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民主党に対し意見書を出しました~教育基本法案について [だから,今日より明日(教育)]

 参院選で,参議院第一党になった民主党に対し,私を含む弁護士13名で「意見及び提言」を出しました。今日,小沢代表,菅,鳩山氏ら執行部および参院民主党議員全員に郵送で送付しました。

私たちは,意見書を,

 安倍「教育再生」とは全く違う発想で,もっと現場が豊かになる,真に子どもたち一人一人のための教育を目指して,みんなが明日に希望が持てる教育の理念を打ちたてよう

 そのために,民主党には,昨年作った「日本国教育基本法案」をそのまま提出するのではなく,もう一度しっかり議論して,「日本を愛する心を涵養する」という文言などを見直し,「教育の自主性・独立性」をもっとハッキリと法律に書くという修正をしてほしい

という考えで作りました。

 内容は,昨年改正後の教育基本法および民主党が提出してきた日本国教育基本法案の両方に見られるいわゆる「愛国心」をうたう文言の見直し等を求めるとともに,一方,民主党法案のなかの「学ぶ権利」「教育予算確保」「幼児教育・高等教育の無償化」等の規定については実現を強く求めるものです。

 教育基本法「改正」の昨年国会で,民主党の対応は,最後は強行採決に強く反対し国民的な論議を深めるように主張するなど,奮闘したといえる部分もありました。

 ですが,民主党自身が出した「日本国教育基本法案」は非常に残念な部分がありました。

 この法案は,前文に「日本を愛する心を涵養」「美しいものを美しいと感ずる心」とうたい,それを新聞などで知らされた私たちとしては「なんや,『美しい国』の政府と同じような法案を出しとるやん。」としか思えなかったからです。

 でも,もっともっと私が残念に思ったのは,私が民主党の法案を真面目に読んでみると,

・ 子どもを主体にして「学ぶ権利の保障」という学習権概念を盛り込む(「教育権」という大人目線だけではありません)

・ 教育予算を確保することを国にしっかりと命令する

・ 幼児教育・高等教育の無償化をすすめる努力規定を新設する

など良い点があり,これらの点は,教育基本法「改正」反対論者の広田照幸教授(日大,教育社会学 http://blog.so-net.ne.jp/h-m-d/2007-07-19)も国会の参考人質疑で大いに評価しておられたのに…という点でした。

 つまり,昨年の教育国会では,

 民主党は,教育を良くする原点(子どもの目線に立つ,予算確保,お金が無くても教育が受けられる仕組み…)をちゃんと法文に盛り込んだのに,「日本を愛する心」等と与党が言っていることに同調するような文言を置いてしまったために,そっちしか伝わらず,国民に教育改革において一番大事なことをアピールできずに終わってしまったように思えてならない。 

 これが本当に残念でした。私としては,党としての方針の失敗だったのではないか,とすら思います。 

 

 民主党の多くのみなさんも,当時は迷いがあったとしても,今ならきっとお分かりになると思います。

 国民が最大野党である民主党に望んでいるのは,与党らと同じ路線を競うことではなくて,

「意見の分かれる重要な問題について国民に選択肢をきちっと示す」

そんな役割ではないか,と思います。

 教育改革においては,

国家主導 , 多少強制の要素があったとしても「徳目」のある態度をビシッと躾けていく  

がいいか,

現場中心 , 物心ともに,豊かなおおらかな現場で,子どもたち一人一人の学び,育ちを応援する

がいいか,という根本的な在り方について,国民に分かりやすく選択肢を明示する法案を作って欲しかったし,これからは必ずそうして欲しい,と思います。「二大政党制」により政権交代と民意の反映を実現するというのならば,きちっと対立軸を国民の前にハッキリさせなくてはならないでしょう。

 

 今後,民主党が提出する法案は先に参院に提出される可能性が高いと思われることから,まずは,参院民主党に焦点を絞って提出しました。

 提出した弁護士有志の考えは,「民主党の法案について,見直すべき部分を見直せば,改正後の教育基本法や政府主導の『教育再生』のような国家指導型ではなく,十分な教育予算・条件のもとに真に教育現場を豊かなものにする理念をうたった現代に相応しい進歩的な教育基本法を作ることが出来るのではないか。」というものです。

 また,私の考えでは,そうすれば,党派を超えて,少なくとも,去年の教基法「改正」をやった張本人である与党以外は(つまり,民主党も,社民党も,共産党も,国民新党も,新党日本も,無所属も),誰でも賛成できるものになるのではないか,と思っています。(本心では,公明党も,自民党内でも一定数の人が賛成するような法案になるのではないか,と思います。)

 そして,教育現場の先生方,子を持つ保護者のみなさん,教育に関する専門家(学者など),法律家の多くの方が,一致して賛成できるようになるのではないか,と思います。

 日本国憲法1947年に出来た教育基本法,その後にできた子どもの権利条約などの理念をきちっと盛り込み,現場が活き活きと自由な創意工夫に満ちて,豊かな子どもたちの学びが自然なかたちで育ってゆくことを社会が助ける「教育理念」法。できたらいいとおもいませんか?

