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Vol.47 プリズマティック・オーシャン 座キューピーマジック [座キューピーマジック]

またまた友人夫妻と連れ立って「座キューピーマジック」の公演を観に行ってきました。
いつものパターン、土曜日のマチネです。

ただ今回はカミサンが仕事のため同行できず、代理に娘(7歳)を連れて行くことにしました(笑)。
娘にとっては初めての新幹線、初めての東京、そしてはじめての観劇です。
新幹線や観劇中など、長時間ずっと静かにしていられるのか、とても心配でしたが、新幹線ではiPodに入れた「カリオストロの城」を見せていたおかげで、飽きて嫌になることもなく何とか東京までたどり着くことが出来ました。ホッ。

ところでウチの娘は、なぜか番組名や作品名や役柄の名前は覚えても、役者の名前などはなかなか憶えません。
憶えている役者を強いて上げれば…。

「ペ・ヨンジュン」(爆)

そして…

「田窪さん」
(座キューピーマジックの座長さんです)

なぜか一時期、田窪さんが出演した番組を録画したビデオを、毎日のように見てました。
親のほうが「また見てんのぉ?」とあきれるほどでしたね。
ちなみにお気に入りは「姫様事件帳」。
田窪さんは犯人役です(爆)。

ま、それはそれとして、そんな父娘の珍道中でした。
娘の身長では人の後ろになると見えないので、最前列ど真ん中を陣取りました。
もしかして板の上からでは目立っていて役者の方々はやり難かったりしたかもしれませんね。
申し訳ないことです。

肝心の彼女の初観劇はというと。
結構笑いのツボにはついてきてましたね。
しかし子供の笑い声って目立つので、微妙なシーンで笑われると冷や汗もんです。
親としてはドキドキしながらの観劇となりました。

今回の公演は前回の「Vol46. 想い出のテラス」に引き続いての新作です。
さらに脚本は神野恵子。
今まで豆公演*1では、団員の作品、団員の演出というのは存在しますが、私の知る限り、本公演での団員作品というのは、キューピー史上初めてではないでしょうか。
*1:正式には「豆キューピット」

神野作品では以前に豆公演で「Vol.9 シオン」がありました。
とても良い公演だったこともあり、今回も見逃せないぞっ、ということになった訳です。
残念なのはカミサンが行けなかったこと。
今回のテーマは「女性」だそうで、女性側視点での感想も聞きたかったな。

ということで、いつもどおり長い前置きで申し訳ありません。
が、今回は前置きがさらに続きます。
かなり長くなると思いますが少々お付き合い下さい。



実はこの公演を観ていて二つほど思い出したことがあります。
日頃の慌ただしさにかまけて、もうすっかり忘れていたことです。
この感想を書く前にまずはそれを書かないといけない気がしてきました。
恐らく今の私を知る人には信じられないと思いますが。
自分でも信じられないですもん(笑)。


思い出したことの一つは、独身時代の私。
その頃私は、赤ん坊も含め子供というものが大嫌いでした。
自分勝手でワガママで時と場所を選ばずやかましくて。
電車などで子供が騒いでいると「やかましーなこのクソッタレ」と心の中で毒づいたりしていました。
うーん、嫌いだったのは子供だけじゃないですね。
自分も含め人間が嫌いだった、と言ったほうが正しいかもしれません。
blogタイトルとまったく逆だったわけです。


そしてもう一つ思い出したことは、結婚してから子供が産まれるまでのこと。

結婚はしたものの、正直言うと、どうしても子供が欲しい、という気持ちはありませんでした。
そのせいなのか何なのか、なかなか子供は出来ませんでした。
でも周りから言われるんですよね。

「子供はまだ?」

「子供作らないの?」

「作るなら早いほうがイイよ」

そういうありがた迷惑な言葉はまだマシ。

「作らないの?出来ないの?」

「出来ないならオレが代わってやろうか?」

そういう気遣いの微塵もないような言葉をいくつもかけられました。
しかしそれも、4年、5年と経つと徐々に変わり、だんだんと子供関係の話題があえて外されるようになります。
ま、私は男ですからまだ我慢も出来ます。
しかしカミサンは、恐らくもっとツライ、悔しい思いをしていたはずです。
ベッドの中で二人して抱き合って泣いたこともありました。

