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Loveless / My Bloody Valentine (フィードバックノイズの洪水?ちゃんと聴けよ) [Shoegazer]

多分1992年、当時の俺は身近に音楽友達もなく音楽雑誌も買わないしテレビも見ないしラジオも聴かない、いわば音楽鎖国状態にあった。勿論、月に数枚のCDは購入していたが、どうしても知っているバンド、知っているジャンルのものになってしまいがちだった。
そんなある日、気まぐれで入ったショップで、(たしか渋谷のWAVEだった。現在はLoftが入っている)あるCDが「俺を連れて帰ってくれよ~」と訴えかけているのに気が付いた。バンド名は知らない。ジャケットのセンスも当時は好きではなかった。値段も輸入盤にしてはかなり高かった記憶がある。「見たことも聴いたことも無いバンドのCDに三千円近く?そりゃ無理だな・・・」と、最初は黙殺したものの、妙な胸騒ぎがしたので駄目モトで買うことにした。
しかしてそのCDは我が家につくなり猛烈な勢いで暴れだし、俺のステレオをかつてない程の大音量で何回も繰り返し鳴らすことを強要した。それは今まで聴いたことのあるどんな音楽にも似ていなかった。「俺が知らないうちにロックに革命が起こっていたらしい・・・」と、本気で思ったぜ。

LOVELESS / MY BLOODY VALENTINE

my bloody valentine loveless.jpg

 

当時もそう思っていたが、今聴いてもまったく浮世離れした作品だ。粒立ちのいいチリチリとしたギターの音、歪んだベースが奏でるぶっきらぼうなフレーズ、意外にもまっとうなドラム、何で出しているんだかわからない数々の不思議な音が渾然一体となってなにやら麻薬的な音場空間を構成し、その上を、もしくはその隙間を淡々としたボーカルが浮遊する。轟音の中に埋没しそうな耽美なメロディー。ソロらしいパートはほとんど見当たらない。全体がザラザラとした感触を持ちながらなぜか心地よく響く。時折、音像がぐらっと揺らぎ、眩暈に襲われる。あまりのレゾナンスの凄さに、「CDプレーヤーが壊れたか?」と思い、他のプレーヤーでかけて確認したほどだ。
普通に聴くと不快に聴こえても不思議ではない音のはずなのだがなぜか美しい。慈愛さえ感じてしまう。多分、アルバムタイトルのLOVELESSは逆説なのだろう。BRIAN ENOが「新しいポップミュージックの形」と絶賛したのもうなずける。音の作り方もメロディーも全てが新しかった。

ところで、この作品を「フィードバックノイズの洪水」という言葉を使って紹介しているのをよく見かけたが、あれは大嘘だ。フィードバックノイズってのはスピーカーから出た音をマイクが拾い、その音がアンプで増幅されてスピーカーから出力され、それをまたマイクが拾い、と、循環して発生する音のことだ。確かにライブの終盤には延々とフィードバックノイズを鳴らしていたようだが、この作品のどこにもそんな音は登場しない。

Loveless

Loveless

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: WEA
  • 発売日: 1991/11/05
  • メディア: CD

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