宅地など新しい建物が大半を占める地区では、瓦屋根であってもその他の屋根材であっても全く被害を受けていないと思われる物件ばかりであり、最新の家に関してはほとんど心配が要らないと安堵いたしました。

 

 建物の倒壊については以上のように感じられましたが、瓦屋根部の被害ということでは以下のようなものでした。

 一部、縦揺れによる物と思われる「平部-桟瓦の浮き」が見られたものの被害物件数は少なく、ほとんどの屋根被害は「棟部の崩落」という形で発生していました。

 柏崎-建物自体は無事だが屋根に被害

 被害棟数自体も、柏崎市内を中心とする周辺地域の古い建物ではかなりの比率で発生しており、雨漏り防止にブルーシートを張った屋根もかなりの比率で存在しており、屋根被害はかなり大きかったと言わざるを得ません。

 柏崎市内

 ただし、築後新しい物件については(葺き替え後も含む)、国内各地での震災経験が生かされた工法にシフトが進んでいることもあるのか?、ほとんど被害は見受けられませんでした

(逆に言えば、最新の工法がもう少し早く普及して屋根被害さえなければ、ほとんど被害を受けていない物件や地域が沢山あったとの印象でした)

 

 ここから「地盤の問題」「建物の倒壊について(構造部分の被害)」と「屋根被害について」の三つの観点に分けて、更に詳しく書かせていただきます。

 



「地盤の問題」

 

 今回の被災地視察で強く思ったのは、「地盤」の大切さでした。

 家は当然の事ながら地盤の上に立てられており、家本体がどれほど頑丈に作られていようとも、「不等沈下」などで地盤が傾いたり「地割れ」などによって基礎の形が変わってしまったのでは持ちこたえようがありません

 柏崎-瓦置き場に走った地割れ

 倉庫内にも100mm厚のコンクリートが割れていました

 柏崎市内のいたるところでこんな様子も...。

 上越沖地震で被害の集中している地区は、その「地盤」に問題があり「液状化」「地割れ」により基礎に過大な力が発生したり、「切り土」「盛り土」により斜面の造成を行っている地域では「斜面の崩落」「不当沈下」などにより、地区として大半の建物に被害が及んでいます。

 また、これらの被害の場合は、建物を修理したり立て直せば住むという問題ではなく、「地盤」自身に何らかの手を加えない限り、同じような地震が発生すればどんな頑丈な建物を建てたとしてもまた被害が繰り返されるわけであり、問題としての根の深さを感じました。

  
柏崎-傾斜地での斜面崩落(斜面を支えていた擁壁が下の建物に倒れかかっています)

 
どこかの報告書からの引用ですが、引用元を失念してしまいました。

 

「建物の倒壊について(構造部分の被害)」

 建物の構造については専門外なので、別のご意見がありましたら遠慮無くご指摘いただきたいと考えていますが(私にとっても勉強になります)、先ほど書かせていただきましたように「古い建物のうち何らかの問題のある家」が「選択的に倒壊」したとの印象を持っています。

 

 
柏崎市内倒壊建物

 あくまでも印象ですが、根拠としては以下が上げられます。

  1. 古い建物でも外観上被害を受けていないと思われる物もずいぶんあり単純に築年数の古い尾建物が倒壊したとは書きづらく思われた点
  2.  倒壊した建物の構造材などを見るとシロアリなどによって構造材が弱っていたと思われる建物や接合部が不十分な強度でホゾが外れている建物なども幾つか発見できた点
  3. 開口部が広い一階部分駐車場の建物や店舗建物などが、選択的に被害を受けていたと見受けられたことに依るものです。

 シロアリによる構造材の強度低下?

 古い建物の土壁


 当初、私達は昭和56年以前の建築基準法-旧基準(56年に耐震強度が抜本的に改められています)の建物のうち、弱い物が倒壊したとの認識を持っていましたが、新潟県建築士会の住宅相談ボランティアに参加された方のご指摘に依れば、

『手抜き工事であったり、阪神震災以後の法改正で強化される以前の仕様の施工に問題(耐力的には不十分)があったのではということを同一見解として持っています。つまり一般的に言われている”昭和56年”という目印でかたづけてしまうのはまずい』

 ということであり、単純に昭和56年という線引きでは無いようです


 また、「屋根被害」という点については次項で詳しく書かせていただきますが、「屋根の被害さえなければ全く被災していない建物」が非常に数多く見られ瓦屋根の重さによる家本体の構造の被害と断定できるような物件はなかったと言うことを追記させていただきます。

(先の写真で紹介させていただいたように、RC造や鈑金屋根でも倒壊家屋があります)

 

「屋根被害について」

 瓦屋根の被害の大半は棟部の崩落にほぼ特定でき、発生要因は以下による物と推定されます。

 棟部の被害


 昭和40年の新潟地震以来の棟の工法は棟の工法は、モルタルの固着力や剪断強度を期待した「堅結のないモルタル工法」が普通に行われており、今回の地震では、瓦どうしを固着しているモルタルが瓦から剥がれた事や、モルタルの細い部分が折れた事による、固まりとしての棟のズレや、剥離落下が被害の大半を占めていました。

 モルタルの破損や剥離による棟部の落下

 冠瓦の剥離

 被害建物の棟構造(赤がモルタル)

 

