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ベートーベン作曲 フィデリオ 新国立劇場 [劇場通い]

初めて実際の舞台を観ました。歌入り管弦楽という感じでCDを聴くのが好きですが、やはりオペラですから、機会があったら舞台を観たいものだと思っていました。映像はいろいろ観ていますが、特にこれが好きというのはありません。

音楽と舞台の一体感もあり、台詞も概して明晰で心地よく、引き込まれました。何と言っても、レオノーレ(フィデリオ)に違和感がなく、本当らしいのがよかったです。 フィナーレに登場の視察官は、なんだか浮いてる感じ、フロレスタンは理想主義者ゆえに不正をみすごせず投獄された堅物というよりは、テームズ河からはいあがって来たファルスタッフみたいでした。

序曲の間、舞台は紗幕を通して見えています。赤いスーツ、赤い靴、ショートカットのレオーノレが、トランクを手に登場。男の服に着替えます。男に変装し、変身する過程を見せるのはとても効果的だと、この演出には感心しました。役柄にぴったり合った歌手なので、なおさらよかったです。ほんとに若い男に見事に変身を遂げてました。この舞台がおもしろかったのは、やはり、レオノーレが役にぴったりで、違和感がなかったのが一番の理由だと思います。マルツェリーネが一目惚れして夢中になるのも納得できます。歌と台詞も説得力満点でした。台詞の切れがよく、とても心地よかったし、歌も表現的で彼女の心情が心に響きました。

一体何?!の奇抜な演出はフィナーレでしょう。フロレスタンとレオノーレが抱き合って喜んでいると、舞台奥から、結婚式の衣装のカップルが三々五々集まって来て、フィナーレの合唱場面になります。視覚的に美しく、楽しくて、単純に気に入りました。演出意図を深く考える気はないです。一幕でも囚人たちは、無機的な感じで描かれて、生々しさは全くなかったのですが、そういうことですから、フィナーレも何も囚人姿の群れである必要もないでしょう。
フィデリオが女だったことに戸惑い、がっかりするマルツェリーネに、ヤキーノがそっと近づいて、花嫁のブーケを手渡すのが微笑ましくて、和やかな気持ちになりました。
フィデリオは、男装を解いて、まず赤のシュミーズ姿になり、元の赤い上着を着ます。とても自然ないい演出だと思いました。

やはりオペラです。舞台を観ながら聴けて、よかったです。ひとつ、二幕、フロレスタンが捕われているところが、すり鉢状にへこんでいたので、一階のかなり前の方で観たため、底の部分、つまり床がどうなっているのかわからず、腰から上ぐらいしか見えなかったのは、ちょっと残念でした。一階後方ならおそらく、二階以上なら当然、よく見えたと思います。どうなっていたのか気になります。

舞台写真:新国立劇場ホームページ
演出: マルコ・アルトゥーロ・マレッリ レオノーレ: ガブリエーレ・フォンタナ/ フロレスタン: トーマス・モーザー/ ドン・ピツァロ: ペテリス・エグリーティス/ ロッコ: ハンス・チャマー/ マルツェリーネ: 水嶋 育/ ヤキーノ: 吉田浩之/ ドン・フェルナンド: 河野克典/ 囚人1: 水口 聡、 囚人2: 青戸 知/指揮: ミヒャエル・ボーダー/東京フィルハーモニー交響楽団/

※ ※ ※
よく聴くのはショルティ指揮のCDです。舞台を観るのは初めてです。音楽自体は好きで、歌入り管弦楽あるいは交響曲といった感じで十分気持ちよく聴けます。映像で特に気に入っているのはないので、舞台もあまり期待はしていませんでしたが、やはりオペラだから、機会があればぜひ観たいとは思って、楽しみにはしてました。 
映像  CD

結論から言うと、満足でした。始めから終わりまで、音楽と舞台を満喫できました。音楽と舞台が一緒になって、とても感動的でした。

舞台は、すっきりしていて、装置、衣装、照明の織りなす色彩が、牢獄という場面ですから、華やかでないのは当然ですが、美しかったです。なんというか、無機的な美しさです。装置の構成、動き方、照明の微妙な色合いが清潔で落ち着いた雰囲気を醸して、過剰な猥雑感がなくて、気分が悪くなるなんてことがなくてよかったです。
一幕のはじめのほうでは次々と逮捕者が連れて来られて、衣服をはぎ取られ、ぶち込まれる様子が演じられ、それを横目にヤキーノとマルツェリーネが衣類の整理、囚人服を渡すなどの作業をしながら、求婚、拒絶、そしてそれぞれの心情を語ります。こういうやり方は、人間の本質というか、目の前の悲惨さと淡々とした日常は同時進行するものだという現実をとらえていると思います。

序曲の間、舞台は紗幕を通して見えています。赤いスーツ、赤い靴、ショートカットのレオーノレが、トランクを手に登場。男の服に着替えます。男に変装し、変身する過程を見せるのはとても効果的だと、この演出には感心しました。役柄にぴったり合った歌手なので、なおさらよかったです。ほんとに若い男に見事に変身を遂げてました。この舞台がおもしろかったのは、やはり、レオノーレが役にぴったりで、違和感がなかったのが一番の理由だと思います。マルツェリーネが一目惚れして夢中になるのも納得できます。歌と台詞も説得力満々でした。台詞の切れがよく、とても心地よかったし、歌も表現的で彼女の心情が心に響きました。

