山本周五郎「失蝶記」と「TRUTH」 [舞台全般]
（キャラメルボックス「TRUTH」のネタバレを含みますので、ご注意ください）
「日日平安（にちにちへいあん）」に「失蝶記」は収められている
紺野かず子さま。
この手記はあなたに読んでもらうために書きます。
これが山本周五郎さんの短編小説「失蝶記」書き出しだ。
演劇集団キャラメルボックス「TRUTH」の基になっているという、
この小説を今日読んだ。
キャラメルを観たのも初めてなら、
山本周五郎さんの小説を読むのも初めてである。
「TRUTH」がキャラメルでは珍しい悲劇ものなら、
「失蝶記」は山本さんの手法にしては珍しい語り口調の小説だそうだで、
谷川主計（「TRUTH」での弦次郎役）の手記を中心に書かれている。
短い小説で時間的にはすぐ読めてしまうが、その内容はかなり奥深い。
「失蝶記」のラストは小説だからこそ成り立つものであり、
「TRUTH」のラストとは違っている。ここでは敢えて書かないが、
興味のある方は読まれるといいと思う。
どちらにも流れているのは「罪を憎んで人を憎まず」ということだと思う。
「TRUTH」では「失蝶記」と違い、裏切り者である鏡吾の生い立ちや
人物設定が詳しく描かれている。悲劇の起こる前の仲間達と過ごす時間の中で、
鏡吾は深い闇を抱えながらも弦次郎達と心から笑い合う時もあったに違いなく、
仲間と信じてくれている人達を裏切ることへの迷いや葛藤が何もなかったとは思えない。
だが、鏡吾にとって父親の無念は絶対に忘れてはいけないことであり、
迷いが生じれば生じるほど、より一層、負の方向に突き進んでいったのかもしれない。
時代背景もあるだろうが、新しく生き直すということが鏡吾にはできなかった。
そして、仲間の誰一人として、鏡吾の闇に気づくことはなかった・・・
「TRUTH」のラストは少し強引かもしれないが、
でも、英之介の最後の一言には思わず涙がこみあげてきた。
死んでしまってから弦次郎の背後に現れる英之介は、
亡霊というより弦次郎の守り神のように私には思える。
そして、英之介の最後の言葉は弦次郎だけでなく、
鏡吾や他の仲間にも向かって言ったものではなかったのだろうか。
そんな風に今は考えています。
最後にほっと一息つける温かい気持ちで終わってくれる、
そんなキャラメルボックスが好きです。
そして、山本周五郎さにも人間の温かみを感じました。
別の作品も読んでみようと思います。
さて、最後に「TRUTH」の役者さん達についてちょっと書かせて頂きますね。
弦次郎： 岡田達也
初めて拝見しましたが、かなり好きな役者さん。弦次郎役がとても似合ってました。
カテコのボケ具合も可愛いかった。今度は哀しい役ではなく、ほのぼのした役が見たいな。
鏡吾： 上川隆也
上川さんは、ほんと、観る度にいい意味で私の今までのイメージを裏切ってくれます。
TVで観るより生の舞台の方が断然カッコいい！殺陣も決まってましたね。
英之介： 大内厚
ラストの一言、ぐっときました。殺されちゃうけど、いい役でした。
帆平： 川原和久
劇場に行ってパンフ見るまで知らなかった。大好きなドラマ「相棒」の伊丹さんじゃないですか！
我が家では別名「さいぞうさん」。(^-^) ← 新感線「アオドクロ」での役名、カッコよかったの～♪
とーっても嬉しかったです。しかも、面白かった。また是非お会いしたいわ。
ふじ： 岡田さつき
おもろい！楽しい！！小技の効いた笑いは吉本でもいけます。 ← 注： 褒めてるんだよ～
彼女はダーリンの笑いのツボでもあったみたい。我が家のお気に入りです。
美緒： 岡内美喜子
弦次郎を密かに慕っている様子が愛らしかった。
ラストで耳の聞こえない弦次郎の側に付き添い、周囲の会話を書いてあげている間、