「出来ないなら出来ないであらかじめわかっていたほうがいい」

そんな思いもあり、夫婦して不妊検査を受けることにしました。
一般的にはダンナ側の検査は嫌がる人が多いらしく、カミサンは自分の検査結果を診てから、私に検査を受けてもらおうと思っていたようでした。
ま、確かに誰でも抵抗はありますよね。
しかし夫婦は対等であるべき、という私の信念もありましたし、カミサンのツライ状況は私なりに理解していたつもりなので、カミサンの検査と一緒に私のほうも検査してもらいました。
私だけ逃げるようなことはしたくない、という気持ちも強かったように思います。

そしてその結果は…どちらも異常なし。
その後、不妊治療が始まったとたんに妊娠が発覚するという、笑い話のような、何だか拍子抜けするオチでした。
そんなこんなで、望んでいたのかいなかったのか、わからないような状態で、私は親になったのでした。

不安はありました。
元々自分が嫌いだった私が、人の親になろうというのですから、なおさらです。
でも、カミサンのお腹の中でジワジワ育ってくる命を毎日眺めるうち…。
何だろう、うまく説明できませんが、とてもいとおしく、大事に思えてくるようになりました。

今にして思えば、結婚してすぐに子供が出来たとしたら、今とかなり違った感情を子供に持っていたはず。
あの体験があったからこそ、あの苦しみ悲しみがあったからこそ、今の私がいるし、今の親子関係があるのだ、とそう思っています。

今回の公演を観ていて、私はそんなことを思い出していました。
観劇の感想にこんな前置きは意味不明ですが、この件はいつか記事にしようと考えていたこともあり、あえて書かせていただきました。
さてさてこれでようやく長い前置きは終わりにします(汗)。
以下、ネタバレあります。
ご注意下さい。





物語には、妊娠して幸せ絶好調の女性、妊娠はしたものの産みたくない女性、結婚を目前にして子供を欲しがっている女性、子供は欲しいが産めない女性、子供を産もうにも身体は男の女性(笑)など、これ以外のパターンはもう無いかも?と思うくらいの様々な女性(一部男性:爆)が登場します。
それに登場人物と母親との確執なども絡みつつ、女性の物語は進んでいきます。

とまぁ、文字で書くととっても重いお話。
行けなかったカミサン用に台本を買って帰ったのですが、後で読み返すと、やはりやり方によっては大変重苦しい舞台になりそうな微妙な脚本。
それなのにこの公演ではとってもライト…と言うか、とても優しく淡く描かれていて、消化不良を起こしたり、後味が悪くなるようなことはありませんでした。
個々の人物に必要以上に感情移入させず、少し広い視野でいろんな人生を見渡させる。
それが、この芝居の見せ方なのかな、と思いました。

そこで先に長々と書いた昔の思い出が出てくるわけです。
なにそれ?って思われるかもしれませんね。
うまく言えませんが、私にはこの登場人物たちの人生の重みと自分の過去の体験が、同列に感じられたのです。
それだけ登場人物の存在感があった、ということなのかもしれません。
存在感…うーん、ちょっと違う。
同じ存在感でも内面の存在感…かな?
悩み、悲しみ、辛さ、そんな感情が、自分のとほとんど同じ重みで感じられました。
自分の昔の体験が、そのままではないにしろ、登場人物たちにも同じように存在する。
あぁやっぱりうまく表現できないな。
たぶん芝居の登場人物としてではなく、本当に実在する人物みたいに感じられてたんだと思いますね。
人間はそれぞれがみんな苦しみ悲しみをどこかに抱えて生きているんだな、って感じました。

それにしても、よくぞまぁこんな感想を引き出せるもんだ。
脚本の出来がすごいのか、演出がすごいのか、役者たちの技量がすごいのか。
私にはわかりませんが、すごいとしか言い様がないです。
さらにすごいのは、この脚本を書いた神野恵子という人は、結婚もしてなくて、子供もいないハズの独身女性(あんまり言うと刺されそう?:爆)だということです。
いったいこの人って何者なんでしょうね?

