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芸術祭十月大歌舞伎 昼の部  [歌舞伎]

◆◆◆ 芸術祭十月大歌舞伎 昼の部 ◆◆◆

2005年10月9日(日) 11:00開演 歌舞伎座

舞踊    『廓三番叟 (くるわさんばそう)』
通し狂言 『加賀見山旧錦絵 (かがみやま こきょうのにしきえ)』
試合/草履打/長局/鳥啼/元の長局/奥庭

◆ 出演 ◆
芝雀、亀治郎、翫雀 (廓三番叟)
菊五郎、菊之助、松也、左団次、玉三郎 (加賀見山) 

*****

長旅より生還して間もないわずかに2日後の先週の日曜日、
とろりんはもう劇場に復活(笑)。
『NINAGWA 十二夜』以来、約2ヶ月半ぶりの歌舞伎座です。

毎年この月は文化庁の芸術祭に参加興行として、人気の高い通し狂言や
オールスターそろい踏み、みたいな舞台が上演されます。
今回の昼の部は、音羽屋親子(菊五郎&菊之助)、そして玉三郎という
ファンにとっては垂涎モノの共演です。

*****

まずは、言い訳をさせてください。そして、途中から愚痴を言わせて下さい(笑)。

「更新が早すぎる」「怒濤過ぎる」「ちゃんと仕事してるのか」と評判の(?)
カンゲキ通信。今回の記事更新が(比較的)遅れたのは、2つ理由があります。

1つは、真面目に仕事が多忙を極めていると言うこと。
(来週からまた旅です)

そしてもう1つは、とろりん自身が「カンゲキに集中できなかった」と言う事。
せっかくの大舞台だったのに、その世界に浸りきる事ができなかったのです。
これは、本当に珍しい現象です。というか、とろりん的には許せません(笑)。

そして、その原因はと言うと…。 
以下、愚痴警報発令です。吼えさせてくださいっ(笑)。

こらあぁぁぁーーーーーーっっっ!!
3階1列の10番代後半の席に座ってた中年カップルーーー!!(推定30歳半ば)
ええ年して観劇中にイチャイチャするんじゃなーーーーーいっ!!
うがあぁぁぁーーーーーーーーっ!!!

私の席のちょうど前と、その隣の席を占拠した彼ら。
3階の最前列なのに、ものすごく前のめりの姿勢で見物し始めたのです。
これは速攻、すぐ後ろに座っていたとろりんによってイエローカード(笑)。

歌舞伎座の3階席というのは、ちょうど舞台が一幅の絵のように
全体が見通せるお席なんですね。

そして、歌舞伎の舞台というのは物語の進行に従って、
登場人物が定まる位置、というのが必ずあります。
この位置を、「居所」と言います。
居所にいるべき役者ひとりひとりが、ぴたりとその位置に定まることによって
舞台全体が決まることから、歌舞伎は「様式美の世界」と言われるのです。

お2人さん、イエローカードによって少しはマシになったものの、
それでも頭がちょうどその居所の位置にかぶってしまい、
肝心の役者さん達が全く見えない!!

仕方なく、その頭をよけるようにして動いたため、必然的に隣の席のおじさんと
ピタリとくっつくような態勢で見物する事になったとろりん。
ここにも即席カップル誕生。おじさん、ドギマギさせてごめんなさい(笑)。

そしてこの最前列カップル、とにかくラブラブぶりを見せつけたくて仕方ない様子。
昼の部が開演して、終演までの約4時間半、ずーっと同じ調子でイチャイチャ。
もう、とにかくイチャイチャしっぱなし(苦笑)。
私は彼らのすぐ後ろの席なので、舞台に集中しようとしても、
どうしてもその様子が視野に入ってきてしまうのです。(頭が邪魔だし)

歌舞伎座って、夜の場面でない限りは、客席もかなり明るいんですね。
ですから彼らの行為は、3階席のお客さんには丸見えだったはず…。
(思い出すのも赤面ですよ、ホント…)
「いい年して、みっともないなぁ…」と思っていたのは、私だけではないでしょう。

***

とろりん最大の被害は、物語中盤、玉三郎と菊之助の2人の場面。
2人の大芝居を、固唾をのんでオペラグラスで覗いていると…
突如、巨大な黒い岩山が2つ、両端からスーッと現れて、真ん中でゴチン。
オペラグラスの視界が突然、閉じられてしまったのです。

「えっ!?何!?」
と驚いてオペラグラスを外すと…お2人さん、頭をすり寄せてゴロニャン♪
そう、巨大な黒い岩山と見えたものは、お2人の頭だったのです。

ちょっとおぉぉぉぉ!!!今、一番良いところだったのにいぃぃぃぃぃ!!!
噛みついたろかーーーーーーーっ!!!がるるるるーーーーーっっっ!!
(一匹狼癖が抜けきれていない)

