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ケルビーニ作曲「メディア」三種(1) [オペラ映像]

もともとはギリシャ悲劇。言語によって、「メディア」「メデーア」「メデー」など発音、表記が様々なようです。パゾリーニ監督の映画は「王女メディア」 これは封切時に見た「アポロンの地獄」がおもしろかったので、ずっと後になってテレビ放送を見ました。オペラを知らない私でさえ、知っていた偉大なオペラ歌手、マリア・カラスが、一声も発しない王女メディア。歌入りの邦楽が使われてたりもしてちょっとびっくりの奇妙な印象の映画です。

またずっと後、オペラに興味を持つようになってから、ある雑誌の記事で、ケルビーノ作曲でこのギリシャ悲劇を題材にしたオペラがあることも知りました。マリア・カラスによって「甦った」作品だということでした。好奇心でマリア・カラスの歌う全曲CD(バーンスタイン指揮、スカラ座ライブ1953年)を聴いてみました。序曲はなかなかおもしろかったのですが、やはりリブレットもなしということもあり、一度流して終わり。この記事はドラクロワの「怒るメディア」に関連した内容で記憶に残りました。

さて今月スカイパーフェクトテレビのシアターTVでこのオペラが三種類一挙に放送されています。もともとはフランス語に作曲され、台詞入りの作品だったということです。それで、まずオペラ・コミック版で上演されたフランス、コンピエーニュ帝国劇場での公演映像を見ました。台詞を言う俳優と歌う歌手の2人で1役を演じるという演出。

シアターテレビの解説
『19世紀のフランスでは、喜劇、悲劇にかかわらず、台詞付きのオペラは全て「オペラ・コミック」と称した。そのため、この舞台も内容は悲劇だが、「オペラ・コミック」と呼ばれている。 台詞が入っている分、フランス語版はイタリア語版よりも物語をより深く知ることができる。さらに、このコンピエーニュ帝国劇場の舞台では、台詞を言う俳優と歌う歌手の2人で1役を演じる演出がかなりユニークな舞台。
そもそも歌う発声と台詞を言う発声は違うため、歌手の負担を配慮して、この形にしていると考えられる。この作品自体、めったに上演されないうえに、オペラ・コミック版は、イタリア語版に比べ演奏される回数が少ない。そんな理由から、この初演版は非常にレアな舞台となっている。』

視覚的には、劇場で見ればあまり問題がないような気がしますが、声質、特にメディアと王女の違いには、違和感があります。メデアは視覚的にもその違いはテレビでは気になります。全体的に台詞部分のほうがより迫力もあり退屈しません。歌になるといらいらする部分も.... メディアは歌手に変わると全面的に迫力が低下、コリントスの王女は俳優の声が澄んだソプラノと違って低く濁っているのに違和感があります。

コリントスの王女を歌っているのはインバ・ムーラ。新国立劇場ヴィオレッタ@椿姫でした。映画「フィフス・エレメント」の宇宙人オペラ歌手の澄んで美しい声の主でした。ネリスは、同じ劇場の映像「ミニョン」でミニョンだった歌手ですが、黒塗りの化粧をしていて全然わかりません。声質も違和感がなかったのですが、その扮装のお陰か、歌手が演技達者なのか、俳優と歌手の差異が一番なかったです。

多大の犠牲を払って愛した夫に裏切られた妻が、復讐のために夫の新たな妻と我が子を殺すという物語。その怒りも悲しみも頭では理解できますが、この三つのオペラ映像によって、感情的にはなかなか納得も共感もできない感じで、もどかしいというか、しらける部分も........ 

ケルビーニ(1760-1842) メディア
コンピエーニュ帝国劇場 1996/97年 フランス語版
ミシェル・ズヴィルチェムスキー指揮
ピエール・ジュルダン演出

コルキスの王女メディア:ミシェル・コマン/フランシンヌ・ベルジェ
イオルコスの王子シャゾーネ(イアソン):ジャック・ノエル/クロード・ジロー
コリントスの王女グラウケ:インバ・ムーラ/バルバラ・ケルシュ
コリントス王クレオン:ジャンフィリップ・クルティス/ジャック・ダクミン
メディアの召使いネリス:リュシール・ヴィニヨン/エマヌエル・コルドリアニ


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コメント 6

keyaki

ライモンディがフェニーチェ時代1968年に歌ってますね。イアソンですけど。まじめにきいてましぇん。コレクションしてるだけだわ。

>2人で1役を演じるという演出
一瞬意味がわかりませんでした。ヘェーー、ということは、上演時間が倍かかるということですか。

写真の右の男性の衣裳はおかしくないですか?
by keyaki (2006-03-09 01:23) 

euridice

>ライモンディが
へぇ〜〜〜 さぞ魅力的なイアソンだったことでしょう!!
でも、この役テノールってなってるみたいですけど?

>>2人で1役
倍はかからないみたいですね。台詞と歌で入れ替わるわけですから・・ 台詞の分、イタリア語版より長くなるみたいです。交替自体はうまくいってると思います。

>男性の衣裳
衣装の一貫性がないというか・・ 写真はジャゾーネ(=イアソン)ですが、コリントス王クレオンも二人の息子たちもこの路線?です。コリントスの王女もこちらと違和感のないシンプルな白のドレス、その他大勢の侍女らしき女性たちも同様です。古代ギリシャって感じじゃないですねぇ....... なにか意図があるのかもしれません・・・????
by euridice (2006-03-09 06:27) 

keyaki

オットット 失礼しましたぁ、
クレオンテでした。いい加減さが露呈。
実は写真を見て、ミニスカートみたいなのを着ていて、すらりとした足だったもんで、なんとなくそうおもっちゃったんです、へへ
若いライモンディが抜擢で、その姿は品位と威厳に満ちていたそうです。27才、一番美しいときかなぁ、、、、
by keyaki (2006-03-09 16:01) 

Sardanapalus

ドラクロワのメディアだ~(^_^)とつられて読んでみたら、この2人1役の演出、以前ちらっと見たことがあります。それがこのオペラだったか、別のだったかは忘れちゃいましたけど、載せてくださった写真のように2人が全く同じ衣装で動いていてなかなか面白かったと思います。違うオペラだったとしても、同じ演出家のものでしょうね。このオペラは聞いたことが無いのでどんな感じなのか想像が出来ませんが、原作だけにしておいたほうがいいのかしら?(笑)
by Sardanapalus (2006-03-10 00:58) 

TARO

前にこのドラクロワを取り上げたことがあったのでTBさせていただきました。
本記事よりも助六さんのコメントが読む価値ありです。
by TARO (2006-03-10 23:19) 

euridice

Sardanapalusさん
>このオペラ
私には、演奏、特に歌手が超すごければ、いいのかもしれませんが・・というところでした^^;

TAROさん
そうそう、「名画と名曲」シリーズで取り上げられてましたね。捜してTBしようと思っていたのですが、無精していたところです。コメント&TBありがとうございます。あちらのコメントで挙げた評論ですが、みつけてみたら、書き手は井出洋一郎氏でした。
by euridice (2006-03-11 06:45) 

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