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なぜ家を建てるのか? [これから建てる人のために]

 不具合箇所の修理も済んで、家作りも一段落したので、ビルダー選定に関して思うところを時々述べて行こうかと思います。

 以前の記事(家にかける予算)でローン破綻の危険性について述べ、家にかける予算額を定めておく必要性を記しました。

 満足できる家を建て、なおかつ金銭的な余裕を失わないためには、自分たちの要望と、住宅業界について知っておくことは重要です。言い換えれば自己分析と情報収集。



 彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず    です。



 己を知る・・・ その一つが既に述べた予算。そしてもう一つが購入の目的です。

 そもそも家を建てる目的は何であるのか。
 10年で資産価値がほぼ0になり、定期的なメンテナンス費用が必要となる一戸建ての購入に、金銭的なメリットは全くないと言って良いでしょう。
 (土地は別物として考え、上屋に話を限定します.短期間で返済が可能な高所得者層や、借り入れが殆ど無い場合も話から除外します.)

 一戸建て住宅はある意味贅沢品です。
 購入する動機は自分の欲求を満たすこと。

 どうすれば自分は満たされるのか。「格好良い家」は欲しい人は、できあがった家の使い勝手や性能がいくら良くても、見かけが平凡であれば満足できないでしょう。
 縦長窓に代表されるように、機能性とデザイン性は相反することが多いです。

 まずは購入動機。

 一般的な購入動機といえば、より快適な生活がしたい、所有欲を満たしたい、両親と一緒に暮らしたい、義父母との別居を確定したい、などでしょうか。これら問題解決型の建築は、目的がはっきりしているので、要望を詰めることはそれほど難しくないでしょう。

 購入動機が、家賃を払うのがもったいない、金利が上昇しそう、など、損得勘定が根底にある場合は、「振り出しに戻れ」です。自分達の年収と職場の安定性、これまで貯金ができていたか、子供達に掛かる費用の増加、家のメンテナンス費用と寿命、ローンの利率などを、将来に亘ってシミュレートして、オーバーローンが何十年も続く危険性と、十分な頭金が用意できる前の建築が金銭面では決して有利ではないことを認識してから購入を検討すべきです。
 「ローンは家賃代わり」と謳っているチラシを見ると、家の寿命について全く考慮されていない場合が多いです。5年早く建てた家は、5年早くダメになります。設備機器や家の性能はどんどん進歩しており、最先端で手が出なかったモノでも5年後には普及価格帯で手に入ります。エネルギー価格の高騰で、次世代省エネルギー基準準拠も数年後には当たり前になるかも知れません。待てば待つほど同じ金額で良い家が建ちます。



 購入動機が整理できれば、それを満たす手段を考えます。
 自分たちはどんな家が欲しいのか。
 自分たちのことでありながら、これは仲々難しい問題です。 最初から、
「RCの家で屋上付き、地下のシアタールームで大音響の映画を楽しみたい」
などと、具体的に決まっている人は余りいないと思いますが、漠然と、「プロバンス風」とか、「お気に入りのインテリア」とか、「木の家・自然素材」とか、「実用性重視」とかの要望はあると思います。
 また、世間体を気にするのかというのもあります。ある意味Vanityの範疇なのかもしれませんが、周りが立派な家ばかりなので、同格以上の家でなくては恥ずかしいとか、友達や近所の人に自分の家を自慢したいという気持ちが強いかどうかも、家づくりの方向性に大きく影響するでしょう。

 いずれにせよ、家の大きさ、構造、耐久性、メンテナンス性、設備機器、気密・断熱、使用材料、防犯性、アフターサービス、ブランド、インテリア、デザインなどについて、優先順位を整理します。



 最初は漠然としたイメージしかなかったけれど、契約後、打合せを重ねたり、色々調べていくうちに、自分の求める家が見えてきた。
 こういう場合も多いと思います。

 でもこれでは遅いのです。

 なぜならもうその時点では、H.M.が用意したメニューの中からしか選ぶことしかできなくなっているからです。
 契約後の追加事項はH.M.の言い値であり、本当に驚くほど高い。欲しかったモノ、実現したかったコトを次々諦め、結局は標準仕様に毛が生えた程度の家になり、後悔が残る。

