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仲道郁代 デビュー20周年記念 ピアノ・リサイタル [クラシック]

2006年11月5日(日) 紀尾井ホール 14:00開演

【演 奏 曲】
オール・ベートーヴェン プログラム
・創作主題による32の変奏曲 ハ短調
・「プロメテウスの創造物」の主題による15の変奏曲とフーガ 変ホ長調 【エロイカ変奏曲】
・ピアノ・ソナタ第29番 変ロ長調 【ハンマークラヴィーア】

【アンコール】
・ショパン: 夜想曲第20番 【レント・コン・エスプレッシオーネ】
・ショパン: 子犬のワルツ
・リスト  : メフィスト・ワルツ
・シューマン/リスト編: 献呈
・シューマン: トロイメライ
・エルガー: 愛のあいさつ

*****

デビュー20周年を迎えたピアニスト、仲道郁代さんのリサイタルに行って来ました。

この秋から始まる06-07シーズンがデビュー20周年、そしてこの日が
その幕開けの日と言うことで、会場にはたくさんのファンが詰めかけて、大盛況。
「ゴメン!遊ばせクラシック」で仲道さんと共演されている松村雄基さんもお越しでした。
テレビで拝見するよりも若々しくて男前でしたよ~☆

ロビーには、尾上松緑丈や假屋崎省吾さんなどから贈られたお花が
所狭しと並べられ、晴れやかな雰囲気に一役買っておりました。

***

今回は仲道さんがここ数年ライフワークとしてきたベートーヴェンに
スポットを当てた、オール・ベートーヴェン プログラム。
前半に「創作主題~」と「エロイカ変奏曲」、後半に「ハンマークラヴィーア」を演奏。
アンコールはなんと6曲も登場して、デビュー20周年シリーズの幕開けに相応しい、
密度の濃い充実感あふれる演奏会でした。

私は相変わらずクラシック音楽は片手間でして(汗)、
正しく「鑑賞」できているとは思えないのですが、
言葉に言い表す事ができないくらい、幸福感と感動に包まれた時間を過ごしました。
文字通り、「至福のひと時」でした。

仕事柄、「心の耳で聴く」という言葉をよく耳にします。
この日の彼女の演奏を聴いて、それがどういうことなのか
初めて実感できたような気がします。

これまで、クラシック音楽を聴く時は、まず「耳」に入ってきた
記号(音符)を頭の中でいったん解析して、その記号の流れが
メロディーとなって表現されてくる、というような感じでした。

でも、仲道さんの演奏はまず、「耳」ではなくて「心」に響いて来るのです。
目をつぶっていても、胸に染み入るように、ただ音色が心に伝わってくる。

その音色に「耳を傾ける」のではなく、ただひたすら、彼女の奏でる
メロディーに「心を澄ませる」自分がいました。
「あ、これが『心の耳』で聴く、って事なんだ」とふと思いました。

仲道さんは演奏中、絶えずピアノに語りかけています。
演奏している最中、ずっとその曲のメロディーを口ずさみながら指を動かしています。
その姿はまるで、ピアノと「対話」しているように見えます。

何て言うんでしょう、演奏中の彼女は、「美しく見えるように演奏しよう」とか
「超絶技巧で魅せよう」とか、客席に対して何かしらアピールしようとする意志が
ほとんど感じられないんですよね。(もちろん、良い意味で)

その代わり、ひたすらに、ただひたすらにピアノに語りかけている。
自分の伝えたいメッセージを曲にのせて、ピアノの力を借りて表現するために、
全身全霊でピアノと対話を繰り広げているのです。

小柄で華奢で、ふんわりとした笑顔が素敵な彼女の内面のどこに、
あのような強靱でたくましい意志と精神が宿っているのだろう…
と、彼女の演奏を観るたびに思います。

ピアノに対する圧倒的な情熱と気魄に満ちた彼女の姿に
客席もぐいぐい惹き込まれていき、ひたすら彼女とピアノの「対話」を
固唾を呑んで見守るという、濃密な空間が生まれます。

アーティストの創り出す世界に客席全体が圧倒され、
飲み込まれていき、そしていつしかその世界の一部となっていく。

アーティストと客席が一体化し、その瞬間を共有することができるという事。
舞台や音楽など「生の芸術」を愛する者にとって、これ以上にない幸福です。

***

ここまで書いて、曲の鑑賞に全く触れていない私…(汗)。

初心者の私からみると、ベートーヴェンの曲は、
彼の人生観が如実に表現されているように思えます。
言葉では表現できない苦悩の叫びや嘆きが、音楽によって端的に表現されているような…。
その苦悩や嘆き、苦しみを越えてこそ、その闇を抜けた後に広がる光の美しさ、
希望の輝きがまばゆく人の心を照らすのだ、というメッセージが強いような…。
あくまでも受けた印象ですけれど…。(ちょっと逃げ腰)

仲道さんのレパートリーの中で私はいちばん好きなのは、
アンコールの一番最後に演奏されることが多い「愛のあいさつ」。

「今まで応援してくださった皆様へ、これからもよろしくという思いを込めて」
演奏されるそうなのですが、とても優しくてあたたかくて、涙が出そうになります。
瞳を閉じると、これまで自分が歩んできた道の中で出会った大切な人たちや、
その人と過ごしたこれまでの時間が思い出され、そして未来の時間に
思いを馳せてしまいます。

まるで、ゆりかごの中でゆっくりとあやされているような、
穏やかな幸せに浸ることのできる「愛のあいさつ」です。

*****

と、いうわけで、三連休最後の1日は、濃密な世界を十二分に満喫することができました。
いや~、本当に感動的でした…☆☆☆

今回のリサイタルを皮切りに、全国各地でデビュー20周年記念プログラムが
予定されています。多忙なスケジュールですが、無事に乗り切られるよう、
一ファンとして影ながらお祈りしております。
興味のある方は、ぜひぜひお近くのホールまで足をお運び下さいね。

★仲道郁代 オフィシャルウェブサイト (演奏会スケジュールも載っています)
http://www.ikuyo-nakamichi.com/

ついでにコチラも、ぽちっとな☆


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