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再会 [Seasons]

金曜日の留守中に、一本の電話があった。
「キャンセルが出ましたので、明日講座にお越し頂けるようになりました。」

ガーデナーは一週間前に、思い出したように宝塚ガーデンフィールズにガーデニング講座の申し込みをしていた。去年受講してた時は少人数でこじんまりとしていたが、今年は大人気らしい。すでに三人のキャンセル待ちと言われた時点で、諦めていた。

しかし雨の予報が幸いしたのか、前日に急遽行ける事になった。朝9時半からの開始と早いのだが、喜びいさんで出かける。心配した天気も、どうやら晴れそうだ。

まだ開園前のシーズンズ"Seasons"。http://www.gardenfields.jp/seasons_route.htm講義のあるサマーハウスではなく、真っ先に向かったのは、シークレット・ローズ・ガーデン。誰もいないうちに写真を撮ろうと足を踏み入れると、もう誰かがしゃがんで一眼レフカメラを構えている。びっくりしてると、立ち上がった人に見覚えがあった。約半年ぶりに再会する恩師、ポール・スミザーさんだった。

一言二言挨拶をかわす。「今年は雨ばかりだからね、皆遅いね」と恩師。確かに去年の今頃と比べると、まだバラは満開とまではいかない。見頃は来週ぐらいだろうか。

さて、今日の講座内容はつる植物の仕立てについて。去年ご一緒した人達との再会を喜ぶ。それにしても、すごい人数。今年の講座は満員御礼だ。

森の木の話から、植物の芽を出す習性に話が及び、つる植物や木を仕立てる際は、横に倒す事が重要だという今日の本題にに移っていく。その講義が飽きないのは、ポールさんの茶目っけたっぷりな語り口が、スパイスのように効いているからだ。

「芽の先端に部長がいてね、この部長がいなくなったら、あとの主任とか課長とか、今まで楽してた人達が頑張らないといけなくなるから」、成長点である先端の芽がなくなると、脇芽が伸びてくるのだ。木をエスパリエと言って、壁に仕立てる時もこの特性を活かす。

一通り講義が終わると、ガーデンウォーク。実際の庭を見ながら、ポールさんが解説していく。幸い、晴れ間も見えて暑いぐらいだ。サマーハウスを出てすぐに満開のテイカカズラ。ほのかに甘い香りが漂う。

ここで懸案の成長の悪いテイカカズラ(写真上段左)について、早速聞いてみる。最初は根を大きくするとよいとの事。そのうち伸びてきた元気そうな枝を、麻ひもでくくり誘引する。テイカカズラは巻き付いて伸びて行く事もできるし、気根も出るので勝手にくっついて伸びてもいく。万遍なく花が欲しい場合は、できるだけ遠回りさせて誘引することが大切だそうだ。

ジャスミン(写真↑下段中央)、ブラックベリーのつる植物と回り、低木のフイリタニウツギ(写真左)もつるのように仕立てられるという話に移る。トサミズキもエスパリエに向いているそうだ。そして、テレビでも紹介されている黄金アカシアのアーチ(写真中、右)。短い枝を冬に切り戻す。またワイヤーの10cm下ぐらいで切ると、枝が2本出てくるので、すぐ上のワイヤーに誘引しやすいそうだ。夏咲きのクレマチスも冬に切り戻すので、一緒に植栽すると相性がいいそうだ。

そしてつるバラの話。壁にドリルで穴を開け、ねじを打ち込み、ワイヤーを通している事の紹介。トレリスはすぐ腐ってしまったりするので、一番ワイヤーがいいそうだ。でもさすがに「花園」でやる訳にはいかない。つるの仕立てと同じ原理を使う、ベギング・ダウンpegging downの紹介。ロサ・ガリカ・ベルシコロールの枝を倒して、地面に立てた杭に結びつける方法だ(写真左)。倒した枝の側面から新芽が上がるので、花付きがよくなる。通常の木立に剪定するよりも、4倍の花がつくそうだ。倒れてきやすいシャポー・ドゥ・ナポレオンも、支柱に巻き付ける形で仕立てられている(写真右)。

面白かったのは、イチジクのエスパリエ。イギリスでは気候の関係で、日本の様に放っておいては果実がならない。壁に仕立てて、壁の余熱を利用し、果実を栽培するこのエスパリエという手法が発達したのだそうだ。場所をとらなくて済むので、狭い庭には有効だ。

