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中山弘子新宿区長に聞く [インタビュー]

フリーペーパー「歌舞伎町るねっさんす」第3号発行直前、巻末の「区長に聞く」のインタビューをとるため、4月10日新宿区役所の区長室をたずねた。日本発の女性区長、それも新宿の区長ということでマスコミ等ではかなり注目度の高い方であるが、実はフリーペーパー「歌舞伎町るねっさんす」の公式な区長インタビューは始めてのこと。イベントやそのほかの会合などで区長とはお会いしいろいろお話する機会は多いが、実際記事にするとか公表することを前提にどれだけ深い話ができるか、正直「あたりさわりのない」話に終始しかねない、ということもあって公式にインタビューをすることはやや遠慮してきた。

歌舞伎町ルネッサンスの推進において、当初からの機軸に置かれている治安対策・地域浄化活動についても、なにも新宿区だけの問題ではない。東京都、そして日本全体から見て「歌舞伎町」はシンボリックな場所であり、むしろ国政レベルでの治安回復・都市再生としてプライオリティが高い。その中で、地域の企業や商店街、あるいはそこで活動するあらゆる人たちと現場として接点を持つ「新宿区」は、いわば調整機関であり窓口でもあり、また、この活動そのものが「歌舞伎町の浄化・再生なんて誰がやってもできるわけないよ」と数十年言われ続けてきたことに対する挑戦でもある。

 

その中で、特に暴力団のインフラ排除に有効と思われるあらゆる手を打ちながら、一方で、それだけでは地域経済はもたないわけだから、なにかしらの活性化対策をカンフル剤として投入しつつ、今後計画されている四葉会(地域の興行4社)再開発をベースに「大衆文化の創造・生産・消費の街」に生まれ変わらせようという、今まさに過渡期にあるといえる。街の人たちは、想像以上に苦労しているし、さまざまな努力もしている。時々暗中模索、意見がまとまらなかったり、しかしそんな民間主導の地域再生を、同じ歌舞伎町に活動拠点を持つ区役所も一人の当事者として係わり合い、また地域の人たちの、時として揺れ動く志に鼓舞、エールも欲しくなる。そんな意味で、中山区長にインタビューをさせていただいた。

 

中山弘子新宿区長

 

■新宿区の施政方針、「持続可能な都市・新宿」について

 

新宿の街の一番の強みは、懐が深く、多様な顔を持ってるところと言ってきたわけですけど、新宿がそれぞれ多様性を発揮でき、暮らしやすさも一番で、そういった街を目指している、硬い言葉で言うと「持続可能な都市・新宿」を目指しますということなのですが、というのは、江戸からの歴史をもってきている新宿が歴史の記憶をみんなで共有しながら、みんなが食べていけて、そして快適さを感じられてといった経済活動が活発に出来、しかし経済活動だけが大事ということではなく人々の潤い、暮らしやすさを追求できるようなヒューマンスケールの都市をめざしたい、その担い手は区民であり、そこで活動している事業者がみんなで担う街を目指しましょうということです。

 

■歌舞伎町も新宿駅周辺の経済圏の一エリアなわけで、歌舞伎町をよくしていくには新宿全体の活性化は欠かせない。新宿駅周辺の全体的な施策について。

 

新宿駅というのは1日乗降客数が300万人を越える大ターミナル。日本一の商業・ビジネス集積もあり、人が多く来てくれているというのが大きい。しかし、このエリアの欠けているのは、その大ターミナルが中心をどんと占めていることで、新宿駅のまわりのいろんなところを見てあるける回遊性に課題がある。駅周辺の回遊性を高め、周辺エリアをよさが西口の方までつながっているような、その中で北側にある歌舞伎町は、イメージ調査をみていくと、良くも悪くも有名ですが、普通の若者や家族連れが行きたくない街、危険な街になってるところがある。そういったマイナスのイメージを払拭することで新宿全体のイメージアップをはかっていくための取組が必要だと考えている。19年度末の地下鉄13号線開業、南口の基盤整備事業が行われている、こういったことを条件として考えながら、この街にきて快適だと思ってくれる、そんなまちづくりが必要。都心であるからこそ緑を渡る風を感じられる、街路樹を御苑のほうからつなげてくるとか、モア4番街でオープンカフェでやっているが、ああいったことも一つの取組で、それをもう少し全体で、たとえば商業空間をモール化するといった取組も重要だと思う。

 

■新宿周辺エリア経済圏における、歌舞伎町ルネッサンスの意味・課題・目指す街の姿について

 

新宿の経済圏は全体では、事業所数はあまりかわっていない。変わっていないから、みんな同じように営業できているのかというと、よく見るとそうではなくて、つぶれるところもたくさんあるけれども新らしいところもたくさん出てきているということなんです。新宿の商工行政はかなり舵をきっていて、新たに起業あるいは進出してくるところをちゃんと受け止められるような、またそういった人たちを支援するような起業講座を行ったりしてきている。