恋人同士ですもの、一緒に楽しみながら観劇したいのは分かりますし、
それを批判する気は全くありません。
私だって彼氏と観劇する事になったら、自分の性格から想像してみるに、
舞い上がってしまって必要以上に挙動不審な行動をとってしまうと思いますし(笑)。
(あくまでも推測ですけど>笑)

ただ、周囲のお客さんまで不愉快な気分にさせてしまうような行為は
謹むべきでしょう、と。それでこそ、大人の恋愛じゃありませんかっ(笑)。

とりあえず、とろりん基準を挙げておくとこんな感じ↓です(笑)。

【OK】
・肘掛け付近で手をつなぐ      
→座席の背もたれより下で行われているので、周囲はほとんど気づかない
   
・時々微笑み合う(笑)
→場面と場面の間とか、暗転の一瞬とか、タイミングを計ればOK。
 目撃したとしても、こちらも微笑ましい気分に(笑)

【NG】
・顔を寄せ合ったり、頭をくっつけたりする
→頭部(背もたれから上に出ている部分)が動き回ると、後列以降の
 全てのお客さんは舞台を見る視点が定まらなくなり、 集中力が欠けてしまう。
 後列全てのお客さんに迷惑、と言ってもいい。今回のカップルが、まさしく該当。

みなさん、よろしくお願いします(笑)。
こんな愚痴ばかり言っても仕方ないので、レポに行きます(苦笑)。

*****

●●● 舞踊 廓三番叟 ●●●

【あらすじ】
「三番叟」というと、千歳(せんざい)、翁、三番叟(さんばそう)
という3人によっておさめられる儀礼的な色彩の濃い祝舞です。
柿落としや新春興行などでよくかかる演目です。

この「三番叟」を、場所を廓(遊郭)に置き換えて、そこに生きる人々、
花魁・新造・太鼓持ちの3人で踊ってみましょう、という趣向の舞踊です。

【カンゲキレポ】
花魁に芝雀、新造に亀治郎、太鼓持ちに翫雀。
「三番叟」の厳かで粛々とした空気とはうってかわって、
場所が遊郭という設定だけに、とても明るくて華やいだ雰囲気での舞台。

お酒をちょっといただいてほんのり良い気分になった花魁が、
「3人いることだから、ちょっと三番叟でも踊ってみようよ」
という感じで始まった、という感じで、艶っぽさと陽気さがあふれた素敵なオードブル♪

芝雀@花魁のほんのり上気したような、ふんわりとした色気、
翫雀@太鼓持ちの軽やかでコミカルさのバランスが良かったです。

私にとって、今回の瞠目は亀治郎。
もとから彼のファンと言うこともあるのですが…。
びっくりするほど、踊りが柔らかく、優しくなりました。

亀治郎はもともと舞踊を得意としている役者さんですが、
すごくシャープでキレのある踊りを見せるんですね。まるでタンゴみたいに。
見せ場見せ場を、きっちり、はっきりキメるのですよ。
「はいっ、キメッ!ここで、キメッ!ひらっと回って、もいちどキメッ!!」という感じ。

それが今回の新造の踊りでは、ゆったりと、大きく舞を見せてくれました。
自分のテンポだけでなく、お囃子、共演の役者さんなど、周囲のテンポに
合わせていく中で、「亀治郎の踊り」を魅せることを学んだのではないでしょうか。

今年に入って、亀治郎は本当に成長しました。
「殻を破った」という言い方のほうが正しいかな。

一時期、「自分の道」を進むことにこだわり過ぎていたのが心配だったのですが、
色々な役者さんと共演し、少し周囲を見渡す事ができるようになったのでしょうか。

これからがますます楽しみになってきました♪

●●● 加賀見山旧錦絵 ●●●

【物語】
実はこれ、実話を基にしたフィクションです。
江戸時代、ある武家の奥御殿で、自分の草履をはき違えられたお局様が
はき違えてしまった奥女中にその草鞋を投げつけました。多くの面前で
恥をかかされたその女中は自害。彼女の召使いが、女中の仇討ちと称して
お局様を殺害する、という事件が実際にあったのです。

この事件を縦軸に、歌舞伎ではよくあるお家騒動を横軸に描いたのがこの作品。

***

物語の舞台は大名家・多賀家の奥御殿。この奥御殿を取り仕切る
局・岩藤(菊五郎)は、実は兄(左団次)と共謀して、多賀家乗っ取りを企んでいます。

そんな岩藤にとって邪魔な存在なのが、実質的に自分に次いで
ナンバー2の地位にいる中老・尾上(玉三郎)。
(「中老」というのは地位の名称で、年齢は関係ありません。念のため)