この際だからイジワル書いちゃいますが。
もしもこの人が結婚したり(しなくてもいいけど)、もしも子供を産んじゃったりなんかしたら、その際はもう一度同じテーマで戯曲を書いてもらいたいですね。
もしも、もしも…ってあんまりもしもと書いたらそれこそ東京湾に沈められそうですケド(汗)。
ここは「ぜひ」と書きたいところですが、この芝居のようにそう出来ない女性もいるということで、それに配慮しつつ「もしも」(シツコイって?:汗)と書いときます。

えっと、冗談はさておき。
前置きで書いたような、そんな経験のせいか、どの登場人物の気持ちも、手に取るようにわかります。
ご覧になった女性の中には、あのダンナがとってもヒドイ、鬼のような人間、と思われたかたも多いと思います。

「子供?別にいらないよ。ま、出来たんならそれでもいいし」

という気持ち、私もよくわかります。
私も昔はそう思うこともありましたから。
でも実際に子供が産まれてみて、私の考えは大きく変わりました。

深夜の授乳後のゲップや、夜泣き対応は、もっぱら私が引き受けましたし、ウンチのオシメ替え、散々噛んだあげく飲み込めなかったご飯をもらって食べたり。
昔の自分から見たら信じられないことも、今は何の苦も無くやってます。

昔と180度変わってしまった子供に対する思い。
なぜでしょう?
やはりあの時の苦しみ悲しみが私を親にしてくれたのかもしれません。
そんな思いが、この公演を観てさらに強まりました。

赤ん坊、子供、大好き。
この世に新しい命を産み出す。
こんなにステキなことはない、と思います。

世の中の妊娠した女性に言いたい。
子供と仕事?
それは天秤にかけるようなものではありませんよ、と言いたい。
元々土俵が違うものなんです。
二者択一するものじゃないんです。
子供が嫌いだった私が言うんだから間違いありません(笑)。

もし産める状況なんだったら、ぜひ産んで欲しい。
だってこれは女性にしか出来ない特権なんですよ。
それを意図的に避けるなんて、もったいないじゃないですか。
だいたい、仕事なんてオトコでも出来ることでしょ。
子供を産むことは絶対に女性にしか出来ないんです。
できることなら私だって産んでみたい(爆)。

それにしても、いつもの事ながら自然な演技に釘付けですね。
妊婦が死産だったという場面では、凍りついたその場の空気さえ本物に感じましたし。
最前列であまりにカウンターに近かったせいか、実際にお店の中にいる気にさえなってきて、無性に喉が渇いてしょうがありませんでした。

さらに感心したのは、いつもにも増して凝ったセットです。
柔らかくアーチを描いた大きな窓。
そしてその向こうの空。
あれってホリゾントどうやってたのでしょうかね。
横からかな?なんて思ったのですが。
その昔、演劇などかじってたカミサンがいたら、聞いてみたかったところです。

そういえば、娘が産まれた日も、とてもいい天気でした。
病院の窓から見上げた晴れ渡った青空を今でも憶えています。
携帯で写真を撮ろうとして、病院に入る時に電源を切ったのを思い出し、後で撮ろうと思ったはいいが、そのまま忘れてしまったこと(爆)。
そんなことまで思い出させてもらいました。

どこまでが台詞でどこからがアドリブなのか、全然わからないキューピーの舞台。
今後も見逃せそうにありません。
皆さんはいかがでしたか?