 そして場合によっては、剥離落下したブロック状の棟の固まりが大屋根から下屋の屋根に落下し、被害を広げている事例も幾つか散見されました。

(今回の中越沖地震では棟の段数が3~4段程度と比較的低く落下する棟ブロックの重量がさほど重くなかったおかげで、宮城の被災地で見られたような下屋の屋根を突き破り一階の居室まで落下するような例はほとんど無かったようでした。)

 大屋根から崩落した棟による下屋の破損

 

 また、切り妻屋根が大半で寄せ棟屋根はかなり希少でしたが、隅棟に於いては屋根形状に合わせて堅結していない半端な瓦を用いざるを得ないこともあり、縦揺れによって半端な桟瓦が動き、その後隅棟の崩落へとつながったであろう事例も散見されました。

 隅棟の破損(倒壊物件より)


 なお、被災地視察にご同行いただいた現地屋根工事業の方のお話では、最近の工事では、」野地の棟木から鉄筋釘を打ちそれから横に鉄筋をはわせ瓦一枚一枚を堅結するなり、棟金具を使用したりする工法を励行しており、そう言った新しい施工をした屋根では被害は発生していないとのことです。


 また、現在のように防災瓦を使った「全数釘留め工法」になる以前に行われていた「銅線留め付け工法」で施工された屋根の場合、一部建物では地震の縦揺れにより平部(桟瓦)の浮きが見られる物件もあったことを報告させていただきます。

 平部(桟瓦)の浮き

 平部&棟部の浮き

 

PS.
 お相手下さった柏崎市内の屋根工事業者でえあるコイケカワラ様、そして日本屋根経済新聞社の市川裕之記者に、この場を借りて御礼申し上げます。

(この記事に掲載させていただいた写真の中には日本屋根経済新聞-市川記者の撮影された物も何点か含まれています)

 

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「参考HP」

 

2007年7月16日新潟県中越沖地震 - PukiWiki
http://wiki.arch.metro-u.ac.jp/saigai/index.php?2007%C7%AF7%B7%EE16%C6%FC%BF%B7%B3%E3%B8%A9%C3%E6%B1%DB%B2%AD%C3%CF%BF%CC
(日本建築学会-災害委員会の新潟県中越沖地震に関する報告書群です)
(特に長谷工 古賀一八氏の報告書が、築年数と被害状況の一覧表が載っており非常に参考になりました。:もちろん物件写真もあります)
(独立行政法人 建築研究所の報告書でも、部材の腐朽、地盤の問題などについて触れてあります)

So-net blogシロアリ屋の独り言2007年7月19日、柏崎、気温、32度、晴れ
http://blog.so-net.ne.jp/siroari/2007-07-19
(現地でシロアリ駆除をされていらっしゃるtoyoさんのBLOGです)

So-net blogシロアリ屋の独り言2007年7月21日、柏崎、気温29度、雨後曇り
http://blog.so-net.ne.jp/siroari/2007-07-22

So-net blog住宅を考える=吉越伸吾アトリエ発中越沖地震
http://blog.so-net.ne.jp/yoshigoe-shingo-AA/2007-08-05
(住宅相談のボランティアで現地を見られたヒゲボーズさんのBLOGです)


「私のBLOGの関連記事」

瓦屋根は地震に弱い」は、正しくない!?
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-03-13

「能登地震」瓦屋根に関する報告
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-07-17

「平成17年福岡県西方沖地震」瓦屋根に関する報告書
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-07-27

「平成16年新潟県中越地震」瓦屋根に関する被害報告書
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-07-28


 

   『新潟県中越沖地震の調査報告』

                        平成19年8月3日
                        技術環境委員会
                        報告書作成者 神谷彦二

調 査 日 8月1日及び2日、晴天
調査区域 柏崎市、刈羽村(震度六強地域)
調査参加 岡部委員長、神谷彦二、山本大成、事務局稲垣
同行調査 柏崎市コイケカワラ様、屋根新聞市川様
 
〚地震の概要〛
 2007年7月16日10時13分ごろに新潟県上中越沖地方においてM6.8(気象庁)の地震が発生。
この地震により新潟県柏崎市、長岡市、刈羽村、で震度6強を観測したほか、 広い範囲で震度5弱以上を観測し、その後も余震活動が継続。
   本震のメカニズム解は北西-南東圧縮の逆断層型(防災科研F-net解)であり2004年10月の新潟県中越地震など、この地域において過去に発生した地震のメカニズムと調和的。

〖住家被害〗
・全壊:1,046棟
・半壊:1,600棟
・一部破損:18,410棟
・火災件数:3件(建物火災1件、その他火災2件)
※総務省消防庁 平成19年(2007年)新潟県中越沖地震(第34報)より 平成19年7月31日15時30分現在
都道府県名 市町村名 危険(赤) 要注意(黄) 調査済(緑) 計
新潟県 柏崎市 4,616 8,295 19,179 32,090
新潟県 刈羽村 291 497 686 1,474
新潟県 出雲崎町 48 151 285 484
 計 4,955 8,943 20,150 34,048

〖全体の被害の印象〗
 長岡市から柏崎市に高速で向かう途中長岡市内ではほとんど被害物件、ブルーシートの屋根は見受けられなかったが、柏崎市に近づくにしたがってブルーシートをかぶせた屋根がぽつぽつ見え始める。市内に入ってからは屋根被害が目立ち全半壊家屋も見受けられた。 