ガーデンウォークが終わり、サマーハウスに戻り、質問の時間があって、めでたく講座は終了。この後午後からも、庭の手入れでポールさんは残るので、見かけたらまた質問して下さいとの事だった。ポールさんと写真を撮ったり、世間話をして、いったん解散する。

相棒maruがもう庭園に到着していて、写真を撮っていた。一緒に美味しい中華料理を食べ、午後に庭園に再入場する。風は強いが、久々に見る青空だ。

ローズ・ガーデンを撮ろうと思い向かうが、途中で傘を忘れた事に気づき、maruと分かれ、サマーハウスに向かう。その帰りに黄金アカシアのアーチをくぐると、本物のガーデナーさん達に指示をしているポールさんに会う。そうだ、ひとつ聞き忘れていた事がある。「ポールさん、本はいつ出るんですか?」

周りのスタッフ共々、一瞬の沈黙。どうも禁断の質問だったらしい。一生懸命経緯を説明してくれるポールさん。要約すると、出版社の講談社と侃々諤々話し合った結果、構成を変えてやり直しているので、現在の所、「9月の予定ね。9月じゃなくてね。9月の予定で。」と言う、また茶目っ気たっぷりのお返事だった。

その後園内をぶらぶらと写真を撮っていたガーデナー。もうメモリカードが一杯になった時にスタッフの方が、声をかけて来られた。川の所で砂利を入れる作業しているので、よろしくければ手伝って頂けませんかとのお誘い。よく講座のあと、ポールさんが作業をしている時に受講生が手伝ったりする事がある。あと30分ぐらいでもよければ、とガーデナーは快諾して、早速作業場へ。

ポールさんの要望は、池に流れる川に、砂利を敷いて、自然に水を濾過しようと言うものだった。岩や流木もあるが、自然な川のように配置していく。長靴を借りて、本物のガーデナーさん達と作業するガーデナー。結構子供時代に川で遊んだように楽しい。たまにこうして手伝うのは楽しめるが、職業にするのは大変だなと思う瞬間でもある。

この機会に色んな質問をスタッフさんにしてみたりする。「年間パスはないんですか?」どうせ月一回は来るつもりなので、と言うと、今は計画だけでまだないとの事。このやりとりを聞いていたポールさんがすかさず「そんな事言ってたら、ここのスタッフになっちゃうぞ。」と合いの手を入れる。

楽しく作業しているうちに、そろそろ相棒と約束していた時間になった。まだ作業を続けているスタッフの方とポールさんに別れを告げる。「9月に本が出たら、買いますからね。」「そうそう、僕が老後、楽をするためにね。」苦笑いをするポールさん。

久々の楽しい時間に、例の植栽で悩んでいたガーデナーも前向きになる。帰ったら、講義メモと写真を振り返ろう。そして、また近いうちにバラを見にこようと、ガーデナーは計画を練り始めた。


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絵瑠

充実の一日を過ごされましたね。せりさんはお写真も文章も
お上手なので講座やお手伝いを御一緒に体験できたかのように
思え、至福の時を過ごさせて頂きました。有難う御座います。
by 絵瑠 (2006-05-21 10:50) 

Riyo-Lyon

こんなステキな庭園が、宝塚にあるんですね!!
あ~~、行ってみたいです・・・
キュー・ガーデンから移植された植物もあるって事なので・・・あたし、ロンドンに3回行ってるんですが、3回ともキュー・ガーデンに行きました♡
植物が溢れて、ベンチがところどころにあって、花を愛でる環境・・・いいですよね☆
ロンドンよりも近い宝塚(笑)!! いつか必ず行きたい!!
せりさんも研究熱心な方なんですね! 頑張れ~~(^▽^*)
by Riyo-Lyon (2006-05-21 12:28) 

あ~うらやましい。。。
つる植物の講座、受けたいです!ほんとにいいですねぇ近くにこんなステキな場所があるなんて☆
by (2006-05-21 12:39) 

チョコまる

楽しい週末だったみたいですね。
いちじくが手すりからポコポコ生えているみたいで、たしかに面白い仕立て方をするんですね。
by チョコまる (2006-05-21 16:42) 

