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歌の息つぎ [PH]

紫陽花を背景にサイドバーに載せている歌は、ワーグナー作曲「トリスタンとイゾルデ」三幕にあります。バーンスタイン指揮の録音です。歌っているのは、ペーター・ホフマン。この部分については、以前にもどこかで書いたのですが、keyakiさんの記事「カップチルリのもの凄い息の長さ」がおもしろかったので、ひとつの音を長く伸ばすというのとは違う話ですけど、便乗させてもらいます。

さて、この部分について、ペーター・ホフマンの伝記(2003年刊)にこんな記述があります。


幸せに、気高く、柔和に、イゾルデが海の上を渡ってくるのが見えないか』のところを、バーンスタインは、オーケストラに極端にゆっくりと演奏させて、私には、ここを一息で歌うように求めた。

これまで、トリスタン歌手は皆、ここは、三度は息つぎをしないとして、すくなくとも二呼吸で歌っている。一息というのは、私には不可能に思われた。

『そうしてくれ。せめて、試してみてくれ。私のためにやってくれ』とバーンスタインはしつこくせがんだ。

彼は私に重要な助言をしてくれた。私はフェリーニの映画のこと、つまり、夢の中のように、非常にゆっくりとした音楽から、そのあと、だんだん軽やかになっていく、からっぽの部屋の中でなっているワルツを、思い描くべきだと言うのだが、彼の言うことは正しかった。このフレーズは8分の6拍子だから、ワルツの調子なのだった。私は彼の思っていることを理解した。そして、そのあと、ほんとうにそれをライブの舞台でやり遂げた。

 しかし、この一息のスラーの終わりには、あまりの負担に目玉が飛び出しそうだった。今でも、ここのところをCDで聴くたびに、自分の力業に感心し唖然とさせられる。

問題の部分の時間経過はおよそ18秒というところです。ただ楽しんで聴いている私には、茫然とするほど美しく、非常に魅力的だけど、全然大変そうにはきこえません。何にしろ、プロの技というのは、素人の気がつかないところで、大変なものなのでしょう。

関連記事:一部です。トリスタン関連は他にもいくつかあります。
記事リストでお捜しくださいm(_ _)m
バーンスタインの「トリスタンとイゾルデ」
バーンスタインと共に....の一年
トリスタンとイゾルデ バーンスタイン指揮 再発売
バーンスタインの「トリスタンとイゾルデ」テレビ放送


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コメント 8

おさかな♪

とても興味深く読ませていただきました。
オケでも、管楽器の方が「そこは一息で吹けないかな?」と指揮者の先生に言われて、つらそうなのを見かけます。
弦楽器は上手に折り返せば、永遠に(?)音を伸ばすことができますが、呼吸を使う楽器は大変だと思いました。
でもその分、味がありますね!
弦楽器を弾くときでも、呼吸をするように弾かないと、聴いている方は息が詰まるような感じを受けると言います。一息で歌っても苦しそうに聴こえないということは、本当に上手なのだなぁと思いました。
by おさかな♪ (2006-06-16 23:08) 

ヴァラリン

>一息で歌っても苦しそうに聴こえないということは、本当に上手なのだなぁと思いました。

おさかな♪さん、お久しぶりですね(^^
私も全く同感です。散々聴いているこの録音、edcさんが指摘して下さるまで、まーったく気がついておりませんでしたわf(^^;

バーンスタインが何故、ホフマンをトリスタンに選んだのか、わかるような気がしますね…(^^
by ヴァラリン (2006-06-16 23:16) 

euridice

おさかなさん♪ nice!&コメント、うれしいです。
ヴァラリンさんも、ありがとうございます。コメントふたつともアップしたとたんみたいにくださって、感激です。

>弦楽器を弾くときでも、呼吸をするように弾かないと、聴いている方は息が詰まるような感じを受けると言います。
ああ、そうなんですか。なるほどね。息が詰まった経験はまだないです^^! やはり演奏する人たちは、こちらの気がつかないところで、神経をつかっていらっしゃるんですねぇ・・・演奏者に感謝!

>まーったく気がついておりませんでした
私だって、あの本を読むまでは、そんなこと夢にも思いませんでした。読んでからもよくわからない・・・へ〜そうなんだ ぁ...です^^;
by euridice (2006-06-17 08:05) 

佐々木真樹

そうです,ここです。
私が聴くたびに麻薬に酔いしれてとろとろに溶けてしまうところです。
by 佐々木真樹 (2006-06-17 08:13) 

keyaki

うまく息継ぎしているとしか感じませんが、ブレスなしで歌っていると知ると急に息が、く、く、くるしい。(笑
しかも、とても静かに歌うというのは、大声よりも難しいんですってね。
適切な息継ぎは、歌手にとってはとても重要なことなんでしょうね。ブチブチきられると雰囲気ぶち壊しですしね。
中には、ガバーっと息を吸う音が耳障りで、そのことが話題になる歌手もいますし。
本当は苦しいけれど、苦しそうな顔をしないのも技術のうちだそうですし、オペラ歌手って、やっぱりすごいです。

私の記事をリンクして下さって、ありがとうございます。
by keyaki (2006-06-17 10:07) 

TARO

一緒に歌ってみました。
鼻歌で歌うぶんには、1回の息継ぎで大丈夫でした。
バーンスタインの指揮以外なら、私も世のヘルデン・テノール並みに歌えるということ?
by TARO (2006-06-17 11:30) 

YUKI

これだけのフレーズを歌詞が付いた状態でしかもゆっくりなテンポでノンブレスで歌うのって本当に大変ですよねぇ。(^^;)

何かの本で読んだことがあるのですが、ホフマンはかなりスポーツ等で鍛えていたのでしょうか?
それだけ鍛えただけあってなのか、全く苦しそうな感じではないので流石だなぁ~・・・って感じました。(^_^)

しかし、バーンスタインって歌手への指示が物凄く細かいんですねぇ。(^^;)
「私の為にやってくれ!」って言うところがまた面白いです。(^^;)
by YUKI (2006-06-17 11:57) 

euridice

みなさん、コメントありがとうございます^^!

この静かでゆったりとした旋律のあと、もの凄く激しく速くなります。この緩急の差もたまらなく魅力的です。
by euridice (2006-06-19 10:34) 

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