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宝塚歌劇宙組 『NEVER SLEEP』 [宝塚歌劇]


後ろ抱っこ、いいねえ…(ファン馬鹿まるだしコメント)

2007年4月22日(日) 日本青年館大ホール 15:00開演

【作・演出】 大野拓史

【出 演】 
(宙組)蘭寿とむ、美羽あさひ、七帆ひかる、花影アリス、ほか
(専科)萬あきら、一樹千尋、五峰亜季

カンゲキの世界に数多(あまた)いるとろりんのツバメたち(爆)。その筆頭が、宝塚宙組の2番手男役スターの蘭寿とむ(愛称:らんとむ)です。その蘭寿が主演するバウ作品(※)が、久々に東上しました。

彼女の主演作品が東京公演を行うのは、初めての主演作『月の燈影(ほかげ)』以来、5年ぶりのこと。ちなみにこの時は、現・雪組の2番手、彩吹真央さんとの花組でのダブル主演でした。思い起こせば、私が蘭寿にハマッたのがこの『月燈』でした…。もう5年前かぁ、懐かしいなぁ…。

※バウ作品…宝塚大劇場と併設されている小劇場、バウホール(収容人数500名)で上演される作品のこと。新人公演を卒業した入団8年目以降の若手~中堅スターの主演作品のや下級生のワークショップなどの上演に使用される。若手スターの人気と実力、歌劇団からの期待度をはかるバロメーターの役割もある。

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【物 語】

1928年のニューヨーク。世界でもっとも有名な探偵社「ピンカートン社」に勤務するサミュエル(蘭寿)は、幼いころから読んでいた探偵小説に憧れて探偵になったものの、まわってくる仕事は不倫調査など冴えないものばかり。その日もNY市警に勤務する年老いた警部、ジェイムズ(一樹)と担当することになった任務は、かの「コットン・クラブ」のダンサー、ブリジット(美羽)の警護。しかも本人に気付かれないように、との注文つき。不倫や浮気調査などにはよくある依頼でした。(ちなみにこの頃、アメリカでは警察官が非番に探偵のアルバイトをすることが認められていたそうです)

ところが、サミュエルと交代してブリジットを警護していたジェイムズが殺害されてしまいます。おまけにその現場からあまりに近いところで、賭博王として名を馳せていたロススタイン(美郷真也)も暗殺されるという事件が発生。そしてなんと、サミュエルが2つの殺人事件の容疑者としてニューヨーク市警から追われる羽目になります。

サミュエルとかつて相棒を組んでいた同僚のマイルズ(七帆)が仕入れた情報によると、最近、評判を下げつつあった市警が、事件をスピード解決することでイメージアップを図ろうと、手っ取り早くサミュエルを犯人に仕立て上げた事が判明します。

自分の無実を晴らすためには、自分自身で真犯人を捜すほかありません。そのためには、もともとの警護依頼の対象であったブリジットに接触するしかないと考えたサミュエルは、彼女の勤めるクラブへ戻りますが…。

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【カンゲキレポ】
今回は、ふたつの視点から感想を述べていくことになります。1つは作品の感想、そしてもう1つはらんとむファンとしての感想(笑)。まぁ、一言で言えば「作品的にはあと一歩、らんとむファン的にはウハウハ☆」って感じでしょうか(笑)。

ではまず、作品の感想から。
緻密な時代考証に裏打ちされた複雑な、それでいて軽快な物語の描き方には定評のある大野先生ですが、今回は逆に「思い入れの強さ」が裏目に出てしまったのではないかしら、というのが第一印象。あれもこれも要素を詰め込みすぎて、結局書ききれなかった、という印象の残る作品でした。

大野先生の作品は、マニアックだと思いますね。もちろん、他の演出家の作品もその当時の政治情勢や文化背景を念頭に置いた作品づくりがされていますけれど、大野先生は、その上をいくマニアックぶり。他の先生方が政治史や文化史などにいわゆる一般的な「世界史」に重点をおいた創作されているのに対して、大野先生の場合は社会史のような、大学で研究する「史学」に重点をおいた創作ぶり、という感じでしょうか。そしてとことん、自分の興味と好奇心を満たすまでに徹底した調査のもとに創作されていている、という印象です。

ただ、そういった歴史や人物への思い入れが強くなるほど、逆にそこにとらわれてしまう危険性をはらみます。大野先生のお話によると、今回の作品は第一次世界大戦後にアメリカに広がった「ジャズエイジ」を、その発信源である「格差社会」からみていく、というのが主題のようでしたが、どうもその思い入れが強すぎて書きたい要素がどんどん増えてしまい、結局書ききれなかった、という印象が残りました。