 これではちょっと悲しいです。

 でも私から見れば、ローコスト系は別として、H.M.の企画商品の標準仕様ってかなり良いモノを使っており、普通に暮らす分にはじゅ~ぶんだと思うのです。契約後により良いモノを見せられてしまうと、当初は欲しいと思っていなくても、ついつい心が傾いてしまう気持ちは分かります。しかし、オプション料金として予め予算を枠取りしてあるのなら別ですが、大抵は契約時の金額でいっぱいいっぱいの筈です。くれぐれも、H.M.の戦略に載せられないように。



 あるいは妥協せず、予算を大幅にオーバーしてローン増額。

 それなら最初の予算額って一体何?

 予算オーバーと言っても、相場を知らないことにより当初の予算枠が小さすぎた(余裕を持ちすぎた)ということもあるでしょうが、目の前にニンジンがぶら下がっていない(家の形が見えていない)状態の方が、冷静に現在及び将来の家計をシミュレートできると思います。家づくりを進めていくと、どうしても金銭感覚が麻痺してしまいますから。
 当初の予算額を大きくオーバーするということは、やはり生活のどこかにしわ寄せが出てくる可能性があります。

 自分たちの要望は、契約する前に明確にしておく。

 これが原則だと思います。

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ぺんたごん

なぜ家を建てるのか・・・
私の場合は全く「建てたくない」気持ちでしたが
やはり世間一般の「家賃はもったいない」という呪いの(笑)言葉と
周囲の熱意によって、ローンを背負わされてしまいました。

kappaさんの言われる通り、メンテナンスのことは考えず
どんな家にしたいかはメーカー選びの時に初めて考え、
いくらになるかは契約直前に知り、具体的に明細額は契約後にわかり
金額的に見栄えの良い仕様は「あきらめ、あきらめ、また、あきらめ」の連続でした。

ウチの場合はあまり自分たちの予算から逸脱しませんでしたが(努力!)
やっぱり一戸建ては『ぜいたく品』デスネ。

賃貸でも充分!だとは思いますが、退去時に修理代などが発生し、
よっぽど神経質に住まわない限り敷金が戻ってくることは無く、
「嫌になったから」といって引っ越すにもまたお金がかかる・・・。

私にとって、同居、田舎で不便、債務者になる、というのが
デメリットでしたが、子どもが喜んで2階建て(あこがれらしい)の家に
住んでいるのと、自分の実家に至近距離になれたのはメリットでした。
by ぺんたごん (2008-06-21 13:59) 

kappa

ぺんたごんさん、

家を建てるときって、何だか熱に浮かされているみたいに、突っ走ってしまいますが、「建てたくない」という気持ちがどこかにあることで、冷静に事が運べたのではないでしょうか。当初予算から逸脱しなかったというのは素晴らしいです。(でも同居は大変ですね。心中お察し致します)

ウチなんか諦めるというより最初から高望みせず、「ここまでの物で十分」という線を引いていたので、グレードの高い物を見ても、余り心を動かされることはありませんでした。

nice!ありがとうございました。
 
by kappa (2008-06-21 23:20) 

たいせい

 HMで見積もりをとってローンの手当をしてからの打ち合わせがくせ者で、設備機器や内装を変更したあげく予算不足が起こり屋根の仕様を粘土瓦から新生屋根材へ変更と言う事例が多く手を焼いています。
 もっともそこで価格なりの価値が屋根材にあるという周知努力を怠ってきた私たちの業界の責任でもあるのですが、全くどうにもなりません。

 家を建てる際のお金の話は仰るとおりだと思います。
 賃貸物件は固定資産税もメンテ費用も大家持ちですが、事故種つうと言うことになるとそれらも含めて計算せねばならないのが忘れられている場合が多いと感じます。
by たいせい (2008-06-23 13:22) 

kappa

たいせいさん、

少なくとも大手H.M.は瓦、スレート、ガルバの耐久性について、正しい情報を施主に伝えるべきだと思うのですが、屋根材を軽くして本体設計で楽をしたいのでしょうね。ウチの近所では、注文住宅でも建売でも、殆どのお宅が屋根材に瓦を使っていますが・・・

