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「大人の味」のチョコレート [思ったこと感じたこと]

 チョコレートが好きだっていう話は、ちょっと前に書きましたが、今一番コストパフォーマンスも味も気に入っているチョコレートのひとつが、ベルギーのコート・ドールというメーカーのSansations BRUT(センセーション・ブルート)/CACAO86%です。

 コート・ドールは1883年創業の老舗で象のイラストが目印。明治製菓が輸入し、成城石井など一部の輸入食材を取り扱う店で販売していたのですが、最近では高カカオチョコ・ブームに乗って普通のスーパー(ちなみに東急ストアとか)でもちらほら見掛けるようになってきました。

 

 このブルート、面白いことに、先日ここのブログにも書いたCuorenero100% CACAO / Classic Blendより甘くないんです。あちらは無糖でこちらは砂糖を使っているのにも関わらず、ですよ。

 こいつを口の中に入れてじっくり溶かすと、少ないけれど確実に甘みは感じます。でも、この甘みが喉の奥を通り過ぎる前に、追いかける様にほろ苦さと酸味や軽いタンニン(渋み)が口の中を支配します。結果、印象として後から来た味が勝るようで、感じた甘みが消されてしまうのです。反対にCuoreneroはこの苦みと酸味が穏やかなので、砂糖が入っていないにも関わらず、口に入れて溶け始めてからの第一印象のとおり、カカオの甘みが感じ取れるんですね。砂糖が全く入ってない方のが甘いだなんて、ちょっと不思議でしょ?。

 いずれにしろ、日本のメーカーのものには無い(敢えて作らない?)ビターなその味わいは、一度はまってしまうと普通の甘さのチョコに後戻り出来ない程です。甘み、苦み、酸味、渋みがそれぞれ複雑に絡み合う、まさに大人のためのチョコレート。

 それでも、やっぱりちょっとは甘い方が良い、ただ単純に美味しい高カカオ・チョコレートが食べたいと仰るのなら、同社のカカオ70%タイプであるINTENSE(インテンス)もお薦めです。BRUTよりも甘みがちゃんと有るので高カカオチョコに慣れていなくても、ごく自然に馴染める味です。素直に美味しいビター・チョコ。

 面白いのは熱量。両者砂糖は使われているのですが、甘くない86%の方が1枚650Kcalなのに対して、70%は616Kcalとこちらの方が低カロリー。脂質も52g対44.5gとダイエットに有効なはずの86%の方が多く含まれているのです。でもこれが落とし穴。INTENSEは食べやすいのでついつい一度に食べ過ぎてしまいますのでお気を付けあれ。

 は上記の文章は10日くらい前に書いた物なんですが、その間にこのコートドールのカカオ86%のBRUTを、普段から食べ物やワインの趣味がとても合う飲み食い仲間に、彼ならきっと気に入るはずと思い1枚食べて貰ってみました。

 しかし、結果はと言うとどうも味に馴染めなかったとのこと

 「あんなに苦くちゃダメだよ~、チョコじゃないみたいだった」
え~、ほんと?。彼の感想を耳にして、思わず聞き返してしまいました。
彼はチョコレートは大好きな人なのですが、僕よりは甘いものに対する執着がない。要は、めちゃくちゃ甘いものが好きってワケじゃなく、程ほどなんです。

 だからこそ、彼ならば絶対に甘くなくて美味しいね、って言葉が返ってくるものと思い込んでいたのに・・・。本人曰く、「だって、♪チョコレートはぁーめ・い・じ~で育ったからなぁ」だって(苦笑)。

 う~~ん、やっぱりみんな人それぞれ普段口にしてるものが違うわけで、自分が好みだと思っても他の人は食べ付けない味にはやっぱり抵抗が有ったりして、なかなか難しいもんですねぇ・・・。ま、この友人氏のおクチがたまたまチョコに関しては「おこちゃま」だったのかも知れませんけど(笑)。

 れはイスラエルのヘブライ大学の研究家が行った有名な実験なのだそうですが、生まれて数時間の新生児の赤ちゃんに、甘み、酸味、苦み、うま味を付けた水を口に含ませる実験をしたところ、甘い砂糖水を与えると満足感を示すような表情を浮かべ、さらに欲するような仕草を見せた。次に酸味(クエン酸)を与えると、口元をきっと結び鼻に皺を寄せ嫌悪を表す。苦みに関してははっきりと吐き出そうと拒絶反応を示したのだそう。うま味(野菜スープにグルタミン酸)に関しては、ほとんど甘みと同じように幸せそうな表情を浮かべる結果だったとか。