アーノルド・ロススタインなど実在の人物と主人公ら架空の人物を巧みに織り交ぜて物語を進行されていく手腕はお見事ですし、1幕は登場人物の紹介や事件の背景をそれとなく説明し、2幕で一気に核心に迫る脚本構成もいつも通り。また、登場人物はそれぞれが内面に行き場のない思いを抱えていますが、この事件を経てそれぞれが人生を見つめなおす「きっかけ」を見つける、というのも心憎い展開。

ところが…。主人公は真相を解決することに成功するのですが、それは自身で突き止めたのではなく、非常に「間接的な」手助けがあったからこそ。結果的には、自分では何も解決できていないまま、次の人生へ踏み出すことになるのです。これでは、作品のテーマでもある「等身大の成長」に説得力がありません。他のキャラクターにしても、その抱えている内面への書き込みが足りないので、「ああ、とりあえず皆さん、新しい環境でがんばっていくのね~、がんばって欲しいわねぇ」ということで納得はできますが、共感はできませんでした。

あとですね…無知丸出しで恥ずかしいのですが、その時代特有の用語などは、プログラムや舞台上の台詞などでさりげなく説明していただけると、ありがたいですね…。たとえばプログラム、ヒロインのブリジットの説明。

「ハーレムのクラブ『コットン・クラブ』のダンサー。ムラート。」

…む、「ムラート」??
その後、この用語はどうやらヨーロッパ系とアフリカ系の混血を指すらしいことが舞台上で判明したからよかったのですが、他にも「た、たぶんこういうことだな…」みたいな用語が飛び交い、ちょっと困りました。舞台というのは観客の想像力も必要な要素ですが、知らない単語が出てくるとそこで一瞬思考が止まってしまいますので、できればそういう配慮をしてもらえるといいですね。(バウホール公演のプログラムにはあったのでしょうか?)

正直なところ、ちょっと期待しすぎてしまったかな、という感じの今回の大野先生の作品ですが、それでも軽快でおしゃれでベタな演出は盛りだくさんですから、オススメです。

【らんとむレポ】
とまぁ、作品評としてはちょっとけちょんけちょん気味ですが、らんとむファンとしてはむしろウハウハな舞台でした!

というか、大野先生は役者に対するあて書きが非常に巧いので、出演者それぞれの魅力がたくさん引き出されていて、みんなのびのび、イキイキと舞台を勤めていました。本当に、みんな楽しそうに演じているので、観ているこちらまで笑顔に。出演者の魅力と好演で、この舞台のレベルはかなり引き上げられたと思います。

その筆頭にいるのが、いうまでもなく主演の蘭寿とむ。らんとむです。ここから先はただのファン馬鹿レポですので、無駄な時間を使いたくない方はどうぞウィンドウを閉じて仕事にお戻りください(笑)。

まずはプロローグ。トレンチコートにソフト帽をかぶっての登場。振り返りざまから、すでに形が決まっています。さすが、「男役養成工場」、花組で10年間研鑽を積んだだけありますね。個人的には、ソフト帽のふちを人差し指と中指でゆっくりとなぞる振りに腰砕けでした(笑)。←相変わらずマニアック

お芝居では、小さい時から憧れていた職業に就いたものの、夢と現実のギャップに直面し、「まぁ、こんなもんか」という感じで毎日を過ごしている中、ある日突然事件に巻き込まれていく青年を、等身大に演じています。妹(花影)に見せる優しさや同僚マイルズへのちょっとやるせない思い、事件がきっかけで出会うブリジットへの思いなどを繊細に、ストレートに表現。らんとむ…大人になったわねえ…(出ました、親戚のおばさんコメント)ちょっと声が裏返った時もあったけど、そんなの気にしないわ!!(いや、気にしましたよね>笑)

優等生、らんとむは宙組生としての広報も欠かしません。ジェイムズに「張り込み中にでも読みますか」と渡す小説のタイトルは、「バレンシアの熱い花」。次回宙組本公演の宣伝以外のなにものでもありません(笑)。表紙はもちろん、宙組トップスター、大和悠河の写真がでかでかと。「フェルナンドがすっごいカッコいいんですよー!」と、PR。受ける側の一樹さんは、「いやー、私はラモン(←蘭寿の役)が好きだぞー」と、さりげなくらんとむを持ち上げてくれました。さすがベテラン!らんとむ嬉しそう(笑)。