マルツェリーネにじゃけんにされて、落ち込む若者ヤキーノは、吉田浩之さんでした。市民オペラの「コジ・ファン・トゥッテ」以来、新国でも何度か出会っていますが、お芝居がどんどん上手になっているという感じで、似合った役だと、ほんとにいいです。この役もぴったりでとてもよかった。マルツェリーネも水嶋育さんという日本人です。はじめはちょっと声が聞こえにくいなんて思いましたが、顔の微妙な表情も伝わってきたし、動きも堂に入っていました。

牢番のロッコは、どの映像でもそうでしたが、キャラクターずれなんてことはないようです。悪者、ドン・ピツァロは、ちょっと存在感が薄かったかもしれません。憎々しげなのはいいのですが、もうちょっと品がよくてもいいような気もしますし、歌のほうが・・・・・・ 声が通りにくいようで、 ほんのちょっとだけ欲求不満を感じました。

さて、フロレスタン。これは、私の場合、ペーター・ホフマンにはまってますから、なかなか満足とはいかないということになるに決まってるといえば、それまでですが、やっぱり、大満足とはいきませんでした。フロレスタンのテノールは、60歳の誕生日を迎えたばかりだそうです。見事な大声で、響き渡っていました。理想を言えば、この役はもっと若い歌手にやってもらいたいです。20年牢屋にいたわけではないのですからね。このフロレスタン、理想主義者ゆえに不正をみすごせず投獄された堅物というよりは、テームズ河からはいあがって来たファルスタッフみたいでした。

あっと驚く演出はフィナーレでしょうか。フロレスタンとレオノーレが抱き合って喜んでいると、舞台奥から、結婚式の衣装のカップルが三々五々集まって来て、フィナーレの合唱場面になります。視覚的に美しく、楽しくて、単純に気に入りました。演出意図を深く考える気はないです。一幕でも囚人たちは、無機的な感じで描かれて、生々しさは全くなかったのですが、そういうことですから、フィナーレも何も囚人姿の群れである必要もないでしょう。
フィデリオが女だったことに戸惑い、がっかりするマルツェリーネに、ヤキーノがそっと近づいて、花嫁のブーケを手渡すのが微笑ましくて、和やかな気持ちになりました。
フィデリオは、男装を解いて、まず赤のシュミーズ姿になり、元の赤い上着を着ます。とても自然ないい演出だと思いました。

やはりオペラです。舞台を観ながら聴けて、よかったです。ひとつ、二幕、フロレスタンが捕われているところが、すり鉢状にへこんでいたので、一階のかなり前の方で観たため、底の部分、つまり床がどうなっているのかわからず、腰から上ぐらいしか見えなかったのは、ちょっと残念でした。一階後方ならおそらく、二階以上なら当然、よく見えたと思います。どうなっていたのか気になります。


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おさかな♪

生演奏ならではの感想が、euridiceさんの分かり易い説明つきで読めて、とても楽しませていただきました♪
素晴らしい演奏&演出で良かったですね。
by おさかな♪ (2005-06-03 23:33) 

ヴァラリン

お疲れ様でした。
今回も詳細なレポート、熟読させて頂きました(*^_^*)
>フロレスタンは理想主義者ゆえに不正をみすごせず投獄された堅物というよりは、テームズ河からはいあがって来たファルスタッフみたいでした。

きゃはは^^;受けましたわ~~お写真を拝見しましたが正に『言いえて妙』ですわね。

>やはりオペラです。舞台を観ながら聴けて、よかったです
コレに尽きるでしょうね!楽しめたとのこと、何よりです^^
by ヴァラリン (2005-06-03 23:38) 

Sardanapalus

>テームズ河からはいあがって来たファルスタッフ
あははははは(爆笑)縦にも横にも大きい人ですね!写真だと何だか縮尺が間違ってるように見えてしまいます。フィデリオがホビットみたいで(笑)

「フィデリオ」は一度生で見たいんですけどね、なかなか機会が無くて…。素晴らしい演出と演奏だったようで、羨ましいです。本当に、こんなかっこいいフィデリオなら違和感も無いしオペラに入り込めますね。
by Sardanapalus (2005-06-04 20:56) 

Forte

フィデリオはばらの騎士などと同様に、僕にとってかなり初期の段階で好きになった思い入れのあるオペラの一つなんです。でも、残念ながら舞台に接したことがないので、ぜひ、観てみたいですね~。なんだかeuridiceさんの報告を読んでいたら新宿に飛んでいきたくなりました(笑)。

かつて、ザルツブルク音楽祭で大好きなアダムが実に憎憎しくピッツァロを演じたマゼール指揮の上演やバーンスタインのウィーンでの上演記録が好きです。

かつてのベームやカラヤンなどの名演もあってか、トリスタンなど同様、結構、指揮者が目立つ作品だと思いますね。そこらあたりはやっぱりベートーヴェンだな~と思いますけど、今回のオケピットはどうでしたか?
by Forte (2006-12-09 23:14) 

euridice

もしまた再演があったらぜひ!
>アダム
ザルツブルクの映像は、見たことがありませんが、CDはショルティのを専ら^^; 聴いてますが、アダムのピッツァロ、いいですね。
>バーンスタイン
のゾーティンも、これはテレビで見ましたが、冷たい雰囲気が好きです。

>今回のオケピット
私の意見は、印象でしかないのですが、昨年の初演時のほうがよかったなぁ・・・というところです^^;;。表現が繊細で豊かだったように思います。今回、全体的に大味に感じたのは、演技も歌も、そして、たぶんオーケストラもそうだったんだろうと思います。
by euridice (2006-12-10 07:33) 

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