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レトロな近未来、SYNERGY - Electric Realizations for Rock Orchestra [Progressive]

今から30年くらい前、YESのシンセサイザーのマニピュレーターをしているというミュージシャンのソロ・アルバムが発売された。当時、ミュージシャン志望の高校生だった俺は、ミュージシャンの出す音はミュージシャン自身が決めるものだと信じて疑っていなかったので、相当に驚愕した。当然、件のアルバムはYESの雰囲気を感じさせるものだと早合点及び期待して購入したが、その読みは見事に外れた・・・

SYNERGY - Electric Realizations for Rock Orchestra

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前述の通り、後にPETER GABRIELバンドのキーボード・プレーヤーとして有名になる以前、YESでシンセサイザーのマニピュレーターをしていたLARRY FASTのソロ・アルバム。つい先日、某ショップでCDを見つけ購入。久しぶりに聴いたが妙に面白かった。

この作品が発表されたのは70年代中盤、まだまだシンセサイザーの音がするだけでありがたがられた時代だ。内容はと言えば、「バンド形式の演奏にダイナミックなシンセサイザーが大活躍するプログレッシブ・ロック」という俺の希望的観測を完璧に裏切る、ところどころ現代音楽を感じさせるごくごくまともな曲をごくごくまともにアレンジし、当事の最先端技術を駆使したシンセサイザーでの演奏を多重録音した安直とも言えそうなもの。
この分野では、「時計仕掛けのオレンジ」であまりにも有名なヴァルター・カルロスという大権威がすでに確固たる地位を築いており、また、ホルストの「惑星」をシンセサイザーで演奏した富田勲が広く受け入れられたのもほぼ同時期だったはずで、この作品に対する評価は高いも低いもなにも、聞いたことすらない。

やはり最大の価値は「シンセサイザーのみで演奏されている」と、いうところのようであり、事実、ジャケットには「ギター奏者はいません」という但し書きがなされている。ところどころ仰々しいポルタメントをかけたりしてかなり大袈裟な音響設計をしており、確かに当事はかなり刺激的な音だったのだが、電子楽器が生楽器のような音まで再現出来るところまで技術が発達し、それを当たり前のように聴かされている現代では、近未来をイメージした安易なシンセサイザー・ミュージック、と整理されてしまっても仕方ないかもしれない。

ところが、意外にもこの30年前に想像した「近未来感覚」と、実際に到来した未来の現実とのギャップがとてつもなくキュートで面白いのだ。妙にレトロな雰囲気を湛えており、おそらく製作当時の意図とは異なった魅力を獲得してしまっている。俺自身は発売当事より面白く聴いているかもしれない。

シーケンサーによる自動演奏も使われているが、よく聴いてみると意外にもLARRY FAST自身が実際にキーボードを弾いての演奏が中心のようだ。無機質な音質の中に温かみを感じさせるのもそういったアナログ的な操作があるからこそなのだろう。ところどころメロトロンを感じさせる音も登場するものの、メロトロンにしては音の立ち上がりが素早いし、ジャケットに記載されている機材リストには載っていないので、やはりシンセサイザーでメロトロン風の音を創ったのだろう。


Synergy: Electronic Realizations for Rock Orchestra

Synergy: Electronic Realizations for Rock Orchestra

  • アーティスト: Larry Fast,Richard Rodgers,Mason Williams
  • 出版社/メーカー: Voiceprint
  • 発売日: 2005/03/29
  • メディア: CD


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