 コイケカワラさんと合流し、瓦倉庫の被害(合掌屋根で建物は倒壊していないが建物内に段差ができて一部傾いている)を見た後、柏崎商店街、旧市街地、刈羽村を視察、地盤の沈下、段差で建物の基礎破壊による傾き、古い土壁土葺き屋根の住宅の倒壊、店舗の半壊、道路の亀裂、段差、がけ崩れ、擁壁の崩壊など地震における様々な被害が全て観察できるような状態であった。

 しかし、倒壊家屋のとなりや周辺でも無被害の家屋も沢山見受けられた。また地盤状態によって被害の多寡が顕著に見られた。

〖倒壊した家屋の特徴〗
 旧市街地区域には全壊、倒壊家屋も多くあった。そのほとんどは、土壁でヌキと竹小舞で壁を構成しており筋違の入ってないものであった。

 また、その多くの土台、柱にはシロアリ被害や腐りが確認できた。したがって、構造壁としての用をなしていない壁が多かったことと今回の地震では横揺れが大きかった為、柱、梁、桁に太い材料が使ってあっても横方向のモーメントが大きく、屋根だけでなく重い壁の振幅が大きくなり、土台や他の構造の接続部のホゾ折れが原因ではないかと見られるものが在り、阪神淡路大震災のときに多かった、たて揺れでのホゾ抜けによる土台と柱の離れによる倒壊とは別のパターンの要因もあるように感じられた。

 また、今回の震災においても商店や1階部分が駐車場など、開口部が広く壁量不足や壁位置の偏りのある建物は木造、S造、鉄筋を問わず被害にあった建物があった。

 この地域では昭和40年に新潟地震を罹災しており、それ以降の建物では土壁も少なく、構造的にも筋違があり、46年の基準法改正以降は布基礎になっており倒れた家屋と倒れなかった家屋の分岐点とも考えられた、さらに昭和56年の新耐震基準以降の建物とみられる物件については比較的被害が軽微であり、平成7年及び平成12年の基準法改正以降の建物とみられる物件についてはほぼ外観的に被害が見受けられなかった。

〖屋根の被害について〗
 柏崎市、刈羽村地域においては一般住宅の屋根の和瓦比率が90%以上と多く、その多くが能登瓦の49判で銅線緊結であり、三州産の53判引っ掛け工法のものはここ20年以降の建物には多くなり新築に近い物件はほぼ53判でありまれに平板瓦も見られた。
 したがって屋根の被害物件については案内していただいたコイケカワラさんでも現在修理依頼のあった200件ほどの内、7~8割が49判での屋根であるとのことだった。

 被害の部位についてはやはり今回も棟被害が多く、平部においては銅線緊結の切れや緩みによるはがれや落下のほか、ズレなどの被害が多く見られた。また今回、最近の葺き替え物件において、防災瓦で全数釘打ち施工した屋根でゆれによる野地の変形に硬い留めつけと防災構造の瓦がついていけず、桟瓦の差し込み部分のカケや桟山のワレが多く発生した物件もあった。

 棟部については、被災地域では昭和40年の新潟地震以降、棟のモルタル工法が一般的で大面で中のしを割って使いその上に更に中のしを割って積んだり、厚のしを割って積んだりする工法と、大面で中のしを割らずに置き、さらにその上に厚のしを割らずにモルタルでサンドイッチ状に棒積する工法があり、後者の工法ではモルタル面と瓦の接着面のはがれによる脱落や薄いモルタルが芯の役目を果たさず、折れや破壊により棟全体の脱落や破壊を招いたものも多かった。前者の工法においてはある閾値を越えない部分においては大面が広く取ってある為安定しており被害がほとんど見受けられないものも多くあったが、平成15年の宮城県北部地震の場合と同じように縦揺れのとき、特に頂上部の桟瓦が半端物で緊結されず屋根土や木で高さ調節してあるだけのものに関しては、縦揺れと同時に半端な桟瓦をつけたまま野地から離れ棟の形を残したままずり落ちたり、下屋に落下したりして被害を大きくしたものもあった。

 また横揺れが大きかった為、棟芯となったモルタルが、せん断破壊され、塊やばらばらになって棟に残ったり、落下したりしているものが特に寄棟に多くみられた。モルタルの棟はそれ自身一体化されているため、ある段階までは強く、破壊や落下しにくい反面、能登沖地震の棟被害のように棟土がばらばらになって銅線緊結したのし瓦が桟瓦を割ることなく屋根面にばらけたり、ずれたりしていた為、それを使って補修したり再度棟積をできたりするのと違って、いったん破壊されると残ったのし瓦を使った補修は不可能であり、さらに桟瓦や下屋を破壊することも多く、大きく重く撤去にも苦労する点が依然問題としてあることが再認識された。

 しかし、今回モルタル工法においてもガイドライン工法に準拠した棟木に棟芯の鉄筋を打ち込み、それに横筋を通しさらにのしを緊結したものは棟被害が無く、雪止アングルを吊るために棟に鉄筋を打ち込んだものや、強力棟を使った棟においては被害が軽微であったことを考えると、土でもナンバンでもモルタルでも他の素材でも棟部において落下させない為には棟木(軽ければ野地)に支持力を担保させる必要が最低限あることが再確認された。今後このことを踏まえた簡便な工法の開発なくしては和形屋根の棟積は否定されていくと思われる。

 