 民主党は,「生活が第一」を掲げて多数を取られたのですから,子どもたちの学校生活がこんな風に豊かになるように,さらなる知恵を絞って,これからは「本当に実現させてゆく」ことこそ,「政権担当能力を示す」ということになるはずだ,と私は考え,大いに期待し,大いに「注文」し,大いにエールをおくりたいと思っています。

 参院選で大勝した民主党はそれだけ国民の期待を受けており,それ相応の責任があり,私たち弁護士も,今後,民主党に対して,責任ある政党としての活動を求めることの一環,とりわけ,私たちの未来を切りひらく子どもたちのことに責任を持って積極的に取り組んでもらいたい,という一念です。
 
 次の日記http://blog.so-net.ne.jp/h-m-d/2007-08-22-1に,私たちの意見書全文を掲載します。

 ハッキリ言って非常に長いですが,関心のある方はざあっとでも読んでいただき,御意見・御感想等あれば何なりと,コメント欄なり,私宛 murakami@kobeseaside-lawoffice.com までお寄せいただければ,と思います。(もちろんご批判も結構です。但し,政治的話題は加熱しがちなので,コメント欄で,私に対するものは何でもOKですが,コメント者同士の加熱した議論・攻撃的な批判等はご遠慮くださいね。)

 意見書を出すだけでなく,議員さんへの要請活動もやっていきたいと思います。

 もし,賛同して下さる方がたくさんおられるならば,そのことも民主党の議員事務所にきっちり伝えたいと思っています。

 


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ayu15

この前の広田さんの続編です。http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20070710/129539/
by ayu15 (2007-08-23 20:19) 

村野瀬玲奈

こんにちは。「村野瀬玲奈の秘書課広報室」というブログをやっておりまして、津久井進先生とはブログ上で交流させていただいております。

教育の場で民主主義を具体化するためのこのような取り組みが地方の弁護士有志によっておこなわれていることをとてもうれしく思い、賛同のエールを送ります。

さらに民主党にはたらきかけることが必要なのでしょうけど、民主党は自民党と比べて聞く耳を持っていることを期待します。

今後もまた寄らせていただきます。よろしくお願いいたします。
by 村野瀬玲奈 (2007-08-24 12:31) 

hm

ayuさん

 情報ありがとうございます。
 広田さんは,本当に冷静で説得力のある論説をされますね。
 教育を「熱く」語ることも良いことだと思いますが,つい,教育って,個人の成功体験とか自慢とかに基づいて語られがちなので,広田先生のような姿勢で語る人の言葉にはよくミミを傾ける必要があると思います。


村野瀬玲奈さん

 賛同ありがとうございます。
 (実はすでに何回か)秘書課広報室,拝見させていただいております。
 民主党の皆さんに,(教育再生会議の一部論者のように)教育を「思いこみ」で語るのではなく,教育現場を「生活」の場として捉えて「生活が第一」の教育施策を考えてもらえるように,さらに働きかけたいと思います。
 
by hm (2007-08-27 13:41) 

おおくにあきこ

はじめまして、村上さん。
「学ぶことは心に翼をもつこと。」プロジェクトのおおくにと申します。
教育基本法の再改訂のアクションに敬意を表し、賛同いたします!
10年もすれば、教育基本法改訂に抵抗した人たちがたくさんいたことも忘れられてしまうのだろうか、と嘆いていました。でも、まだまだ気骨ある教育者や教育者になろうとしている人たちがいることも確かであると思っていました。
そして、法に携わる人たちから、このような声が発せられたこと、とても心づよく思います。
この動きを広めることができたらと思います!
by おおくにあきこ (2007-08-28 23:02) 

hm

おおくにさん

 賛同ありがとうございます。
 確か 津久井先生かmaiさんのページから,おおくにさんのページに飛んで御邪魔させてもらったことがあります。

>10年もすれば、教育基本法改訂に抵抗した人たちがたくさんいたことも>忘れられてしまうのだろうか、と嘆いていました。

 同じ考えでした。
 教育,というより,子どもたちの学びの本質や,それと社会の関わり方について,せっかくみんなが真剣に考えたのですから,その機運が残っているうちにちょっとでも良い方向にしていきたい,という考えです。

>この動きを広めることができたらと思います!

 今細々ながら,何とか,党の人たちに意見陳情活動をしようとしているところです。
 
 私たちの意見書の通りでなくても良いと思いますが,とにかく,民主党(党本部でも地方議員でも何でもいいと思います)に「憲法,子ども権利条約,旧基本法の精神を反映した教育基本法案に練り直してください」という声をあちこちから伝えることは意味がある,と思っています。
by hm (2007-08-29 10:07) 

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