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コメント 7

yann

じっくり読ませて頂きました。
そのような事があったのですか…
子供さんの面倒をよく見てくれるダンナさんだな、とは思ってましたが。
いつも、とても愛おしそうな目で見てますものね(^_^)

観劇ですか!我が娘も田舎の劇団員です。
まだ、若いのでこれからです(^^♪
by yann (2007-05-23 18:44) 

噂の神野恵子です。

何度も「もしも」と言ってくださり、どうもありがとうございます。
くれぐれも帰り道にお気をつけ下さい。ふふっ。

お嬢様が一列目ど真ん中で、
「別の生命体」というセリフを聞いて「生命体!?(笑)」と繰り返していたのは舞台上からもしっかり聞かせて頂きました♪
最後までとてもおりこうさんに観て下さっていましたね。
しかもアンケートまで書いて下さってびっくりしました。
お嬢様と二人並んで座っていらっしゃる姿を見て、
奥様が小さくなって現れたのかと思い、驚きましたが(笑)

さてさて、GEN11さんがまさかお父さんになる前、
そんな男だったとは知りませんでした。
人ってのはわかりませんねぇ。
という事は私もどうなるかわかりませんねぇ・・・。
ま、「もしも」の時の話ですが。

ご希望通り、「もしも」私が結婚・出産できたら(いや、するってば。)
その時はもうひとつのプリズマティック・オーシャンを書きましょう。
ま、その日もそんなに遠くないかな♪
お楽しみに♪♪
by 噂の神野恵子です。 (2007-05-23 21:54) 

GEN11

アキオさん
そっとnice!をありがとうございます。

yannさん
娘さん役者さんなんですか♪
でしたらぜひぜひ「座キューピーマジック」をご覧になることをお薦めします。
勉強になると思いますよ。

神野さん
そうです、そんな男でした(爆)。
東京湾に沈めるのだけは勘弁して下さい。
昨日娘に「『別の生命体』ってとこで笑ってたのが聞こえたってそらちゃんが言ってたよ」と教えてあげたら、速攻で「もう一つの生命体」でしょ?と突っ込まれました。どうでしたっけ?
つうか、コイツ台詞入ってんのかよ(爆)。
by GEN11 (2007-05-24 19:55) 

だんごっぱな。

恐るべしお嬢様っっ。
そうでした、「もう1つの生命体」でした・・・。
私が書いたのに・・・・・・・・。
その記憶力をわけて欲しいです・・・。
お嬢様を師匠と呼ばせて頂きますっっ。
by だんごっぱな。 (2007-05-26 22:29) 

GEN11

だんごっぱな。さん
いやはやホントでしたか。
一度観た舞台の台詞を覚えるなんてまるで北島マヤじゃありませんか(笑)。
人間って集中するとスゴいことが出来るもんなのですね。
…この集中力を勉強に生かしてもらいたいものです。
って、それは無理か、ワタシの子だから(爆)。
by GEN11 (2007-05-27 20:17) 

ぽむ

そういう舞台があるんですね、
娘ちゃん、よい経験したですね(*^-^*)

GENさんの過去も読ませてもらって・・・・
なんかね、今、子供が授かればそれは嬉しいし
毎日が活気に満ちてくるんだろうなって思うのだけど、
でもどうしても欲しいっていうワケじゃないから、
不妊治療もまじめに受けていないんです。

そりゃあかわいいって思う瞬間はあるし、
居たら自分も毎日が楽しいのかなって思うのだけど、
子どもの一大事に、きちんとした判断ができて
その子にとって最善と思える道に導いてあげることが
今のアホな私にできるのかしら、なんて考えてしまって
妊娠するのを躊躇っている自分がいることに気付きました。
それに加えて、親や夫に甘えて今の気ままな暮らしを変えたくないから、
それが躊躇いにもつながってたのかな・・・

本当は、「妊娠できない」んじゃなくって、
親に甘えられる時間、夫に甘えられる時間を続けたくて
妊娠を避けてたんじゃないかな・・・そう気付いたら、
この手に子どもを抱ける日がやってくるかなーなんて
ちょっぴり希望も湧いてきたりして。どうもありがとう(*^-^*)
前向きに、できるだけ色々がんばってみます。
by ぽむ (2007-05-27 23:40) 

GEN11

モコさん
親ってのは資格があってなるものじゃありません。
どうしようもなくてなっちゃうものだと思います。
子供が産まれてから親として成長していくのですから、今の自分が…という遠慮はご無用ですよ(笑)。
さらに子供をネタに親やダンナに甘えることもできるようになりますので一石二鳥です(爆)。
by GEN11 (2007-05-28 21:37) 

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