週末に大量に入ってくるチラシには、家を建てれば、ランニングコスト無しに永遠に住めるような印象を与えるものがあり、「ちょっと違うんじゃないの」と言いたくなってしまいます。

nice!ありがとうございました。

by kappa (2008-06-23 21:36) 

トーゴ

10年の間に中古住宅を購入し、さらにソレを建て替えてしまったトーゴです(笑)。

家は贅沢品デスよね。中古を買った時点でそう思いました。

そういえば、新居の建築は自動車の選択基準にも似てる気がします。コレも趣味や嗜好で千差万別ですモンね。メンテも維持もお金かかるし。

かっぱさんの言うとおり、住宅建築は身の程を考えた「ホドホド」と、資金面の「計画的に」ということがキモだと思います。

ところで私の経験ですが「一生に一度だから」と高い設備にするのは、よくある思考の流れですが、要注意ですよね。慎重にっ!!(私は満足しちゃってますが・・)




by トーゴ (2008-06-23 22:12) 

tsk

kappaさんのいうとおりだと思います。

家を作るということは、毎日、「住む」ので何をしたいか?
が問われます。

最大のハードルは、お金ですから、一生涯、自分がやりたいことを含めて(あきらめることもあるかも)、余裕を持って生きることができる内容がわかることが、重要です。
全体の資金は、上記を超えてはリスクが大きすぎます。

さらに、契約前に、家がすべてで、いくらかかるのか、諸経費、メンテナンスを含んで知っておくことが重要です。

この2つ、言葉で書くとそれほど長くないのですが、相当難しいです。
事前にシミュレーションできていれば、ずいぶんと気が楽なはずなのですが、参考になるものはなぜか少ないですし(どうにかしてほしい)、経験値もたりません。

その上で、タイミングも相性もあり、満足する家は大変難しいと思います。
そして、相当、自分自身のパワー(気力、体力)も使います。

tsk個人としては、経験から、日本の建築(山、職人)がおかれている現状も理解してほしいです。もう少し、日本を見てみませんか?本来は文化がそこにあるのです。

家を作った先にあるもの、デメリット以上にメリットがあります。
これから、私も発信していきます。(サボり中ですが)

すみません、ながながとコメントしてしまいました。


by tsk (2008-06-24 00:11) 

kappa

トーゴさん、

 Beハウスって、拘りの家を低価格で建てたいと思う人たちがたどり着くビルダーだと思うので、そういう人にとっては、価格の割に満足度が高いのかなぁと思っています。逆に、至れり尽くせりのサービスを望む人から見れば不満もあるのでしょうね。
 「ホドホド」、「計画的に」、 ・・・ 一度ローンを完済された方の言葉には重みがあります。ビルダーや銀行は助言してくれませんし、自分の身は自分で守るしかないですよね。

by kappa (2008-06-24 20:38) 

kappa

tskさん、

 やりたいことと予算の兼ね合いを真剣に考えれば、ビルダーは簡単には決まらないですよね。おっしゃるとおり、相当なパワーが必要となると思います。モデルハウスがあるH.M.を何軒か廻って営業と話しただけ、なんてお手軽コースでは、予算内で最大限のことを実現することは不可能でしょう。

 実のところ、私は自分の家を建てることに精一杯で、建築・造林業界のあり方には余り目が向いていませんでした。ただ、花粉症で苦しむ人たちが身近にたくさんいるので、杉を植え続けることについては、どちらかというと乗り気ではないのです。多額の補助金を投入しなければ産業として成り立たない現状をどうするか。根っこは食料自給率の問題と同じだと思います。難しい・・・

 記事の更新、楽しみにしております。nice!ありがとうございました。

by kappa (2008-06-24 20:40) 

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