 新生児が苦みや酸味に嫌悪感を示すのは、腐ったものや毒物を避ける動物の本能に近いもので、これらは成長しないと受け入れられない味なんだそう。これが所謂、「大人の味」って呼ばれるヤツになるワケなんですね。(要旨、「フランス流美味の探求」 鳥取絹子著、平凡社新書より)

フランス流美味の探究

フランス流美味の探究

  • 作者: 鳥取 絹子
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2003/05
  • メディア: 新書
 
 
 
 対に甘いはずのチョコレートが甘くない。それも思いがけず苦かったり、酸味を感じたりしちゃうんですから、味覚神経も戸惑うハズか。子供の頃からず~っとチョコを食べて来た記憶の、あまーい刷り込みが基本として誰にでもあるでしょうから、本能的にコイツは違う!って、ハナから拒絶しちゃってる人も中にはいるんでしょうねぇ・・・(笑)。

 「食べられるか、食べられないか」それは本来、腐ってないか、毒なのではないかとの動物本能的な疑いに対して、生死をかけて抗って試して来た人間の歴史。好奇心豊かな食いしんぼう達だけが辿り着けた冒険の果ての味。それが「大人の味」だったのかも知れませんねぇ。

 え、大袈裟すぎ?、たかが苦チョコの好き嫌いぐらいでそこまで言うなって・・・?


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plot

こちらにも来て頂いてありがとう!チョコレート、チーズ、ワイン、それに美術の話題。これだけ趣味の合うblogにであったのは初めて(といってもこちらもつい最近始めたばかりですが)で思わずnice!をつけてしまいました。これからも楽しみに寄らせて頂きます。3月フィレンツェにもいらっしゃたらワインでもご一緒したいですね。Ciao!
by plot (2005-12-01 01:51) 

yk2

plotさま: (おふたりで写ってらっしゃるので「plotさん」とハンドルでお呼びするのはヘンな気もしますが・・・。)

 さらにnice!付けて頂いてすみません(^^ゞ。
「これだけ趣味が合う」などとのお言葉を頂きますと、嬉しくてブタさんが何頭も木に登っちゃいそうです(笑)。

 フィレンツェは今年11年振りに訪れたのですが、街がほとんど銀座のように?きらびやかになっていたのにはビックリ。でもウフィッツィからポンテ・ヴェッキオを渡ってアルノ川の反対岸(お書きになられてる左岸?)を歩くと、確かに観光客も少なく、急に以前の記憶にあった静かな佇まいが現れたので妙にホッっとしてしまいました。

 3月にまた訪れて、もしご一緒出来たら楽しいでしょうね~。そしたらエノテカ・シエナからワインの助っ人も呼ばなきゃ。
by yk2 (2005-12-01 22:51) 

farafel

yk2さん、こんにちは。

この本、私も持っています。

ショコラ文化。日本人はこれからですよね。
カルチャーが違う。
食べる量が違う。
板チョコボリボリかじってる人、日本にはあまりいないでしょ。

yk2さん、チョコレート好きなら、ぜひヴァニュルスと一緒に。
大人な楽しみ方です。
病み付きですぞ。(もうご存知かもしれませんが)

チョコレートは太りません。そういう感覚はこちらの方、まったくないみたいです。それだけピュアなカカオのものを食べているからでしょうね。
by farafel (2005-12-11 20:12) 

yk2

farafelさん:
 この本、お持ちでしたか(^^。
ただのグルメ本じゃなくて、フランスの食育の話とか、なかなか興味深い事が綴られていますよね。

>yk2さん、チョコレート好きなら、ぜひヴァニュルスと一緒に

全然ご存じじゃないです(笑)。
今度是非farafelさんのblogで紹介して下さい。出来れば写真入り希望(^^ゞ。

僕は最近は、ぜ~んぜん甘くないチョコを、ノチェロやフランジェリコと言った甘いナッツ系のお酒ちびちびやりながら食べるのが好きだったりしますが、こんなコトしてる人はあんまり居ないでしょう(苦笑)。

最近の日本の高カカオ・チョコ事情の話は長くなっちゃうんで、近いウチにblogに書きたいと思ってます。ちょっとここ半年でだいぶ変わって来てますよ~!。
by yk2 (2005-12-12 21:46) 

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