〖今回も瓦屋根犯人説が多く言われた背景〗
 今回の地震被害においてもマスコミ等で家屋の倒壊原因は屋根瓦の重みであると断定的に間違った意見が流されたのは、先に述べたようにこの地域の家屋がほぼ瓦屋根であった為おのずと倒壊家屋の全てが瓦屋根であったことと、(逆に倒壊していない家屋のほとんども瓦屋根である) 家屋がつぶれる状態より壁が横倒しになってそこに瓦屋根が瓦を載せたままのしかかって道路をふさいでいる様子が市街地でよく見られたためまるで屋根が建物を押しつぶしているような印象を与えやすかったことによると考えられる。

 確かに倒壊した家屋の倒れた原因の一つに脆弱な構造に重い土壁と瓦が乗っていた為、壁や軸組が耐えられなかったことも否定できない部分もある。

 しかしこのことは、上部や構造体自身が重い壁量不足の鉄骨造やRC造の陸屋根建物にも共通して起こっている構造的な問題であって瓦が重いから建物が倒れるとはまったく言えないはずである。

 前回の中越地震の場合では、家屋倒壊の原因として地盤説が大きく捉えられたが今回は住宅密集市街地で同地盤での被害差がある中で、手っ取り早く犯人探しをしなければならない点が見た目にも説明もわかりやすい瓦となったのであろう。

 業界としては現在の新築物件において瓦はまったく安心だとのアピールと既存の古い物件(倒れれば又瓦のせいになる恐れがある)での耐震補強に対する何らかの推進協力活動も必要であろう。

 しかし、地震といい台風といい外部から見える被害状況の中で瓦屋根は一番目立ち、そして圧倒的に被害棟数が多いことも事実であることを真摯に受け止めて、今後のガイドライン工法の普及啓蒙活動と、より簡単で安価な棟積みを含む瓦屋根の工法の開発に業界全体が取り組まなければ災害のたびに和形のみではなく瓦全体の評判は落ち採用されなくなってしまうことも考えなくてはいけないと思う。

 (なお、写真については私の報告書と重複する物がかなりあり、割愛させていただきました。)


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sei-kita

瓦屋さんの報告、興味をもって読んでいます。
分量が多いのでまだ全部は見ていませんが。
古い木造家屋の被害が多かったことは事実。
屋根が瓦で重かったからとするのは正確では無いなと思っていました。
木造柱のシロアリなどによる腐食もきちっと把握しておきたいですね。
by sei-kita (2007-08-24 09:26) 

toyo

大変興味深く読ませていただきました。
大体、直感的に私が思っていたことと同じ内容で我が意を強くしました。
このようにキチッと理論づけて説明していただくと、お客様にも説明しやすいので、とても助かります。3年前の地震以降「瓦を下ろしてもっと軽い素材に変えようと思うけど、どう思いますか?」とよく聞かれました。私はそれは早計だと思いましたが、お客様の恐怖心を思うと反論もできず困っていました。しかし、理論的な説明が、たいせい様のこの記事でやっとできそうです。ご苦労様でした。繰り返し読ませていただいて参考にさせていただこうと思っています。前からこのような説明がとても欲しかったのでほんとに助かります。ありがとうございました。
by toyo (2007-08-24 09:41) 

たいせい

 sei-kita さん、構造設計の専門家に読んでいたいて本当に恥ずかしい限りです。(私は構造については、門前の小僧ですので)
 仰るように、シロアリや構造材の腐朽が実際の倒壊にどれくらいつながっているのか?私も非常に興味を持っています。
 ただし私の視点では、倒壊家屋の幾つかの中からそれらしい部材を発見したという程度までしか報告出来ず、実際にそこまで見られない場合がほとんどで出来れば倒壊家屋の部材を一軒一軒点検して統計処理に耐えうる検討を加えるべきではないのか?と言う思いを強く持ちました。
(建築学会や国・行政などが、地震被害の詳細を分析するプロジェクトなどを組んで、実施して欲しいです。)
 その意味で、今回建築学会の関連HPの中にあった「長谷工 古賀一八氏の報告書」が、築年数と被害状況を一覧表にしてあるこれまで無かった報告書で、今回非常に参考になりましたし、新しい取り組みとして非常に興味深く感じられました。

 先に書かせていただいたように、私は構造については専門外の門前の小僧であり、自分自身の勉強にも成りますのでもしおかしな点などがありましたら、是非ご指摘いただけるとありがたく思います。
 また、今後ともよろしくお願いいたします。

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-08-24 10:27) 

たいせい

 toyoさん、被災地である柏崎で実際にお仕事をされているtoyoさんにそう言っていただけて安堵いたしました。
 阪神大震災の倒壊家屋でも、シロアリの被害による構造材の劣化が倒壊につながった事例をいくつも聞いており、今回の地震でも数棟ではありましたがシロアリ被害の後と思われる部材を倒壊家屋の中から発見したときには、「やはりここでも...。」という感じを強く持ちました。
(発見できたのは表面にそんな部材が露出していた場合だけで、露出していない部分での被害事例はかなりあるように思いましたが、toyoさんの見解はいかがでしょうか?)

