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議論白熱! 兵弁シンポ「語り合おう憲法~9条と自衛隊・イラク戦争」 [法律案内]

 9月20日,兵庫県弁護士会館で,上記集会を行いました。

 私は,今回のイベントの主担当だったので,今かなりほーっとしているのと,そのために圧迫している弁護士業務に追われていますが,鉄は熱いうちに簡単に報告させていただこうと思います。

 弁護士会では,憲法は,国の基本を定め,また国民の人権と自由を保障し,人ひとりひとりがかけがえのない存在として尊重される社会を作るためになくてはならないものだけど,戦後60年たっても憲法の中身や憲法に関する議論はなかなか馴染みにくいものであり続ける現状のなかで,ちょっとでも,憲法を身近に語り合い考える機会を作りたいとおもって企画した集会です。

 今回は,3つの柱がありました。

1 憲法作文コンクール 優秀作品発表・表彰

 子どもの部と大人の部にわけて,憲法に関する作文を募集しました。多数の応募があり,そのなかから,各部,最優秀賞と優秀賞を選出し,当日表彰と作品の展示を行いました。

 優秀作品は,今後(まだですが)兵庫県弁護士会HPhttp://www.hyogoben.or.jp/index.htmlにて紹介していきます。

2 DVD「イラク・戦場からの告発」 (イラクの子どもを救う会 西谷文和さん 取材・編集)

 イラクでの戦争被害の生々しい映像をみました。普通にマスコミ等ではなかなか報じられませんが,地雷や劣化ウラン弾によって,人間の体がとりかえしのつかないダメージを受けている映像でした。みるもつらい映像であり,特に子どもの被害は悲惨でした。

 劣化ウラン弾による癌発症により,取材当時の映像の子は,今は既に亡くなっているなど,人ひとりの存在を戦争によってむちゃくちゃにしてしまうことが,とても恐ろしいと感じました。

3 パネルディスカッション「9条,自衛隊,イラク戦争」

 それぞれ考え方,立場のちがう3名のパネリストの方をお招きして,パネルディスカッションをやりました。コーディネーターは私。

 まとめ役の私も,どうまとめていいかたじたじの,中身の濃い大激論でした。

 改憲論の徳永信一弁護士は,「憲法9条の非武装平和の理想は,戦後まもなく,米ソ対立のなかで,政府の解釈等によって,さまざまな嘘や誤魔化しで失われてしまっている。そのことを見つめ直し,また,一定の武力の必要はあるから,憲法を変えなければならない。また,国際平和貢献のために日本も他国と同様『汗を流す』ことができる状態にするため,集団的自衛権行使もできるようにしなければならない。」と述べます。

 護憲論の井上正信弁護士は,「現実に,9条の海外での武力行使を禁じる規範としての力は生きている軍事力による安全保障では真の安全は得られない。集団的自衛権行使は,国際法違反の戦争を引き起こす米国と一緒になって戦争することにつながる日本の安全と世界平和を実現していくためには,国際社会に法の支配とそれを保障する地域機構を作る途をすすむべきであり,現在の国際社会の流れからしても,それを可能とする条件は存在している。」と述べます。

 平和学の奥本京子準教授は,憲法9条を支持する旨を述べつつ,「これまで,憲法9条の議論も,政治家や学者や法律家などの一部専門家のものでしかなく,国民のものではなかった。また,平和は『守る』ものではなく『創る』ものだ。憲法9条が平和の文化を育む上で役立ってきた事実はある。だが,『何もしない平和主義』ではなく『する』平和主義はまだまだできていない紛争を武力ではなく対話等によって転換していくことについての,あらゆる試み・またそういった手法の教育などをやっていくことが必要で,その様な平和的手段は今一般的に知られている以上の可能性・力を持っている。」と,自身や活動仲間の実践例をまじえて報告されました。

 これを,約2時間半にわたって,「9条が戦後日本の平和に果たした役割」「自衛隊は違憲か?」「イラク戦争とイラクへの自衛隊派遣」「集団的自衛権行使,日米関係と国際平和」などのテーマごとに,激論をやりました。

 特に,井上さんと徳永さんの間では各論点について対立する部分の核心に迫る議論がなされていました。一方,奥本さんの発言は,理論面での多様な立場の存在は認めつつ,自身の活動のなかで言えること,視点を提供してくださるものでした。

 

 コーディネーターの私としては,ほとんどただ聞いているより他なく,何のまとめ役にもならなかったのですが,前の記事で私が述べていた護憲論者・改憲論者に聞いてみたいポイントは聞けました。

 

村上「自衛隊の存在がある中で,スッキリしない9条。このままでよいの?自衛隊はどうするの?」

→ 井上さん「自衛隊は違憲。このままでは良くない。確かに,即解散することは多くの国民も望んでいないし現実ではない。だが,自衛隊を『戦力』でなくすことができる国際的な条件(平和構築,国際的安全保障体制,国際的な法の支配の確立など)を整え,違憲状態を解消するようにしてゆかねばならない。」