ずっと涙をこらえている様子が印象的。カテコも楽しかったわ。
長くなりましたが、ようやくこれで終わりです。
また来週観たら書くかもしれませんが。(^^;)
読んでくださった皆さま、ありがとうございました。
明日は劇団☆新感線「荒神」大阪初日です。楽しみ！
トラックバックさせていただきました。
「TRUTH」のこと、「失蝶記」のこと大変興味深く読ませていただきました。
今回の作品は悲劇でしたがいつもはハッピーエンドな作品が多いんですよ。
是非他の作品も観てください。
by なつ (2005-04-11 20:35)
なつさん、はじめまして。いらっしゃいませ！
トラックバックありがとうございました。
私もようやく完成した神戸公演の方にトラックバックさせて頂きました。
初キャラメルでしたが、堪能いたしました。
他の作品も是非観たいと思っています。(^^)
またよければ遊びにきてくださいね～。
by kanon (2005-04-12 00:55)
こんにちは。
今「舞台」カテゴリーを順に見ていて、本当はコメントをあちこち残したいのですが（笑）「ＴＲＵＴＨ」の原作のお話しなのでここへ。
私は初演をビデオで再演を舞台で見ましたが、いいお芝居でした＾＾私は実は鏡吾さんがどうしても許せなくて・・舞台の中で彼の生い立ちや背景が描かれないので私から見ると信頼を裏切った苛い奴という印象なんです＾＾；でも、↑の記事を読んで確かに彼も彼なりの葛藤や悩みはあってそれを友人たちも気づけなかった。悲劇ではあるけれど、「英之助」を通じて初めて本当の心の内が理解というかわかったんだなと思うと悲しさと同時に希望のように感じました。もし、また再演があるときはもう一度見たい舞台です！
ちなみに、初演の初音役さつきさんはすごくいいですよ＾＾
川原さんは「ヒトミ」でもお姿を拝見し、これで生二度目！「相棒」を私も観ていたのですごくうれしかったです☆
そして、私は英之助さんが好きです（笑）
by (2005-07-14 13:26)
一般市民さん、こんにちは。
バタバタしていて、コメントが遅くなって、すみません。
＞今「舞台」カテゴリーを順に見ていて、本当はコメントをあちこち 残したいのですが（笑）
いつでもどうぞ～。
以前の記事にもコメントしてくださると凄く嬉しいです。（＾０＾）
「ＴＲＵＴＨ」再演は今年のを見られたのてしょうか？
鏡吾さんを許せないお気持ちも凄くよくわかります。
そして、私の感想で希望を感じてくださって、とても嬉しいです。
「ＴＲＵＴＨ」もを観た後も、「失蝶記」も読んだ後も、
私には温かなものが残りましたから・・・
再演があれば、私ももう一度観てみたい作品です。
さつきさん、いいですよねえ。私も、この後、ＤＶＤで観ました。
「相棒 」も観られてるんですね。きゃー、嬉しい！
私も英之助さん、大好きですよ～。
by kanon (2005-07-16 10:44)
「ＴＲＵＴＨ」再演もちろん、今年です＾＾いや～まさか生で見れるとは思っていなかったのでとても嬉しかったですね♪
初演・再演も最後の英之助さんの許す言葉がなければ希望はない気がしますよね～・・英之助さんって本当すごいわ（笑）
「相棒」ばっちり見てますよ＾＾舞台系のキャストですよね～！見ていて楽しいですよね☆
by (2005-07-17 10:11)
一般市民さん、ご返信ありがとう～。
わーい！「相棒」ファン発見！！嬉しいです～♪
＞初演・再演も最後の英之助さんの許す言葉がなければ希望はない気がしますよね～・・
うんうん、そうですね。
そして、英之助役の大内さんが凄くいい味出してました！
by kanon (2005-07-17 23:23)