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「人間失格」太宰治 [それでもどっこい生きてます]

昔読んだ本を読み返すという習慣がありません。
人によっては気に入った本をそれこそ何十回も読んだりするらしいですが、なぜかそういう習慣がありません。

「人間失格」を読んだのは、高校の時だったと記憶しています。
タイトルにひかれて読んだわけですが、それこそハンマーで殴られたかのような衝撃を受けました。

この本、オレのことを書いている。

本気でそう思いましたし、今回読み返してみても、やっぱりオレのことを書いている、という印象は同じでした。

ただ、その当時読んだ印象では、主人公が小さいころの話が大半を占めていた気がしていたのですが、それは全体でいえば1/4にも満たない部分で、それ以外の大人になってからの酒や女や薬で破滅していく話、世間との折り合いのつかなさでどうしようもなくなっていく部分が、この作品の大部分を占めていたのでした。

後半、世間についての独白が語られるんですが、これが、また強烈。

「世間が許さない」という言い方があるけれども、それはそれを言う人が「世間」の名を借りて自分が押し付けたい価値観を言っているだけじゃないかと、そういう風なことが語られます。

~p101~
(それは世間が、ゆるさない)
(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)
(そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ)
(世間じゃない。あなたでしょう?)
(いまに世間から葬られる)
(世間じゃない。葬るのは、あなたでしょう?)
~~

現代でも、ぜんぜん色あせない「世間」感です。

本当は自分で言いたいことがあるのに、それを「世間」の意見、「みんな」の意見として語り、数のプレッシャーで相手に受け入れさせようとする。

「空気を読んで!」とかいう言い方も同じ根っこがあります。

そんな日本的な「和」の形。
戦前戦後と変わらない、戦争に負けても変わらないこの形。


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コメント 3

山さん

太宰治の人間失格、私も読みましたよ…。
あれは確か、大学時代で、私も読んで「これは自分だ」とか思いました。
ちょうどポスト引きこもりぎみな時期だったせいもあると思うんですが…。(笑)
将来に進むにつれて、現実感は無くなっていきましたが…。(想像性の欠如と言ったところでしょうか)

いい文章っていうのは共感を呼ぶものだとも思うので、こういうマイナスな感じの部分であってもすごい文章なんだろうなと、妙に納得してしまいました。
by 山さん (2006-09-25 21:40) 

ひげたま

なんといいますか、こういう本も世の中に存在しないと、息苦しくてしょうがないと思います。
みんなテレビドラマに出てくるような生き方をしているわけじゃないですし。

吾妻ひでおの「うつうつ日記」はマンガでかわいく書いていますが、中身は超絶悲惨なわけで、そういう意味では現代版の「人間失格」とも言えるかも知れません。
by ひげたま (2006-09-26 03:18) 

suzuran

ひげたまさん、またまた、こんにちは。

>(それは世間が、ゆるさない)
(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)
(そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ)
(世間じゃない。あなたでしょう?)
(いまに世間から葬られる)
(世間じゃない。葬るのは、あなたでしょう?)

たはあ~~!!! ショック!!!
こんなの知りませんでした。ぜひ読みたいと思いました。
ひげたまさんもハンマーでなぐられたような、とおっしゃってましたけど、ちょっと目からうろこかも。
教えてくれて助かります、ありがとうございました。



現代でも、ぜんぜん色あせない「世間」感です。
本当は自分で言いたいことがあるのに、それを「世間」の意見、「みんな」の意見として語り、数のプレッシャーで相手に受け入れさせようとする。
「空気を読んで!」とかいう言い方も同じ根っこがあります。
そんな日本的な「和」の形。
戦前戦後と変わらない、戦争に負けても変わらないこの形。

全くですね、私が長年言いたかったことが簡潔に表現されているようでした。
考えてみれば、日本人はこういう形でバランスをとろうとしてきた、のでしょうか。地方では「世間」が王様のように闊歩している気がします。はみ出し者、風変わりな人、を自然消滅させるような「精神的しくみ」が存在していそうです。みんな平均的「金太郎飴」を目指す社会、なんでしょうか。
by suzuran (2006-09-30 16:18) 

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