尾上は大店の娘ということで町人出身なのですが、その思慮深さで人望も篤く、
現在の奥御殿の主人でもあり、多賀家の息女である大姫(信二郎)の
信頼を得ています。武家出身の岩藤にとって、面白いわけがありません。

一計を案じた岩藤は卑劣な方法で尾上を陥れ、大勢の人がいる前で
散々に尾上をいたぶり、果ては自分の草鞋で彼女を打ちのめします。

これ以上にない恥辱と屈辱に耐えきれず、召使いのお初(菊之助)が
細々と心を遣い、励ますのも耳には届かず、尾上は以前より入手していた
岩藤とその兄の陰謀を遺書として書き残し、自害して果てます。

尾上の異変を真っ先に感じ取ったのが、常に側に仕えていたお初。
お初は尾上の自害に悲嘆しますが、やがて遺書を発見し、仇討ちを決意します。

死闘の末、お初は岩藤を討ち取り、岩藤兄妹による陰謀も露見。
お初は、ひたすらに主人を思う心意気とお家乗っ取りを阻止した功績が評価され、
2代目尾上を受け継ぐことになりました。
お家騒動と奥御殿の権力争い、どちらもめでたく一件落着。

【カンゲキレポ】
奥御殿と言えば、女主人(藩主の奥方とか、お姫様)とかが住まう場所。
そこに仕えることを「奥仕え」と言いますが、その頂点がやはり江戸城の奥御殿、
通称「大奥」でしょう。今クールでもテレビドラマに登場しておりますね~。

大奥に仕える女性達は、今で言う3月(弥生)の頃に休暇をもらい、
それぞれの実家に帰る事が多かったようで、お芝居もその時に見物する事が多かったとか。

そしてこの『加賀見山』は、大奥勤めの女性が見物することの多い
「弥生狂言」(いわゆる3月興行)として上演されることが多かったそうです。
興行主も、考えてますね~~~。

大奥勤めで色々と積もった鬱憤を、このお芝居で発散していた、と思うと、
江戸時代の女性が何だか身近に思えてきますよね。
「そうそう、本当にあのお局さま、口うるさいのよね~~~」みたいな事を
話しながらも、素敵な役者さんにうっとりしていたのでしょう。

***

では、レポに参りましょう。

まずは菊五郎!!この人の変わり身の早さというか、
「性の超越」ぶり、いや「役柄を飛び越える身軽さ」には舌を巻いてしまいます。
何て軽やかに、性を、そして役柄を飛び越えて自分の懐におさめてしまうんでしょう…。

初々しさあふれる若々しい妻女から、おっとりと年齢を重ねたおばあさん。
江戸のにおいが伝わってくるてやんでいおやじから、ちょっと卑屈な仕え人。
そして今回のコワイ、こわ~いお局様。

どれも同じ役者さんが演じているとは思えないほど、
にじみ出る空気が違ってきます。

今回の岩藤でも、存分にその魅力を発揮。そのいけずぶりに客席も
大いに盛り上がりました。

***

尾上を勤めたのが、玉三郎。
通し狂言で玉三郎の舞台を見るのは昨年の『三人吉三』に次いで2度目です。

美しく、気迫のこもった舞台を魅せてくれたのは勿論です。
ですが、今回の舞台で、玉三郎の舞台を敬遠してしまう人がいる理由が、
少し分かったような気がしました。

あまり偉そうな事は書けませんが、玉三郎の演技は、物語が進行していくに
従って、何というか「尾上」という「役柄」の色よりも、「玉三郎」という「役者」の色が、
どんどん強まっていったように感じます。

もちろん、歌舞伎という舞台は、300年以上にわたって練り上げられ、磨き上げられた、
ある程度決まった作品を色々な「役者」で見る、というのが大きな楽しみの1つです。

観客は、
「ああ、○○(役名)、哀れや~~」と、その「役柄」の境遇に同情し、涙しつつも、
「やっぱり■■さん(役者)はここの見せ所を心得ている」
と、その「役者」の技量や魅せ方に感心し、惚れながら見物していると思います。
その「虚構」と「現実」の世界を飛び交いながら楽しむ、それが舞台だと思います。

そして舞台の進行中、その「虚構」=「役柄」の部分と「現実」=「役者」の部分、
2つの色をバランス良く保ち、魅せることが、役者さんの見せ場だと思います。

玉三郎の場合、舞台が進行していくほどに、「玉三郎」という
「役者」の部分が強くなっていくように感じました。
舞踊では感じたことがないのですが、舞踊の場合はその役者だけが
持つ空気が、まず大事になるからでしょうか。