無事講座に出られてよかったですね、いつも
勉強をされてていて頭が下がります。
by (2006-05-21 18:28) 

アンジェラス

今回の記事は、かなりの力作。。。じっくり読まさせて頂きました。
植物の手入れって、本当に大変なんですね!
いつも見るだけの身としては、ただただ脱帽です (^^ゞ
by アンジェラス (2006-05-21 19:04) 

いむら@fintopo

お~、うらやましい話が満載です。再開が劇的ですね。
本を書くのって大変なんだろうなぁ。せりさんに聞いてから、私も楽しみにしてますが、遅くなってもいいから満足のいくものを出してもらいたいです。
by いむら@fintopo (2006-05-21 20:35) 

ご心配、かけました。
いい庭園ですね。
by (2006-05-21 21:03) 

こんばんは。私も絵瑠さんと同じ気持ちを味わうことができました。まるで一冊の本を読んでいるようでした。それに画像もあって・・五月晴れの下で気持ちよくお仕事?を進めているせりさんを創造していました。変換ミス?
by (2006-05-21 22:25) 

せり

 >皆さんへ、ご訪問&コメント有り難うございます。

*絵瑠さんへ
いつも言葉足らずなんですが、講座の雰囲気が少しでも伝わったのなら、嬉しいです。たまにガーデニング仲間に会って、講座を受けたりすると、刺激になっていいですね。実践はやっぱり難しいですけれどね^ ^;

*Riyo-Lyonさんへ
キュー・ガーデンに三回も行かれているんですか?羨ましすぎです。移植されたかどうかは知らないのですが、キュー・ランブラーの事でしょうか?そのオールドローズなら、池の回りのバーゴラにありますよ。遅咲きなので、まだお花は見た事がありません。いわゆる英国風で、芝生があって、刈り込みがあるっていう庭園ではなく、自然な植栽のビオトープに近いかもしれません。ロンドンもずっと前に行ったきりなので、また勉強してから行くと見る目が違うだろうなと思います。

*ゆっちょすさんへ
庭園は年々よくなって来ていると思います。開園当初はなんだと思っていた、あさはかさが恨めしい。たまに講座を受けると刺激になっていいですね。去年は定期的に行っていたので、今年はたまに行こうかなと思っているのですが、テーマは一緒でも話が違っていて新鮮です。覚えてないだけでしょうか??

*チョコまるさんへ
日本では放っといても果実ができるので、あのように果樹を壁に這わせるやり方は、わざわざやりませんよね。イギリスだと、リンゴとかミカンもあのように仕立てるそうですよ。イチジクの実のなり方も面白いので、確かに手すりになっているみたいですね。日本だと陽当たりがよすぎる所にはやらない方がいいような気もします。イチジクは、木陰の奥まった所に仕立ててありました。

*g_gさんへ
独学がちゃんとできないので、たまに講座を受けに行って刺激をもらってくるという感じです。でもあんまり色んな講師の方の話を聞くと混乱しそうなので、ポールさんを師匠にする事に勝手に決めています(苦笑)。園芸書を見ても、混乱していますからね。諦めていたので、行けてよかったです。

*アンジェラスさんへ
まとまりのない長文を読んで頂いたなんて、感激です。手入れをやり出すと、そっちに夢中になってしまい、ちゃんと写真を撮って、ゆっくり愛でる事を忘れてしまいますね。庭の写真も撮ったのですが、植栽を中心に撮っていたら、何を撮っているのかわからない写真ばかりになってしまいました。難しいですね。

*いむらさんへ
本の話は、いむらさんにお伝えしたいなと思っていました。内容は一旦出版社に出したらしいです。でもその後写真を中心にするんじゃなくて、もっと文章を載せたいと言うポールさんの意向に沿った形にするべく、遅れているという現状らしいです。私も無理せず、納得の行くものを出して欲しいなあと思います。

*こうちゃんさんへ
もうよくなられましたか?ご無理なさらないで下さいね。いつもまとまりのないブログなので、こうちゃんさんの様にかっこ良く、すっきりとさせたいものです。でも無理かな〜^ ^;ぼちぼちやって行きますので、気が向いたら、ふらっと覗いてやって下さいませ。

