先物取引被害事件とは? [消費者事件]
私のブログや事務所のHPを見て下さる方は,次の情報を得られます。
どうやら村上という弁護士は,神戸先物取引被害研究会(実は,神戸先物証券被害研究会と4月に名称変更しましたが,HPは未改訂です)のメンバーであり,さらには,どうやら事務局もやっているようだ…
ですが,「先物取引って何?」「取引の何が『被害』やねん?」「なんで裁判になるの?」「取引で損をしたって自分のせいじゃないの?」とか,色々疑問をお持ちの方はおられないでしょうか。
でも,これが,とても深刻な問題なんですよ!だから,私がやってるんですよ!!ってことで,少しだけ,先物取引被害事件とは何かを解説したいと思います。
具体例の一例は,以前の私の記事にあります。
これは,認知症と思われる方に対するやや極端な例ですが,認知症とかではない人の被害もあります。
まず,先物取引というのは,「金」などの商品について,将来のある時点で,それを○キログラムを××円で「買う」「売る」権利を売買するもの,です。
分かりにくい?すいません…「伝わってこそ法」を座右の銘とし,「わかりやすさ」を重視する私ですが,これ以上わかりやすく説明できません… でも,この「分かりにくい」ことはポイントの一つです。
さらに重要なことは次のことです。
金1キロというのは金の延べ棒一本のことですが,今調べると,だいたい今日で約240万円くらいのようです。
金そのもの(「現物(げんぶつ)」といいます)を買う場合,240万円で1キロ(延べ棒)を買います。あたりまえのことですが,金の値段が,240万円が200万円に下がっても,損失は40万円です。それに延べ棒ならいつまででも庭に埋めておけばよいので安全といえば安全です。
ところが,先物取引の場合は倍率というのがあって,例えば,240万円を出して先物取引をした場合,今なら金27キログラム,つまり,金の延べ棒27本分の取引をすることが出来ます。
なんでぇ~~??
$%&’()=~|)!”#+/*- という計算の結果こうなります(ちゃんと書いたら、計算式そのものに拒否反応続出だったので計算省略)。
「うわぁ,延べ棒27本って!!金持ち~~~」って,喜んではいけません。それはとっても危険なことなのです。
実際に27本もらえるわけではありません。27本分の,値段のアップダウンが自分の利益損失になるのです。
ならばもし,一本の金の値段が240万→230万(10万値下がり)になったらどうなります?
10万×27本=270万のマイナス えっ??
27本分の取引をはじめるために用意したのは240万円ではなかったっけ?
240万-270万って,引けないやん・・・そんなことあり得るの?
あり得ます。
それが先物取引というものです。
「でもまた値が上がるまで待ってたらいいんじゃない?ほら庭に金を埋めるようにさ…」という方,いい方法です。でも,それは無理なのです。実は,先物取引では,預けたお金の半分(ここでは120万)以上損が出た場合,追加資金を入れなければ取引を継続できないのです。
ゲームセンターで,100円入れて,ゲームをやりました。主人公が敵にやられてしまいました。
「コンティニュー?」「10」「9」「8」…さらに100円入れなければ「ゲームオーバー」。というのと全く同じです。
そこの「100円」が先物取引の場合、「100万円」だったり,「500万円」だったりするだけです。「だけ」ってアンタ!!と思いますよね…それが正常だ,それが常識だ,と私も思います。
これはつまり裏表で,逆にちょっと値が上がれば大きな利益が出るということではあるのですが,損も大きいということです。
何やようわからんけど、賭け事みたい…と理解してもらってOKです。
ここからが大切ですが,この賭け事のようなことを「俺は,ここで一発大ばくちを打ってやるぜ!!」と思ってした人の場合,それは「ギャンブラーだな,君も」というだけの話で,先物取引「被害」にあたりません。
例えば,もともと何百万円もを危険な取引にさらしたいなどとは思わない人(大部分の日本人はそうでしょう。大切に貯金してますよね。)が,「確実に儲かりますから…」「安全に運用しますから…」というしつこい勧誘に押されて断り切れず手を出してしまった場合,「被害」になる場合があるのです。
ここまで読んでいただいた人は,「どこが安全やねん?」って思いますよね…
中には,金の先物取引の契約をした段階ででも,意味が分かっていなくて,「業者から延べ棒送ってこおへんなぁ…」と待っていた,というおばあちゃんがいました。こういう人に先物取引を勧めるのはいくら商売でも悪いことだと思いませんか?
