「雷神不動北山櫻」 [歌舞伎]
雪の寒い日、新橋演舞場にて歌舞伎鑑賞。
まだまだお正月のおめでたい雰囲気。
演目はこちら、「雷神不動北山櫻」。
海老蔵が五役を務めることでも話題になった舞台。
そのせいか、土日は良い席が取れなかったので、
このあたりで振替休日を取れることを予測し、敢えて平日のチケットを取りました。
物語の舞台は平安時代。
女の子として生まれるはずだった陽成天皇を、戒壇建立の許可と引き換えに、
術力で男の子に変えて産ませた鳴神上人。
しかし朝廷の裏切りで、戒壇建立どころか洛中からも追放された鳴神上人は、
怒りで竜神を封じ込め雨を降らせなくさせ、世は旱魃に襲われます。
苦しむ人々を見、親身になって助けようとするのは、陽成天皇の兄の早雲王子。
善人に見せかけた彼は、実は天皇の座を狙い、徐々に横暴な本性を現します。
雨を降らせようと右往左往する関白基経や文屋豊秀、
陰陽師なのに無類の女好きの安倍清行、
雨乞いに効果のある小野小町の短冊を所持する、小町の末裔・小野春道など、
様々な人々を巻き込み、物語は進行していきます。
物語が複雑ということもあり、上演前に海老蔵が口上を務めます。
複雑…と言えば複雑でしょうが、もっとわかりにくい演目もたくさんある気が…。
しかしこの口上にて、歌舞伎十八番の「鳴神」や「毛抜」、そして「不動」が、
この演目の一部であったことがわかりました。
となると、意外と見どころ満載だったりするんだな、という印象の通り、
五幕の舞台でしたが、どの幕を単独で上演しても良いような、
バラエティに富んだ作りで、おもしろかったです。
海老蔵の役は、鳴神上人、早雲王子、安倍清行、粂寺弾正、そして不動明王。
出演者は他に、基経役に門之助、雲の絶間姫役に芝雀、
巻絹役に笑三郎、豊秀役に段治郎、春道役に友右衛門等々、
派手さは強くないものの、実力派揃いでバランスの取れた舞台となりました。
因みに段治郎好きなので、約1年振りに壮健な姿を見られて嬉しかったです。
3月のスーパー歌舞伎は、右近とダブルキャストで「ヤマトタケル」ですが、
日程の関係で、段治郎の日が取れませんでした…残念…。
しかし、肝心の海老蔵五役ですが、正直なところ、五役やらなくても…と…。
海老蔵で「鳴神」や「毛抜」を見られたのは、経験としては良かったのですが、
ひとつの役にもう少しじっくり取り組んでもらえると、
もっとインパクトも強く、記憶にきちんと残ったのではないかと思います。
正直、早雲なんかは割りと印象が薄いですし。
最後の「不動」に至っては、取って付けたような感もありました。
もちろん、これが最大の見せ場であることは、重々承知の上ですが。
歌舞伎で初めて空中浮揚、という触れ込みでしたが、それも思った程では…。
まあ、こういう演出もありなんだな、という程度で。
ともあれ、総合的にはおもしろく、勧善懲悪に徹する物語展開は分かりやすく、
晴れ晴れと潔く楽しめました。
この日の1階席は、成田山の貸切だったようで、僧侶の方を何名かお見かけしました。
2階には、成田山から不動明王がいらっしゃっていて、
簡単な祭壇の前で手を合わせるお客さんも多かったです。
写真撮影後、私もお参りしました。
昨年のゴールドコースト旅行の前に、折角成田へ行くのだからと、
空港へ行く前に成田山新勝寺へ立ち寄りました。
旅の安全祈願と、お守りを買うため、そして単に行ってみたかったから。
写真はそのときのもの。
境内は思った以上に広く、時間が十分にあるわけではなかった上に、
本堂裏手の成田山公園へ入ったところ迷ってしまい、
建物を見る時間がなくなり、出国前に異様に疲れたのを思い出しました。
そして、成田山は遠い。
わざわざ銀座まで出て来られ、これからまた帰られるとは…。
バスが出ていたようですが、この日のお天気は良くなかったので、
成田から来られたみなさんの道程を、つい心配してしまいました。
(観賞日:2008年1月23日)
海老蔵さんは5役ですか。いつか歌舞伎を、と、おもいつつ、未経験です。詳しい記事で、ありがとうございます。なるほど、予備知識がないと、わかりにくいかもしれませんね。
by pistacci (2008-01-31 00:41)
歌舞伎鑑賞、羨ましいです。
昨年の1月2日に、同じ新橋演舞場で、染五郎主演の「朧の森に棲む鬼」を観たことを思い出しました。
海老蔵は、ストレート芝居も含めてまだ一度も縁がありません。
「ドラクル」もなんだか腰が引けてしまって。
声がとても良いですよね。。。そんな印象が強いです。
by 柴犬陸 (2008-01-31 11:19)
不動明王が浮揚する様子をTVで放映してましたよね。
そのときのインタビューで海老蔵は、いままで歌舞伎を観たことがないような若い人たちにアピールしたいということを言ってました。
海老蔵目当てでも空中浮揚目当てでも とにかく足を運んで欲しいと言うことなのでしょうね。
by バニラ (2008-01-31 18:38)
評判の海老蔵の一人五役ですね!