全体的には、スタイリッシュにまとめすぎていて、あっさりだったなぁ、と。
草鞋打ちの後、胸をかきむしるような屈辱感に耐えてようやく立ち上がり、
言いしれぬ悔しさを自害への決意に変えながらゆっくりと花道を立ち去って
いくのですが、その場面も結構すっきりとした感じで過ぎていきました。

まぁ、なんだかんだ言っても、打掛姿が目の覚めるような美しさで
うっとりしてましたけどね(笑)。

***

尾上にまめまめしく仕える召使い・お初には進境著しい菊之助。
いやーもう、可愛い!!(笑)
尾上に代わって岩藤と剣術の試合をする「試合」の場では
溌剌とした、健康的な魅力とキビキビとした動きで客席を魅了。
菊之助って、意外に(失礼)こういう、ちょっとおきゃんな娘も似合うんですよね。

うってかわって中盤からクライマックスにかけては、
ひたすらご主人を思う純粋さ、けなげさがとても印象的。
物語中盤、自分の励ましもむなしく自ら命を絶ってしまった尾上の
葬送の準備を淡々と勧めながら、主人譲りの芯の強さを、仇討ちへの
決意に固めていくところなど、良い芝居でした。
静かながらも、キリリと引き締まった横顔が、哀しくも美しかったです。

そして菊之助の舞台を見ながら、「お父さんの若い頃に似てきた…」
と、しみじみと思ってしまいました。(写真でしか見たことありませんけど)

ちなみに大詰「奥庭」では音羽屋の親子対決が見どころです(笑)。
この時は、クライマックスの息づまる対決の場面にもかかわらず、
岩藤のちょっとした言動に、客席も固唾を呑みつつ、時々クスクス。
菊五郎は、こういうところで良い味を見せますね~~。

*****

個人的な事で残念だな~、と思うことは色々とありましたが、
美味しいお弁当を食べたし、歌舞伎座名物「焼豆大福」もほおばったし、
来年の干支「戌」にちなんで「まゆ犬」という、可愛らしいお土産もゲットしたし♪
久しぶりの歌舞伎座、やっぱり楽しかったです。

今日のお星さま…★★★☆☆ (バカップルに乾杯☆→やはり根に持っている>笑)


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コメント 6

★とろりん★ さん、はじめまして。
TBありがとうございました。長い間では観劇していると色々なことが
ありますね。周囲を気にするとお芝居に集中できなくなるので、最初
から存在しないものと考えるようにしております。最初から前のめりに
なって力の入った方は、だいたい寝てしまうものですが、別の目的が
あるカップルには通用しなかったみたいですね。
by (2005-10-15 08:50) 

★とろりん★

ハンナさん、コメントありがとうございます!
アドバイスもいただいて・・・カンゲキです・・・。
私もまだまだ修行が足りませんね。
自分が楽しむことが一番大切ですものね。
これからもお越しください☆
by ★とろりん★ (2005-10-16 10:40) 

suetake

初めまして。
ふとした拍子にここにたどり着きました。
実は私は歌舞伎関係(舞台に出てる)者です。
十二夜も、今月の歌舞伎座にも出てました。
歌舞伎ファンがたくさんいらっしゃる事をうれしく思います。
by suetake (2005-10-19 20:04) 

★とろりん★

suetakeさん、コメント&nice!をいただきまして
ありがとうございます!!毎日の舞台ご出演お疲れ様です。
来月は新橋演舞場でしょうか?
急に冷え込みが厳しくなってきましたので、
どうかお体に気をつけてお勤めくださいね。
by ★とろりん★ (2005-10-23 12:18) 

カオリ

こんばんわ。ワタシもようやくう出かけてきました。
ワタシも亀治郎さん、7月以来大注目です!
これまでノーマークだったんですけど。

菊ちゃんのお初はよかったですね〜。玉様と菊ちゃんの組み合わせはすごくよいとワタクシは思ってます。10年くらい前の「天守物語」よかったですよ〜。
by カオリ (2005-10-24 23:40) 

★とろりん★

カオリさん、コメント&TBありがとうございます☆
私は5年ほど前、スーパー歌舞伎『新・三国志Ⅱ』で
踊る亀ちゃんを見て一目惚れし(笑)、それが
歌舞伎道へ足を踏み入れるきっかけになったのです。
今や、弟の成長を見守る姉の心境で応援しています。
私の方が年下なんですけど(笑)。
by ★とろりん★ (2005-10-25 10:19) 

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