で,そんなことをして業者に何の得があるねん?ということですが,やりようによっては,例えば1人のお客さんから有り金全部を取ってしまうことが出来ます。手数料という形でそれが可能です。
お客さんに「よく分からないでしょう。私たちはプロだから,いいタイミングで売って買ってしてあげますよ。いつも報告しますから安心ですよ。」と言って,毎日毎日,頻繁に,売って買って売って買ってを繰り返したらどうでしょう?
売って買ってするたびに手数料がかかります。さっきの金27枚の話ですと,「買って売って」で大抵27万円くらいは手数料がかかります。
ここからは掛け算。本人がよく分かっていないところを,この売って買って…10回したら,27万×10=270万。
例えば,私たち弁護士で言えば,訴訟をやたらと起こしまくって,報酬をかせぐようなものです。後のことは知りませんよ…と思わなければできませんが。
そんなことって本当にあるの??と思われるでしょう。
しかし,私のところにお越しの相談者の方のほとんどの訴えは,上記のようなものです。相手の業者さんはもちろん「そんな違法なことしていません」と言われますが,裁判で真実に迫っていきます。
蓋を開けると,3000万円損をしたお客さんの取引,3000万円以上手数料を業者さんに払っていた,ということも,私が目にする事件では,割と頻繁にあります。(私が事件を受けるとき,顧客の利益より弁護士費用が大きくなりそうなら,それを説明して,基本的には「やめといたほうが…」と言いますが。それが普通というものですよね。)
「被害」というのは,たとえば,
・ 本当は危険なのにそれを説明してもらえなかった。儲かるとばかり言われた。
・ 3000万円くらいの預貯金を全部注ぎ込まされた。(「コンティニュー?」の場面で,「はやくお金を入れてください」「300万円今日中に用意して」ばかり言われた。「もうやめたい…」と思っても…)※3000万円は例示です。要は,700万でも1億でも,そのひとの預貯金の全部を先物取引に注ぎ込むような無茶な営業をされた場合です。
・ 言ったとおりにしてくれなかった。わけわからないままに,売って買ってを繰り返して,手数料ばかりかかった。そんな取引をして欲しくなかった。
・ 高齢者とか主婦とかの中で,よくわかっていない,ハッキリ断る能力も弱いようなひとが,誘い込まれた。
というものを言います。
「自分で決めて打ったバクチで負けた」場合とは全く違います。
私が言う「被害」って,それ,要は「詐欺」じゃないの?って…
それは鋭い指摘です。「詐欺」という事実は相手が争えば立証は大変ですが,初めから「だます」意図が伺える事案については,私は,その実態をありのまま裁判所に分かってもらうように試みます。
さらに恐ろしいのは、相談に来られる方のほとんどが、損害額=貯金の全部だからです。いつの間にか貯金ゼロの恐怖、なのです。深刻な問題でしょう?それがお年寄りだったらさらに…
「たとえば,上のようなことでお金を失った人は,どうぞ相談してください。」
「私たちが力になります。取り返すための裁判などを行うお手伝いをします。」
「その為に,全国の仲間と,研究したり,情報交換をしています。」
ということで,「先物取引被害事件」を扱っています。
そうこうしているうちに,行き掛かり上,研究会のお世話役とかもやることになったわけです。それも仕事のうちなので…。
ちょっと,何をやっているか,分かってもらえたでしょうか?
コメント 0