 倒壊家屋と瓦屋根の関連性はないと言うのが、一応この記事での私なりの結論なのですが、こうして記事を改めてみると「瓦屋根の被災写真」が非常に多く、憂鬱な気持ちになりました。
 また、現地屋根工事業者の方にご案内いただいたわけですが、「この現場で人が亡くなった」などの話を伺い、被災現場をかたずけている被災者の方達の姿を見ると、本当に辛い調査でもありました。

 一日も早い復旧、そして復興を、心よりお祈りさせていただきます!

 nice! &コメント、ありがとうございました。
by たいせい (2007-08-24 13:05) 

アキラ

凄いレポートで敬服の至りです。
家づくり学院なるものをボランティアで開講しておりますが、よろしければこのレポートをを活用させていただけたら、生きた教材として喜ばれると思うのですが・・・
屋根だけではなく、白蟻、手抜き、建築の時期に迄踏み込んだ実際にその場を見て書かれた生きたレポートは、なかなか入手できませんので・・・
by アキラ (2007-08-24 16:26) 

おばりん

力作のレポート、お疲れ様です。

門外漢の私ですが、先ほどNHKニュースで1200年前の鴟尾(しび)を
再生のため現代の技術で制作したと聞き嬉しく思いました。
現代の匠も、1200年前にこれが作られたことには驚嘆してましたね。
by おばりん (2007-08-24 21:46) 

にっしゃん

御久しぶりです。
瓦屋さんも暑そうですね!

私も震災発生後、「炊き出し」に参加して来ました。
http://www.seinensya.org/

私の地元での阪神淡路大震災の時もそうでしたが、大成先輩の仰るとおり、建物崩壊は建築物そのものの強度よりも、「地盤強度」の方が大きく関与しています。
私の生業は「道路」や「駐車場」を造ることですが、地盤を触るシビルエンジニアとしては、先の耐震強度偽装事件の時の議論には苦笑を禁じえませんでした。将に「砂上の楼閣」ですね。
いかに強度の高い建物を建てたとしても、地盤が崩れれば倒れます。
弊社では、基礎工事前に地盤改良工事を施工することをお勧めしています。


季節柄、御自愛の程。
御武運を。
by にっしゃん (2007-08-25 09:52) 

たいせい

 アキラさん、最高の褒め言葉に何とコメントを返させていただければ良いのかよく解りません。
 書きたい記事は他にも沢山あったのですが、これを書くまではと思い、お盆休みなども写真の整理をしていたのですが、この言葉で報われました。

 アキラさんのやっていらっしゃる「家づくり学院」、私も非常に興味を持っています。
 もしこの拙い報告書が、そんな場で使っていただけるものでしたら、私の方からお願いしてでも是非使っていただきたいと思います。(前に書いた「夏涼しく冬温かい瓦屋根」なども使っていただいても構いません:野地板の結露の記事がまだ宿題でのこってますね....。)
 必要とあれば、ここに使った写真は解像度の高い物も保管してありますし、事例写真などこの数倍のストックがありますので、それらをお渡しすることも可能です。

 一人でも多くの方々に、瓦のこと、建築のことをもっと知っていただきたい....。

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-08-25 11:08) 

たいせい

 一真さん、nice!ありがとうございました。
 BLOGにも依らせていただきましたが、とても興味深い内容でちょくちょくお邪魔させていただきたいと思いました。
by たいせい (2007-08-25 11:14) 

たいせい

 おばりんさん、私の地元である愛知県高浜市は「鬼師」と呼ばれる鬼瓦専門の職人がいます。
 鬼師の方に言わせると、昔の職人さんの仕事の中には今では決して作ることの出来ないものが沢山あるそうです。
 職人の手仕事の世界では、今よりも左官に作られていた昔の方が技術が高かったのかもしれません?
(金属加工などの世界でもこのままでは、数百年後に「向かいはこんな職人がいたのだ!」と、皆が驚く世界になってしまうのかもしれません)

 コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-08-25 11:26) 

たいせい

 STEALTHさん、ぺんたごんさん、専門分野の解りにくい話にnice! ありがとうございました!
 コメントしづらい内容だと思われたかとは思いますが、そう堅苦しいBLOGではないつもりですので、あまり気にせずコメントいただければと思います。

 今後ともよろしくお願いいたします!
 
by たいせい (2007-08-25 11:33) 

たいせい

 にっしゃんさん、仰るように瓦屋はなかなか大変です。
 地震が起こる度に、「瓦が重いから家が倒壊した」などの事実を歪曲したマスコミの総攻撃にあい、敵軍である「板金工業会」からは「屋根を選ぶことは、命を守ること」などとのCMによる潤沢な資金を使った「物量作戦」に苦戦が続いています。
(私のマスコミ嫌いの源泉は、実はこちらの方が切っ掛けです)
 資源の乏しい我が軍は、せめて橋頭堡を築こうとそれぞれの局面で戦っていますが、長く続く苦境に兵士は飢え乾き、このままでは玉砕してしまいそうです。

 コメントありがとうございました!

PS.
 十数年前のサラリーマン時代、アスファルトフィニッシャーの制御の仕事に多少関わったことがありました。
 BLOGを拝見させていただき、その頃のことを少し思い出しました。
by たいせい (2007-08-25 11:53) 

こんばんは。
いつもながらの内容の濃いレポート、大変興味深く拝見させていただきました!