 

村上「集団的自衛権を認めるとして,9条を変えるとして,アメリカ追従が進むのではないの?大丈夫なの?それがいいことなの?」

→ 徳永さん「アメリカのイラク戦争は間違いだ。アメリカを信用できないという気持ちを持っている。9条を変え自国の軍を持つことにより安全保障をアメリカにたよらなくて済めば,イラク開戦前のフランスのように,アメリカにノーを言うこともできるはずだ。集団的自衛権行使にしても,実際に行使するかどうかは日本自身が自分の意思で決定してゆけばよいのだが,ともかく外交戦略上使える選択肢を増やすことはいいことだ。国際紛争があるとして『憲法でできないから軍を出さない』と言うのではなくて,『自分の判断として軍を出さない』と言うようにならなくてはならない。」

 

 また,会場に質問要旨を配って,質問・御意見を書いていただきました。

 多くの質問等をいただきましたが,時間の関係で,少ししか紹介することが出来ませんでした。

 その中では「核兵器を日本が持つことについてどう考えるか?」等の質問があり,それをきっかけに,またも中身の濃い議論がなされました。

 憲法9条という濃いテーマについて,改憲論と護憲論のそれぞれの立場の人が,ちゃんと議論のルールを守りながら,内容について相手の意見に賛同できるところは認めつつ,自分はなぜ相手と違う発想をするかを精密に議論されていたとおもいます。

 その先自分はどう考えるか?は皆それぞれにあるだろうし,多分これから色んなことを勉強する中で,深め,自分なりのそのときそのときの結論を持っていくのだろう,と思います。

 聞いていて,各論点で「私の意見はこの人に近いなあ~」というのはあるものの,3名の方とも,憲法9条,戦争と平和の問題に真剣に直面し,真にそれを国民の議論にしなければならないという真剣な思いを体現して下さったと思い,企画者・コーディネーターとして感謝にたえません。

 また会場に来てくださった皆さんもありがとうございました。

 

 憲法9条をどうするか,戦争と平和の問題にどう向き合っていくか,ということが,意見の違うもの同士でも,話題を避けたり,だまっちゃわずに,家庭でも酒場でも,またネット上でも(紳士的な議論のルールの中で),「相手を言い負かす」とかそういう視点ではなく,私たちがこれからいかに生きていくべきかということの知恵を互いに高め合う,という気持ちでなされていくようになればいいな,と思います。

註・・・パネルディスカッションのなかの,各パネリストの皆様の発言は,正確な録音反訳等によるものではなく,村上の聴き取りで,村上の理解するところ・記憶するところに従っていますので,不正確な点があるかもしれません。いち早くの報告ということで,どうかご容赦願えればと思います。


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コメント 6

心如

お互いに、まず相手の考えを理解し、自分の考えと同じ点と違う点を整理しながら議論することは、大変有意義なことだと思います
相手の考えを理解しなければ、反論も的外れになりますので…
by 心如 (2007-10-23 21:04) 

ayu15

お疲れ様でした。有意義だったんですね。

中村哲さんが軍事的でなく、民間で水の復興支援しています。来月講演あります。
by ayu15 (2007-10-24 10:08) 

 お疲れさまでした。
 
 この文面からの様子だと、続編や続々編が欲しくなってきますね。
by (2007-10-24 19:00) 

hm

小父蔵さん

 おっしゃるとおりです。
 憲法9条となると,ネット上などでも議論らしきものはあるのですが,残念ながら,相手の意見をねじまげたり,揚げ足取りだったり,また「言い負かす」ということばかりに熱心だったりするものが多いように感じていました。
 両論が意見を,議論のルールを守って話し合う場は,たとえばテレビ番組などではときどきありますが,時間の制約もあって消化不良ですね。
 こういう試みももっとなされていけば,と思っています。


ayuさん

 ありがとうございます。
 上記の奥本先生の発言にもあるように,非暴力の平和貢献について,私たち一人一人が学んでいかねばなりませんね。
 奥本先生は,「『平和』を創る営みは,たくさんなされているが,マスコミとしてはニュース価値がないと考えがちで,あまり報じられない。知られない。」ということを言われていました。


shiraさん

 本当にそうで,時間がもっとあったらなあ…でした。
 各論点について,この続きをつっこめたら…というところも多いのですが,まあ,これを機会に,現実の私たちの進み方・生き方(戦争との向き合い方)を多面的に考えてみたい,と思いますね。
by hm (2007-10-25 10:24) 

ayu15

中村さんのような地道な民間国際貢献はなかなか日の目みないようですね。
小さい政府ねざしたいなら、エコでない国営無料ガスステーションやめて、中村さんのような民間にまかせてそれを援助するのも選択にいれても・・?
by ayu15 (2007-10-26 15:40) 

hm

AYUさん

 うまいこと言いますね~ ほんとそうですね。人と地球に優しい「小さい政府」でいいとおもいますね。
by hm (2007-10-26 21:24) 

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