知り合いの男の人が「僕と同じ年で五役をやるんだから、歌舞伎も
見てみたい」と言っていたので、こういう挑戦は他の人の励みにも
なるんだな~って思いました。バニラさんのコメントに通じるところが
ありますね。
成田山の僧侶さんたちが、、お~目立つからすぐわかりますね。
トップの大入りの酒樽の写真、お祝い気分が出ていていいですね。
by TaekoLovesParis (2008-01-31 22:02)
成田山は 小さいころ行ったことがあるようですが
何せ 記憶が遠いもので 本人(私)はすっかり忘れております
海老蔵さんは 仕事に対する気持ちが
強いというか ストイックというか すごいみたいですね
見て見たい気もするなぁ♪
by (2008-01-31 22:57)
見ごたえありそうですね。
新年のうちに歌舞伎って行った事ないです。
成田山、昔初詣で行ったことがあります。
着物で出かけたので、長い道と階段がきつかった~!
参道のお店を覗くのは楽しいのですけどね。
by (2008-02-01 17:49)
pistacciさま
nice!&コメント、ありがとうございます!
今回の演目はバラエティーに溢れていて、話の流れも分かりやすく、
初めての方にも楽しめたのではないかと思います。
pistacciさんの歌舞伎レビューを読んでみたいので、是非ご観劇下さい!
力のある役者も多いので、楽しんでいただけると思います。
ももかんさま
nice!ありがとうございます!
柴犬陸さま
nice!&コメント、ありがとうございます!
海老蔵の声は、確かによく通ります。
身長もあるので舞台栄えし、現代劇でも違和感ないですね。
「ドラクル」は、舞台の世界観に中々合っていました。
最近は歌舞伎役者でも現代劇に出る役者が多いですので、
海老蔵も今後に期待できそうです。
バニラさま
nice!&コメント、ありがとうございます!
空中浮遊は(飽くまでも私的に)思ったほどではなかったのですが、
歌舞伎を見たことのない方々には、こんな演出もあるんだと、
歌舞伎の楽しさをアピールできる一面になったと思います。
こういったことで、歌舞伎が多くの人たちに浸透すると、嬉しいですね。
Taekoさま
nice!&コメント、ありがとうございます!
同世代の励みになったのは、なるほどと思いました。
どんなきっかけでも、興味を持ってもらえると、ファンとしても嬉しいです。
成田山の僧侶さんは、袈裟が寒そうでしたが、雰囲気出てました。
大入り酒樽は、お正月ならでは、ですね。
みほさま
nice!&コメント、ありがとうございます!
海老蔵は、ワイドショーを賑わすことも多々ありましたが、
根は真面目と思います。仕事への思い入れは結構すごいです。
成田山はこれだけ大きくて有名なのに、遠いですよね。
ずっと行ってみたかったので、今回機会を得、大満足でした。
あやっぴぃさま
nice!&コメント、ありがとうございます!
このところ、1月は必ず歌舞伎座と国立劇場へ行っていましたが、
今年は歌舞伎座はなしです。大分行っていません…。
成田山の初詣、是非行ってみたいです。
確かに階段が多かったので、着物は大変でしたね。
初詣だと、お店も賑わっていて楽しそうですね。
by 雛鳥 (2008-02-02 10:30)
こんばんは。
歌舞伎も少しずつ見ていきたいなぁと思ってるので、
雛鳥さんにオススメを教えて頂きたくなってしまうくらいです♪
今回の演目はとっても見応えがあったようですね^^
海老蔵さんが一人五役!!
それだけでも見てみたいと思わせてくれます。
by rico (2008-02-02 23:49)
いずみさま
nice!ありがとうございます!
ricoさま
nice!&コメント、ありがとうございます!
昨年歌舞伎デビューをされたricoさんには、古典芸能ファンとしては、
今後も見ていただきたいなあというのが、率直な希望です。
今回の演目もそうですが、今まで歌舞伎に接したことのない方でも、
気張らずに見られるような工夫が最近は多く見られるので、
興味を持って下さる方が増えるのは、本当に嬉しいです。
実は最近歌舞伎座へ行っていないので、来月は行こうかなあと画策中です。
by 雛鳥 (2008-02-05 00:04)