マスコミの偏向には、ホトホト困ったものです。手っ取り早い犯人を見つけて大げさに書くだけではない、気骨のあるジャーナリストは居ないものでしょうか?たいせいさんのレポートを取り上げて記事にでもして欲しいものです。

建物の倒壊の原因は、地盤・不適切な設計・手抜き工事のいずれかが原因で、決して瓦の重みではないですから。
by (2007-08-26 23:30) 

たいせい

 まーきんさん、瓦と地震の関係についてのマスコミの対応については、「偏向」というよりも「無知」が原因ではないか?と思っています。(信じています?、信じたい??)
 情報の取捨選択自体が、無意識であろうとも多少メッセージ性を持ってくるのはやむを得ない部分もあると思いますが、情報の取捨選択をある意図に基づき恣意的に行ったり、所詮素人に過ぎないキャスターやコメンテーターが無責任にコメントを垂れ流すのだけは勘弁していただきたいものだと常々思っていました。
 自らの持っている影響力の大きさを自覚すれば、自然とそんな対応になるはずだと思うのですが、TVや新聞を見ていてマスコミの「思い上がりではないか?」と思える瞬間が度々あります。

 和瓦は日本の気候風土に合った、百年単位のフィールドテストに残った素晴らしい屋根材だと私は思っていますが、マスコミにもっと良い面を取り上げていただいたい....。

(おまけ)
 民放の場合、スポンサーに不利な報道は行わないというのは、実感として持っています。
 薄型スレート(カラーベスト・コロニアル)にアスベストが使われていて健康被害の元だとの指摘を、私の業界では10年以上前からマスコミ向けにもしてきました。
 しかし実際に取り上げられたのは、メーカーが対策を済ませて製品に使わなくなってからでした。(こんな対応では、マスコミの存在意義自体ほとんど無意味です)

 マスコミは決して弱者の味方ではありません!
 瓦業界も、もっと力を持たねば....。

 nice&コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-08-27 09:09) 

アキラ

たいせいさん
ありがとうございます。
不定期ですが、今年は5月~6月に茅ヶ崎市内で開講しました。
今度は耐震施工を中心に、リフォーム塾を開講の予定です。
「メッセージを送る」にコメント入れさせて戴きました。
どうぞよろしくお願い致します。
by アキラ (2007-08-27 10:55) 

たいせい

 アキラさん、メッセージ読ませていただきました。
 組合などにある写真をもう少し集めて、CDを今週中くらいには発送したいと思っています。

 こちらこそ、拙い報告書をご利用いただけて、ありがとうございます!
by たいせい (2007-08-27 14:43) 

plusgate

大変興味深く読ませていただきました。
耐震診断員としての活動中、瓦に関する質問は大変多いため、
過去記事も含めて、いつも参考にさせていただいています。
瓦が直接の原因ではないということを再度、認識しています。
困ったときは、同じ地方の縁でお願いすることがあるかもしれません。
その時はよろしくお願いいたします。
by plusgate (2007-08-27 19:15) 

こう

沖積層の地盤では、ある程度の地盤改良(置換えや杭など)をして、ベタ基礎などの強固な基礎にしないと、どんな建物でも崩壊の危険性が高いと思います。

〖倒壊した家屋の特徴〗において、筋交いの無い建物であったといった記述がありますが、旧工法で無いのは当たり前のことで、必要が無いからついていないだけと考えています。
 あくまでも予測ですが、倒壊の原因は地盤や基礎、それから構造体の腐食等だと思います。

 よく見られる筋交いは、ある程度の揺れまでは効果があるが、それを超えると折れてしまい、一気に倒壊するそうです。まだまだ、検討の余地があるようなので、あれば安心できるとは限らないそうです。

 また、家の構造についてはわかりませんが、斜面の地震時の挙動について、資料を読んで得た知見がありますので、お伝えします。
 斜面のヘリの部分は横から見ると尖っていますが、そこに応力が集中することが明らかにされていました。

 屋根の棟や端についても同じことが言えるかもしれません。
by こう (2007-08-29 07:05) 

たいせい

 plusgateさん、ここの所の「地震報告書」、実は瓦屋根の被災事例を写真で紹介することでもあり、瓦のマイナスイメージをますます大きくしてしまうのではないかとハラハラしていましたが、「瓦が直接の原因ではないということを再度、認識」とのお言葉に、胸をなで下ろしています。

 いずれ書きたいと思っていますが、私達の住む東海地方の瓦屋根の施工は「土葺き」(野地と瓦の間に土が入っています)で、阪神大震災での被災住宅の大半も「土葺き」でした。
 最近の工法ではほとんどの民家で「土葺き」が使われなくなり、葺き土を使わず野地板の上に桟木を打って瓦を載せて釘で堅結する「から葺き」が主流となり屋根上の重量も約半分になっています。(約100kg/㎡→50kg/㎡:吸湿素材を多量に使った土葺きの方が夏涼しく、あえて土葺きをとの注文も、まだかなりあるそうですが)
 土葺きは地震で揺れた際に、瓦をまず落として構造体への負担を軽くする工法だとも言われていますが、社寺仏閣のような伝統工法であれば構造自体がそれなりの強度を持っていて有効なのですが、民家の場合は初動で瓦が動く前に構造自体が壊れる恐れもあるような気がして、から葺きへの葺き替えなどもそれなりに有効な地震対策のような気もしています。(から葺きにするより軽い屋根材に変わってしまうかもしれませんね?)

 もっとも私個人としては、それ以前に最優先で調べなくてはならないのが「地盤」と「基礎」で、次が「シロアリなどによる構造材の腐朽」や「継ぎ手や筋交いなどの施工不良」ではないのか?、との印象を持っています。

 余談が長くなり失礼いたしました。
 私は瓦業界のことしか知らず、住宅全般という点ではあくまでも「門前の小僧」ですので、どんなお役に立てるのかはよく解りませんが、何かありましたら遠慮無くご一報いただければと思います。

 nice! &コメント、ありがとうございました!