歌舞伎町の経済として、私が考えているのは、ここには違法風俗や組織暴力などの問題を抱えているわけだが、それらをただ排除するだけで街として維持できるわけではなくて、とくにあれだけの繁華街なわけだから活発な経済活動があってこそ街が維持できるわけで、たとえば違法な風俗等を排除した場合には、その街がちがう新たな産業、担い手によって支えられなければいけない。そういう意味で、みんなで歌舞伎町のビジョンを共有しましょうと、それは歌舞伎町の生い立ち、遺伝子から言えば興行街であったり、大衆娯楽・文化を発信する、そういったものが今不十分で、それを新たな担い手としてきてもらい、街の人たちと一緒に、この街に愛着を持ち誇れるような大衆娯楽・文化の発信の場所にすることをみんなでやりましょ、というのが歌舞伎町ルネッサンスです。

新宿全体の街の品格、風格のある、まさに日本、東京の新都心としての新宿を思い描いたときに、もっと21世紀は、人々がわくわくするような娯楽、文化、そういうのが大事になって、そして大人の街も必要とされると、ここはそれだけのポテンシャルをもてる場所でもあるのだから、たとえばブロードウェイのような、またもっと幅広く、文化娯楽をそこから他に発信するだけでなく、そういうのに関わりたいなって思う人たちがそこで活動したり創り出す場になったり、自分を表現したり、そこが住まいの場になったり、そして、自分達が今の時代の先端を担っている、文化を担ってるという誇りみたいなものを大事にして、お金のない若い人たちにも少し場を提供したりとか、そういう担い手にみなさんでなり、またきてくれませんか?ということですね。

ルネッサンスを推進していくなかで、映画や演劇と、それに付随するような物販とか、あるいは大久保エリアの多文化な経済圏とのクロスオーバーが生み出す特徴をもったものが出てきてくれるんじゃないかと期待している。歌舞伎町ならではの、ブロードウェイみたいな街になるのであれば、舞台の衣装やそれに関連した書籍やさんだとか、そういうのに関心を持っている人にとって、あそこにいくと関連のものはそろうよとか、あるいは歌舞伎町独特の多文化的なアウトレットとか、そういったこの街を象徴するようなものもいいかもしれない。でも、街を歩いていればのども渇くし、おなかもすくし、だから飲食もある、そういう余韻を楽しめるような街であったらいいと思う。

 

■今後の歌舞伎町対策の課題である、TMO(タウンマネジメント組織)創出について

 

なるべく早く歌舞伎町再生に目途をつけていくのも大事だと思うんです。18年度は、自分達の街として、みんなで担って運営していくタウンマネジメントの仕組みをつくっていかなくてはならない。その場合、課題はどう運営していくのか、それにはどうしてもお金がいるんですよね。だから、稼ぐということについて、区として智恵をだせたり、それを許可すればいいよってことがあれば最大限サポートしていきたい。広い意味でこれも市民自治なんです。そこで事業活動をやっている人たちが主人公に、だから、歌舞伎町商店街振興組合であったり、そこで商売して振興組合に入っていない人たちにしても、ただ乗りするのではなく関わってもらうとか、そこに住所をもっていなくても、街で活動している人たちにさまざまな形で担ってもらう、今までそれほど前例があるわけではないので、行政としても力いっぱいサポートしていきたい。

 

中山弘子 新宿区長・歌舞伎町ルネッサンス推進協議会 会長

194526日台湾羅東生まれ

1967年日本女子大学文学部社会福祉学科卒業

1967 4月東京都庁に就職

2002 10月東京都庁を新宿区長選出馬のため退職

2002 1124日新宿区長就任(一期目) 23区初の女性区長となる

 


インタビュー後、区長や区長室長の酒井さんと3人で、歌舞伎町の治安対策についてのポイントや再生のためのカンフルとしてのアイディアについて語り合った。課題が山積し、また変化の早いこの街について、とくに風俗産業における根深い産業構造があり、構造的に暴力団のインフラが絡み合っている。そういったものを排除するために有効な具体的な施策を行うには、正確な情報と予測も必要だ。「向こう側」の人たち以上に法を熟知し、必ず出てくる脱法行為や取締りの隙間を狙った違法な活動をあらかじめ予測、先手を打つべき。特に個人的意見ではあるが「行政の仕事は突き詰めると規制と緩和ではないか、歌舞伎町はいってみれば風適法の街です。つまり、風適法上何を規制強化し、なにを緩和するべきか」といったことについて突っ込んだ話をさせてもらった。 

地域事業者や商店街、ここで活動するあらゆる人たちと協働しつつ区政・都政・国政の垣根を越え、なにが必要なのか、どういった有効な施策があるのかを見極めながら戦略的に実行していって欲しいと思っている。区長、今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m


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