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ソニーBMG問題にみる商業音楽の未来 [コラム]

 ソニーBMGの音楽CD問題で、悪用するトロイの木馬が登場

 詳しい話は、検索すればいくらでもでてくるのでそちらを参照して欲しい。

 要は、ソニーBMGがコピー防止を銘打った音楽CDの中に「rootkit」という技術を使ったと言うこと。このrootkitはウイルス対策ソフトですら認識できない高度なスパイウェアで、これを踏み台にバックドア的にウイルスを仕込ませたり、あらたなスパイウェアを忍ばせたり出来るというとんでもないものだった。しかも現時点では、通常の方法ではアンインストールすらできないというおまけつきだ。アンインストールにはソニーBMGへ音楽CDの購入場所とアーティスト名、アルバム名、購入店名、Eメールアドレスを伝えなければならない。

 当然、ソニーBMGには多くの批判が寄せられており、当然不買運動は起こるし損害賠償請求も起こるだろう。所属アーティストも直接的に被害を受けるわけで、場合によってはレーベルを移動すると言うことになるかもしれない。一昨日付でCDの回収を行うとしているが、事態は収束に向かうにしてもイメージの低下は免れないだろう。

 この問題をきいて、国内では数年前に起こったCCCDの問題を想起した人も少なくないだろう。このときにもCDプレイヤーが壊れてしまったという話や、PCに必要のないソフトが勝手にインストールされたといった声が上がった。

 こうしたコピー防止CDの本質的な問題は、レコード会社が性悪説でユーザーに不便を強いているということだろう。いや、不便なだけならばまだしも有害とあっては目も当てられない。

 レコード会社の主張は音楽CDが売れなくなった理由が、音楽「ファイル」のコピーにあるといったことが大前提にある。いわゆるP2Pソフトやメッセンジャーの発達、あるいはブロードバンド化による大容量メールの送受信が可能になったことによって、音楽CDのデータは簡単にやりとりできるようになった。こうした「不正」コピーが簡単にできるようになってしまったため、音楽CDはどんどん売れなくなってしまう。だから簡単にコピーができないようにしてしまおうという論法である。

 国内に限って言わせて貰うとこの論法には三つの疑問がある、と私は思う。まず一つは音楽CDの売れ行きが鈍ってきたのは、単に音楽CDの相対的な価値が下がったに過ぎないと言うことである。娯楽の数は年々増えてきている。趣味も多様化した。そうしたなかでシングルで1000円前後、アルバムでは3000円前後もする音楽を限られた月の予算から購入し、しかも限られた時間の中で聴くという需要が伸びるはずがない。音楽CDたのエンタテインメントに比べて魅力的なら購入するし、そうでなければ購入しないだけのことではないか。私はどちらかというと音楽は聴くより作る方がメインだが、欲しいCDがあれば予約してでも購入する。

 もう一つの疑問はファイル交換や音楽データのやりとりが、本当に音楽CDの売上を損ねるのかということである。少なくとも私の知る限り、音楽のデータを受動的にもらう人は仮にファイル交換という技術がなくてもCDを買うことはない例が多いと言うことだ。つまり、こうした層にはコピー防止の技術は全く意味がない。意味が無いどころか、音楽というジャンル自体から遠ざかっていくだけのことである。以前東芝EMIにおけるコピー防止CDに関する記事を読んだとき、音楽を発信する側はむしろ音楽CDを積極的に購入する層だということをきいたことがある。この二つを総合するならば、コピー防止CDは利便性を損なうという要素の方が大きいのではないだろうか。むしろファイル交換によって、知らなかった音楽と出会いそれをきっかけにCDを買うという側面を忘れているのではないか。

 三つ目は音楽がCDである必要があるのかということである。これは以前から言われている音楽配信とCDの関係である。現在99%以上とも言って良いだろうが、音楽CDはコンピューターベースで作られている。いまのCDは、コンピューターでつくった24bit/96kHzというクオリティをCDの規格に合わせるためにわざわざ16bit/44.1kHzにダウンサンプリングして作られている。しかもCDにプレスする際の音質の変化などにも気を使って、いくつもの販売ルートをわざわざ伝わって、高い値段をつけている。これより踏み込むとまたJASRAC批判に行ってしまいそうなのでここで止めておくが、音楽をファイルとして提供すれば、曲を作ったスタジオからでも配信することが可能になる。容量は大きくなるがマスター音源ですら理論上は配信できるし、着うた用に圧縮された音源の配信も可能だ。単にエンコードするだけならばものの数分で可能であるし、販売スペースを気にする必要が無いのでいくつも違ったビットレートで音楽を置くことが出来る。ジャケットだってPDFやFlash、jpeg等で販売するという手だってある。CDをわざわざ買う気にはなれないけれど、100円や200円で一曲単位から買えるのであれば利用してもいいかなという人は多いだろう。限りなく理想に近いのはiTuneであるが、ジャケットは貧弱だし、ビットレートも選べないし、視聴時間も短すぎる。

 今レコード会社に必要なのはコピー防止技術の向上やDRMの普及などではないのではないか。

 レコード会社がすべきは「音楽」に耳を傾けさせること、また音楽をとにかく長い時間聴いて貰うことなのではないだろうか。これをしなければ、音楽は産業として先細っていくばかりではないかと思う。そのうちアーティストはレコード会社に目も向けずに、音楽を自分のウェブサイトで配信・販売するようになってしまうだろう。個人的にはそれもよいとは思うが。


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kumabondesu

ソニーひどいですねー
CCCDも相当ひどかったですけれど こりゃひどすぎる
ラジオでアーティストが苦労してレコーディングしても
最終的にCCCDにズタズタにされるって嘆いてました
いい音聞かせるためより利益優先じゃ 
ユーザーもあきれますよね~
コピーガードつければ売れるんだったら
売れてるCDの上位が全部コピーガードの製品のはずだし
そんなもの無くても魅力的なら売れるんですよね~
中身で勝負して欲しい~っすね~ 
by kumabondesu (2005-11-18 05:49) 

katz

記事では言葉足らずでしたが、ソニーBMGとソニー本体は別会社です。今回はたまたまソニーBMGでしたが、こうした問題は潜在的に多くのレコード会社が抱えているような気もします。魅力的なら売れるというのはおっしゃるとおりだと思います。コピー防止を声高に叫んでいる人は、本当に音楽を好きで聴いている人なのか疑問ですね。
by katz (2005-11-19 00:40) 

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