PS.
 耐震相談員として受ける瓦の質問、かなり否定的なものが多いのではないかと「ドキリ♪」としました。
by たいせい (2007-08-29 08:59) 

たいせい

 こうさん、今回の視察で特に思ったのはご指摘の「地盤」と「基礎」、そしてあらかじめ予見すれば守ることが出来る「経年変化」でした。(手抜き工事がないとの前提ですが)
 極論になろうかとは思いますが、住宅はバランスであり、どれだけ構造物の強度を上げようにも地盤や基礎がしっかりしていないと意味を持たず、耐震改修の意義自体にも、今回思いを馳せました。(地盤や基礎に手が入れられないのではあまり意味がないのでは?)
 むしろ、「手抜き工事」の有無や「シロアリなどによる構造材の腐朽」を確認することに主眼を置くべきではないかとも思えた次第です。

 筋交いについて今回感じたのは、金物をあまり使っていない建物について「折れ」と言う形での破損ではなく、「外れ」と言う形での脱落が思いの外多いのではないか?と言った点です。
(倒壊まで言っていない建物で幾つか見つけました。:これが手抜きであるのか?、当時の工法でのやむを得ざる現象なのかは専門外の私にはよく解りません)
 組合の報告書での「倒壊した家屋の特徴-筋交いがなかった」については、倒壊している古い家屋の特徴として書いてあるものだと認識しており、逆に言えば地震の揺れに耐えた建物の中にも、築年数が古く同等の工法であると推測されるものも合ったと言うことを、ここに添え書きさせていただきます。

 傾斜地の造成土地については、3年前の中越地震の視察の際にも感じましたが、「盛り土」と「切り土」を組み合わせて造成した土地はやはり弱いとの印象を今回も持っています。(あくまでも印象です)
 造成地の角の部分は盛り土部分でもあり、その意味でも弱いと言えるように感じます。
 ただそれよりも影響が大きいのは、地盤の素性が違っていることに依る「不等沈下」ではないかと感じています。
(なお、新興住宅地ではあらゆる被害がほとんど出ておらず、屋根・建物・基礎・地盤を問わず、最新の建物について講じられている対策はそれぞれ有効だと感じました。)
 なお、屋根については堅結方法の問題のウエイトが大きく、別の問題だと考えています。

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-08-29 11:10) 

打ち合わせと現場が立て込んでしまい。遅くになって記事読ませていただきました。写真のRCの建物は私も帰り道で見かけました。一緒に行った方々とも車中で唖然としてしまったのです。唖然としてしまった理由はやっぱりRCなのにとショックだった気持ちが大きかったのではと思います。RCやS造を崩壊しないものとして信用しきっているのも確かです。被害の原因は一つではないですから、たいせいさんのように瓦の専門家から見たこのような見解。また他の専門家からの見解が沢山出てくると、今後のために前向きな(決して特定の何かを悪者にするようなものでない)方向性が出てくると思っています。詳細なレポートありがたく勉強させていただきました。
by (2007-08-30 23:00) 

たいせい

 ヒゲボーズさん、阪神大震災で途中階がつぶれたり斜めになったビルなんかを沢山見ていたこともあり(当時は別の業界にいましたが)、私の方はRC造・S造神話はありませんでした。
 ただこの建物は比較的新しく思われ、その点でのショックを感じました。

 この記事に書いた報告は、地震被災地をこれまで幾つか見てきたこともあり、その集大成のようなつもりで書きました。
 屋根部分についてはそれなりに自身はありますが、構造についてなどはこれまで漠然と感じていたことを、あえて問題提起をとの思いもあって文章化しました。
 本来ならば、被災家屋の一つ一つをもっと時間を掛けて調査し、統計的な手法によって明らかにしなくてはならないであろう事にも、あえて踏み込みました。(つっこみどころはいくつもあると自覚しています)

 仰るように、様々な立場で書かれた報告を精査し今後の方向性をハッキリさせることによって、被災地での不幸な方達が一人でも少なくなって欲しいものだと思います。

 こちらこそ、nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-08-31 12:08) 

三介

今晩は。山本さん。凄いレポートですね。

>建物崩壊は建築物そのものの強度よりも、「地盤強度」の方が大きく関与

そうそう、これは確かに、大きいですね。阪神・淡路大地震も、山のすそ野の土砂堆積地が最も悪い地盤で、被害も大きかったですし。俗っぽく言えば、軟弱且つ横滑りで、揺れが大きくなると、少々丈夫でも、耐えきれないってことでしょうね。
ちなみに、許容耐力計算法等[保有耐力計算も含めて]では、地盤の想定、大雑把故に、つまり安全側にとっているって、東京工大の和田先生が、「限界耐力計算」批判[=余裕が減るので危険側の設計になる]の際、仰ってました。
http://blogs.dion.ne.jp/ivanat/archives/3042254.html
by 三介 (2007-10-27 17:36) 

たいせい

 三介さん、建築全般についての専門的な知識に欠ける一介の瓦屋の書いた記事をお褒め下さりありがとうございます。
 阪神大震災についても、業界の報告書や被災物件の写真が沢山あるのですが、現在の目で改めて読み直してみると今回の報告書と同じ結論に到達します。
 地盤の問題と思われる被災物件がやはり多いですし、当時ほとんど表面化してはいませんでしたが、シロアリによる虫害・手抜き建築などの施工の問題による被災が、思いの外多く指摘されていました。

 以上のことから建築基準法がらみで第一にやらなければならないことは、中間検査の確実な実施で、その為に全力を尽くすのが第一に必要なことで、それが確保できれば地震被害についてはかなりの比率で防ぐことが出来、今回の改正はこのまま行くと書類の量と手続きの煩雑さが増えるばかりで「本質(目的」)を見失った施行になってしまいつつあると感じています。

 コメント、ありがとうございました!

