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ギュスターヴ・モロー展 [ART]

 日曜日、友人に誘われて渋谷のBunkamura/ザ・ミュージアムで催されている「ギュスターヴ・モロー展」へ出掛けて来た(→10/23迄開催)。特にモローが好きなわけでもなく、特別に見たい絵が在るわけでもなく、ましてや彼が属する象徴派に詳しい知識や興味が有るわけでもなく、無い無い尽くしの単なるお付き合いで、だ。

 終了前日に出向いて、大混雑の中散々な目にあった東京都美術館でのミュシャ展以来、半年振りの美術館となる。そしてこの日も展覧会終了1週間前の日曜日だ。また途轍もなく混んでないと好いのだけど・・・、と行く前は少々不安に思っていた。しかし小雨交じりの天候もあってかそれ程の混雑も無く、午後の館内は比較的ゆっくりと鑑賞出来る、人混みが嫌いな僕には丁度有り難い入り具合だった。

 館内での掲示された説明書きを読んで、初めてモローが19世紀の画家だと知る(1826-1898年)。彼の絵から神話、宗教と言った表層的な、全く以て見た目通りのテーマしか思い浮かべる事が出来ないレベルの僕にとって、その画風はもう少し遡った中世的な時代背景を想像させるものだったから。

 僕は無信心なので、宗教色の濃いものや神話をモチーフにした絵があまり好きではない。テーマに対する知識が無いので、少しも感情移入が出来ないから、がその理由。本当に欲するがままの無垢な信心や崇拝から描かれた物なのか、それとも支配的、政治的利用のための偶像を表現するメディアとして「作られた」物なのか、などと穿った心で作品を観てしまい、素直に感動出来ないのだ。

 だから正直に話してしまうと、この日もあくまで友人に付き合って来たのであって、自発的にモローの作品を観に来たわけではない。当然あまり期待もしていなかったし、事前にwebで予習としてチェックした作品にも大して心動かなかった。

 しかしそんな中、唯一この「出現」には実物との出会いを素直に喜べた。この作品は室内の壁や柱などが後から白い絵の具で微細に上書きされていて、神々しい光に照らされる周囲をより幻想的に見せる効果をもたらしているのだが、これは実際に本物を間近で観なければ決してこんなふうに気が付く事は出来なかっただろう。

 何も僕はこのモロー展を観る為に5,000円も10,000円も払ったわけではないのだ。入場料はたったの1.300円。パリのギュスターヴ・モロー美術館まで行くことを思えば、比べる気にもならないくらい気軽で安い。この白い絵の具の使い方1点にこう気付いただけで嬉しくなり、何だかもう全ての元が取れてしまったような気さえして。そう思うと、いつしかどことなくモローの絵にも親しみが湧いて来たようにも感じ始めた。何かに興味を持つようになるきっかけなんて、得てしてこんなふうに些細な事から広がってゆくものだ。

 


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コメント 6

Manbou

新しいブログを開設されていたんですね。おめでとうございます♪
モロー美術館、一度訪ねたことがあります。住んでいた家が美術館として公開されているんですよね。所狭しと並ぶたくさんの絵・・・。
でも閉館ぎりぎりに着いてしまったので、その絵をゆっくり観ることができなくて、記憶にあるのは木の階段だけ。。。
そこが妙に居心地が良く感じられたから、それでいいの・・・って負け惜しみを言ってますけど。^^;

ともかく、実物を見る時に受けるショックというか、パワーというか、本物のチカラって、すごいですよね。
by Manbou (2005-10-22 00:02) 

yk2

Manbouさん:
こちらにも来て下さって嬉しいです~。
でもここは、ホントの気儘なお気楽ブログにするつもりなのでロクなコト書かないと思いますが・・・(^^ゞ。

本物のチカラって、ほんとに凄いと思います。
初めてオルセーに行った時、僕は嬉しくて嬉しくて、不意に目頭が熱くなってしまいました。絵って、絶対にすぐ目の前で本物を観ないとダメですよね。

それにしてもManbouさんは本当にヨーロッパの色々なところを訪れていらっしゃるんですね~。モロー美術館にも行かれてるなんて、さすが!。

僕もいつかアルビのロートレック美術館へ列車旅行したいなぁーなんて思っているんですけど、行けるのはいつのことやら。
by yk2 (2005-10-22 02:55) 

Manbou

ロートレックがお好きなんですね。私はヴァロットンもいいな~と思います。
本物の絵を目指して旅をするのって、ステキですよね。
会えた時の感動は、やっぱり涙もの。記憶の中で輝き続ける瞬間です。
ロートレック美術館へ・・・いつか行けるといいですね。
by Manbou (2005-10-22 23:29) 

yk2

Manbouさん:
 書いてたらとっても長くなりそうなので、ここでお返事させていただく代わりに、知らなかったヴァロットンの名前で膨らませてブログの本編に書いちゃいました。普通にTBするわけでもないので、文中にManbouさんのお名前も登場させちゃってます。事後承諾でごめんなさい(汗)。
by yk2 (2005-10-23 16:51) 

Manbou

・・・あやや・・・(汗)
なんとなくヴァロットンを並べてしまったばかりに・・・でも、ひとつの記事に膨らませていただいたのは光栄です。(*vv*)
けれども、紹介文が私じゃないみたいデス。(汗)(汗)

ヴァロットンは、独特のバランス感覚の持ち主ですよね。
悪くないでしょ?(^-^)
by Manbou (2005-10-26 02:40) 

yk2

Manbouさん:
 以前に、既にヴァロットンの実物に出会っていたんだろうになぁ、という事に気付いたりして何だか勿体ないようななさけないような・・・、もうほんとに苦笑いするしかなかったです~。

 ヴァロットンって、年代で随分とタッチが変化する人みたいで面白いですね。予め聞かされなければ複数の画家の絵を観ているみたい。木版をもっと見てみたいです。
教えて下さってありがとうございました。
by yk2 (2005-10-27 23:41) 

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