*しゅうさんへ
まとまりがないので長編になってしまいました。でもこれでも、短くした方なんです。自分の記録用に書いているので、他の方はさぞかし読みにくいだろうなぁ〜と思います。読んで頂き有り難うございます。午後からは暑くなったので、水遊び気分でした。以前は池に入って、水草をとったり、睡蓮の肥料をあげたりした事もあります。少しだけ本当のガーデナー気分が味わえます^ ^創造(?)していただけましたか?
by せり (2006-05-22 10:25) 

せり

>春分さんへ こんにちわ!nice!有り難うございます!
by せり (2006-05-22 10:26) 

achami

私が先日行った群馬のガーデンでも、素敵なアイディアタップリのお庭でした。
ま、自分の所では到底生かせないですけどね^^;;
そうそう、バラが満開ではなかったのが、残念でした・・・。
by achami (2006-05-22 11:57) 

MISAKO

こんにちは。京都のMISAKOです。

この間は久し振りにお会い出来てうれしかったです♪
遅くなりましたが、遊びに来ました!!

写真素敵ですね~。
この間の宝塚の話も、うんうんって思いながら読ませていただきました。
ご自宅のお庭もきれいにお花たくさん咲かせて
いらっしゃるみたいで、またいつか遊びに行かせて下さいね☆

ポール先生の授業はいつ行ってもとても勉強になり、
いく度に植物っていいもんだなぁ~庭造りをまたがんばろう!!
と気合が(しばらく)入るのでかなり満足出来ますよね♪
しかも、こうやって授業風景をちゃんと残していただくと、
より気分が持続しますよね。

そうそう、私、早速テイカヅラも買いに走ったのですが、
まだゲットならずなんです。
もう今の時期じゃ遅いのかしら。
どこかでみつけて、壁にはせたいなと思っているのですが・・・。

長くなりましたが、これからも楽しい情報楽しみにして、
ブログに遊びに来ますね!!
&一度植物園もご一緒しましょう♪
またご連絡しますね!!
by MISAKO (2006-05-22 20:14) 

ゆうこ

せりさん、ポールさんと再会できて良かったね♪
ポール・スミザーさん直にいろいろ教えてもらえるなんて、羨ましいっ。
壁にワイヤーを張る方法、教えてもらいたいわぁ・・・。
写真もとても素敵。宝塚ガーデンフィールズは花盛りなのね((´I `*))♪ 
by ゆうこ (2006-05-22 23:45) 

せり

>皆さんへ、ご訪問&コメント有り難うございます。

*achamiさんへ
achamiさんが行かれた庭園は、前にHPを見た事があって、いいなぁ〜、遠いなぁ〜と思った覚えがある所です。その後すっかり忘れていましたが、achamiさんの御陰でお花を拝見する事ができました。バラが満開だったら、、、、。もう一度行きましょう!!^ ^

*MISAKOさんへ
早速のご訪問有り難う!別便でまた写真を送りますね。去年も受講したはずなんですが、目からウロコの話がいつもあるような気がします。ポールさんの引き出しが豊富なんでしょうね。MISAKOさんのお庭も素敵に変身していそうで、楽しみです。是非植物園ツアーを実行しましょう。またよろしければ、ブログも覗きに来てやって下さい。

*ゆうこさんへ
いつもポールさんに会うと、刺激を受けて帰ってきます。去年もこれが楽しくて、頑張って通っていたのだなと感覚を思い出す事ができました。ワイヤーはすぐ自分で出来るって、聞いたのですが、ドリルで穴を開けるのが大変でしょうか。材料はボルトとワイヤーロープだけです。一番下は地上から40cmの所に張り、後は20〜30cm間隔で張るそうです。お父様に頼んでみてはいかがですか??
by せり (2006-05-23 07:28) 

アッキー

充実した1日でしたね
蔓物はすぐに上に上げてしまうと
下の方に花が来ないですよね
講習も充実したみたいで (^。^)
by アッキー (2006-05-23 18:01) 

せり

>アッキーさんへ
刺激を受けた、とても楽しい一日でしたよ^ ^おっしゃる通り、つるは、すぐ大きくなって欲しいと、まっすぐに誘引するのではなく、横に倒すか、できるだけ遠回りさせなさいと言うのがポイントでした。記事を書いてて、復習になりました。テイカカズラを誘引するのは、いつの事やら、、、。ご訪問&コメント有り難うございます。
by せり (2006-05-24 18:21) 

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