PS.
 なお、地盤と建物の関係では、今年大大特の一環の実物大加震実験で軟弱地盤を想定した実物大加震実験がE-ディフェンスで行われており、その詳細報告書の公開を楽しみにしています。

地震で家が壊れる様を見てきました(E-ディフェンス耐震実験、そして瓦屋根)
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-03-08
by たいせい (2007-10-29 13:30) 

三介

今晩は。大成さん。
>2007-03-08
のログも写真が盛り沢山で、分かり易い好いログですね。

>「本質(目的」)を見失った施行になってしまい
ええ、国会(10・24,2つの委員会)でも、かなり国交省は批判受けていました。

>E-ディフェンス耐震実験
確か先月、TVと新聞で、鉄骨の実験見ましたよ。最低基準やと、大地震で崩壊するって言ってましたね。
今、観ましたら。報告概要書もヴィデオも公開してますね。
http://www.bosai.go.jp/hyogo/movie.html
http://www.bosai.go.jp/hyogo/img/dougafile/pdf/20070927.pdf
凄いですね。
by 三介 (2007-10-29 18:44) 

たいせい

 三介 さんのBLOGで読ませていただきましたが、建築基準法の最低基準でも崩壊するとの記事、衝撃を持って受け止めています。

 ただ実際に地震被災地をそれなりに踏んだ一介の瓦屋の感覚としては、
中層・高層の阪神大震災以外では実際の大地震の洗礼をそれほど受けていない建物については、正規の構造計算とそれを実証する振動実験をよりどころにしなければならないと思いますが、
壁量計算で設計された木造軸組在来工法については、幾度もの大地震で有効性について一定の評価が済んでおり、中間検査の確実な実施に主眼を置く改正(運用面のみでも対応できるはず)で十分ではないか?と思っているのですがいかが思われますでしょうか?(少なくとも最優先で取る組むべきなのはこちらの方では?)

 また、木造伝統工法についてはほとんど闇の中で、伝統工法にこだわりを持って新築にも取り組んでいらっしゃる方達も大変な状況に成りつつあると聞いています。
改築日記~セルフリノベーション~気仙大工頑張れ!
http://blog.so-net.ne.jp/syakutorimusi/2007-10-26

 手抜き建築の防止に主眼を置くべき低層建物と、姉歯事件以来強度偽装が問題になっている中・高層建物は、別の建築行政が必要だと思われて成りません。
by たいせい (2007-10-30 11:05) 

三介

今晩は、たいせいさん。
>中間検査の確実な実施に主眼を置く改正(運用面のみでも対応できるはず)で十分ではないか?
ええ、実績のある大工さんが行なう限り、それで問題ないと僕も思います。
そこら辺が崩れかけているンかなって気はしてますけど、過当競争や、プレハブが蔓延ってきたので、どうしても技の継承がスムーズに行かないところも出てきてて。
バブル期に技術者不足で、過剰に増やしたり[僕もその一人ですが]した結果、レベルダウンがあった。
また、自前で、自宅のちょっとした改築できていたりしたお百姓さんら、そういった方々が、出稼ぎで、「出来る」労働者だった時代が過ぎていっているのかな?とも。
>低層・・中・高層・・別の建築行政が必要だ
先日発表されました、9月の住宅着工&確認件数の統計では、
そうなりつつあるようですね。
「建築着工統計調査報告(平成19年9月分)
http://d.hatena.ne.jp/vohowo/20071101/1193902895
構造別着工戸数
木造 -23.2%
鉄骨鉄筋コンクリート造 -72.9%
鉄筋コンクリート造 -69.9%
鉄骨造 -37.8% 」
さすがに、他の産業界から大きく批判され出したので、
国交省も慌てて、省令緩和の方向で動き出しましたし。
ニチアスの件のように、ハウスメーカーへの規制もやや強めてさえもいます。そういう意味で、行き過ぎた規制、特に小規模建築への規制を緩和、
つまり在来木造工法への追い風がやや吹きつつあるのではないですか?

でも根本的に、建築基準法体系は、破綻して[とまで行かないにしても、
一度整理し直すべき時期に来て]いるような気がしてなりません。
今日のログでは強くそう考えさせられて書きました。
余りにも『国の恣意性というか意図』を感じましたので・。
by 三介 (2007-11-02 20:04) 

たいせい

 三介さん、今回の基準法改正後の混乱という意味では4号建物は沈静化しつつあり多少は良い傾向になってきたと思っています。
 ただし、壁量計算の廃止の路線や、本来もっとも注力すべき中間検査の確実な励行が現状のマンパワーで本当に出来るかどうか?(シロートが見ても無意味ですし)と言う点など、根本的な問題に全く手を付けずに絆創膏をぺたぺた貼り重ねているような対応だと、私には思われて成りません。
 根本的な問題は、行政指導の容易な大規模は椅子メーカーの寡占を意図した中低層の建築行政から、こだわり施工を重視した地場の工務店の生きて行く道を示す気があるのか?と言う点だと思っています。

 法制度の再整備が必要だという点では、私も深く同意します。
 コメントありがとうございました!
by たいせい (2007-11-05 10:30) 

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