フィナーレでは、もちろんダンサー・らんとむをこれ以上にないくらいに堪能!!もともとダンスに定評のある人ですが、いつ見ても惚れ惚れしますね。ひとつひとつの振りを確実に決める鋭さとしなやかさ。腕をひとふりするだけでパァッと春風が舞うような空気の使い方…かっちょいいわ…(笑)。

ちなみに、今回のフィナーレでは客席降り(客席に降りてのパフォーマンス)が多かったのですが、ファンの方がバラを一輪、らんとむに手渡したんですね。舞台に上がったらんとむは、そのいただいたバラを片手に持ちながら、巧みにダンスの中で小技として活用していて、さすがだな~、と感心。ファンの方も渡しがいがあるってもんですね。

そして最後の、美羽あさひちゃんとのデュエットダンス。もう、スピード感があって美しくて、お願い、時間を巻き戻してーーー!!!っと本気で思うくらいに絶品です。特にリフト!ダイナミックなので華麗で、あんなに完璧なリフトを見たのは本当に久しぶりです。

いや~、5年前は彩吹さんの後ろをちょこまかくっついていたらんとむが、こんなに大きくなって…とよくわからない感慨にふけるとろりんさん…(笑)。これからの活躍が、ますます楽しみです。

***

らんとむ賛歌はきりがないので、このあたりでさくさくっと他の出演者に参りましょう(笑)。

準主役、マイルズを勤めた七帆ひかる。
スーツ姿の似合うすっきりとした長身と、オールバックにしたメガネ姿が思いのほかステキで、意外なところでとろりんさん萌え萌え♪(笑)。これからに期待ですね。

ヒロイン、美羽あさひ。
聴くたびに癒される、美しく澄んだ歌声です。「コットン・クラブ」でセンターをとる自信の中にも、自らの生まれについての葛藤を抱えた純真な一人の女性像を、あますところなく表現していました。惜しむらくは、少々、衣装がゴテゴテしすぎていたかな…と。(これは衣装方の課題でしょうが)もう少しすっきりとしたラインの衣装の方が、時代にはふさわしかったのではないかと思います。セントラルパークで見せる「バァーンッ☆」、超キュートなので皆さまお見逃しなく☆

ベテランコンビ、美郷と一樹。
サミュエルの成長を「間接的に」見守る続ける役ですが、包容力と大きさを見せて、さすがの好演。特に美郷の気計算されつくした「間のはずし方」はお見事というほかありません。間を外しているのにそれがちゃんと「間」になっている、美郷さんの芝居巧者ぶりには脱帽です。

今回、思わず注目したのが、「コットン・クラブ」のダンサー、フィナードを演じている澄輝(すみき)さやと。すっきりとした顔立ちに黒塗りが映えて、かなり目立っていましたよ。まだ入団3年目ということで、これからが大いに期待です。

最後にひとつだけ、男役全体にいえることなのですが、もう少しスーツの着こなしを勉強してもらいたいなぁ…と。ちょっと、ズボンのすそのラインがダボダボ過ぎる人が目立ったかな…。「ああ、こだわったんやろうなぁ」と思えたのは、やはりらんとむくらいでしたので。このあたりは各自の研究次第ですね。

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作品としては少々満足のいかない…というか、「大野先生はもっとできるはず!」と思ってしまう出来ですが、出演者の熱意がとても伝わってくる舞台です。皆様、頑張るらんとむをぜひぜひ観にいってあげてください(笑)

☆おまけ☆

プログラムの後表紙のふたり。何なのでしょうか、この微妙な距離感は…(笑)

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ラブ

あ¨〜宝塚! 後ろ抱っこ、憧れですw

そして…また2回、外れました…爆。
やっぱり早起きですか…。なかなか根性がありません。
でも今年こそは、見るぞ〜(って、もう4ヶ月経ってる)
by ラブ (2007-04-27 14:42) 

★とろりん★

ラブさま
後ろ抱っこ、あこがれますよねえ~(爆)。なかなか当たりませんねぇ…。やはり当日券でしょうか…。もし入れなかったとしても宝塚大劇場周辺にはガーデンフィールズやお洒落なカフェ、宝塚温泉、清荒神などもあるので、1日ゆっくり楽しめると思います。今年こそは観られますよ~~に!!
by ★とろりん★ (2007-04-27 20:16) 

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