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DRUMMING / STEVE REICH (更なる反復の魔力) [Ambient/New Age/Experimental]

ここ数年、(いや、十数年か・・・)どうも「ミニマル・ミュージック」と言う言葉の持つ意味が誤解されたまま、都合のいいところだけがスタイルとして定着してしまったような気がしてならない。一般のミニマル・ミュージックの最大の存在価値は、「同じ音を反復させて生まれるトランス感」というところに落ち着いてしまっているようだが、そもそもは、音の持つ根源的な力を検証するために音楽を構成する要素を削った結果、反復という手段をとっているのだ。機械の持つ(ある程度)保証された正確さに頼って無意味な反復を行い、気が向いた時に作為を施す程度のことでいい結果が生まれてくるかどうかはいささか疑問。目的も無く繰り返しているだけじゃミニマル・ミュージックとは言えない。
ミニマル・ミュージックの巨匠は、1971年にこの作品を提唱し、「オンビートでただ繰り返すだけじゃ意味ねぇだろ」と、雄弁に語っている。


71年作品。ミニマル・ミュージックの金字塔。 DRUMMING / STEVE REICH

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この作品はパートⅠ~Ⅳの4部構成で成り立っている。使用楽器はパートⅠはステッィクを使って演奏するボンゴ風のパーカッション(名前は知らない)、パートⅡはシロフォン(多分)、パートⅢはグロッケン(これは間違いない)、そしてパートⅣはⅠ~Ⅲで使用された全楽器。部分的に歌詞を伴わない唱や吹奏楽器(多分、フルート)も入る。
同一の複数の楽器が奏でる単調なフレーズが折り重なり、徐々に、時として突然ずれを起こして次から次へと異なる表情を見せる。「実験音楽」として片付けてしまうにはあまりにも壮絶な美しさ、そしてトランス感。これをテープ操作や多重録音、デジタル技術を駆使せず、音楽家による生演奏で行っている、という事実に敬意を表さずにいられない。この、数学的に割り切ることが出来ないような発音行為が音楽として成立していることが予定調和の賜物だとしたら、これこそ魔術としか言いがない。しかし、それこそが権威的な西洋音楽へのアンチテーゼであり、現代音楽の到達点の一つなのだ、と、思わずにはいられない。
LP時代は二枚組で、一枚目のA面にパートⅠが、B面にパートⅡが、二枚目のA面にパートⅢ、B面にパートⅣがそれぞれ収録されていたが、実はこれらは連続して演奏されており、パートの切れ目でフェード・イン、フェード・アウトするという半端なつくりになっていた。パートⅣも曖昧にフェード・アウトすると思いきや、グロッケンの音が共鳴して二次発生音が渦巻いて尋常じゃない音響が広がり、なんの予告も無くいっせいに終了した時は仰天した。正直言えばこの作品を最初から最後まで聴きとおすにはかなりの我慢を覚悟する必要があるが、最後の一撃で全て帳消しだ。
現在はCD化され、シームレスに聴けるようになったが、(現在俺が聴いているのはこれである)LPで聴いていた頃より演奏時間が短くなっているような気がする。作品の性質上、編集は不可能なはずだし、そんなことしてはこの作品の価値が半減してしまうので、CDの尺にあわせて編曲して再演奏したのだろう。


Drumming

Drumming

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Elektra/Nonesuch
  • 発売日: 1995/11/10
  • メディア: CD

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