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エディット・ピアフ ~愛の讃歌~ (2007) France / UK / Czech Republic <Môme, La> [film reviews]

so-net blog のkenさん魚河岸おじさん共催の「ゆる会」に参加しました。ミックさんもご一緒し、今作鑑賞後は劇場下のビアホールへ。話が映画から脱線しそうになる度に、「いやいやこの映画は良かったねぇ」というキリ返しが楽しかったデス。「映画好き」といっても、好きな映画のタイプetc.は各人によってバラエティに富むところが、面白いなぁと。誰かが好きな映画を好きじゃなかった人がいても、フラットに何故(好きor嫌い)か?を語りあえるのって心からイイよなぁと思いました。

パリの貧しい家庭に生まれたエディット。路上歌手として小銭稼ぎをしていた荒々しい母の元から、祖母が持つ娼館へ預けられた彼女は、娼婦ティティーヌらに可愛がられるも兵役から戻った父に大道芸のどさまわりに連れていかれてしまう。父の手伝いをする中、歌うことを覚えた彼女はある日、名門クラブオーナーのルイにクラブ歌手としてスカウトされる。これが転機となり実力、知名度共にあげていくが---
 
エディット・ピアフという名は知らずとも、「愛の賛歌」のカバーバージョンは耳に残ってないのか、原曲しか聴いた覚えがない。鼓膜の振れを感じる腹に響く歌声からは、エディットのような痩身かつ小柄な女性像は浮かばなかった。しかし、少女の頃は大きな瞳が泳ぎがちだった彼女も、「水に流して」を謳いあげる頃にはさすがに肝が据わっている。「愛の賛歌」を愛情たっぷりに歌い上げたマルセルとの生涯最大の恋愛から、彼女は生き急ぐようにみるみる成熟してく。嘘偽りなく、壮絶とも呼べる道を歩んだことを潔く受け入れる器の大きさが「水に流して」の歌詞とあまりに響き合っていて、グッときた。
 
今作は時間軸を度々交錯させ、エディットをよく知るファンにも着地点を読ませなかった点は、とても興味深い。ただ、リアルタイムにエディットを知っていたファンが高齢なことを考えると、いささか意地悪にうつったかもしれないけれど。『レイ』しかり、『ブライアン・ジョーンズ~』しかり、ミュージシャンが辿った軌跡には酒・ドラッグ・オンナ(オトコ)が必ず三種の神器的についてまわり、いかに身持ちを崩したかという描写には焼き直しの感がいつもある。『カポーテ』のように「冷血」に費やした数年をクローズアップしたものや、今作のような作りが今後もふえることを期待したい。
 
エディット役のマリオンは感嘆に値する。『プロバンスの贈りもの』なんて目じゃなさすぎる。実在の人をやってアカデミー賞を獲得するルートには辟易していたけれど、彼女には是非という気持ちになる。フランス人というハンデもあって応援したいのかも。親友モモ役のシルヴィー・テステューは、『ビヨンド・サイレンス』の主人公。こちらも音楽が主題になっている心温まる作品として、おススめ。

 
エディット・ピアフ~愛の讃歌 サウンドトラック

エディット・ピアフ~愛の讃歌 サウンドトラック

  • アーティスト: エディット・ピアフ
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2007/09/05
  • メディア: CD
 
ビヨンド・サイレンス

ビヨンド・サイレンス

  • 出版社/メーカー: キング
  • 発売日: 2004/02/25
  • メディア: DVD


監督:オリヴィエ・ダアン <Olivier Dahan> ◇脚本:オリヴィエ・ダアン <Olivier Dahan> イザベル・ソベルマン <Isabelle Sobelman> ◇撮影:永田 鉄男 <Tetsuo Nagata> ◇美術:オリヴィエ・ラウー <Olivier Raoux> ◇衣装デザイン:マリット・アレン <Marit Allen> ◇編集:リシャール・マリジ <Richard Marizy> ◇音楽:クリストファー・ガニング <Christopher Gunning> ◇出演:マリオン・コティヤール <Marion Cotillard> シルヴィー・テステュー <Sylvie Testud> パスカル・グレゴリー <Pascal Greggory> エマニュエル・セニエ <Emmanuelle Seigner> ジャン=ポール・ルーヴ <Jean-Paul Rouve> ジェラール・ドパルデュー <Gerard Depardieu> クロチルド・クロ <Clotilde Courau> ジャン=ピエール・マルタンス <Jean-Pierre Martins> カトリーヌ・アレグレ <Catherine Allegret>


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ken

相変わらずCOOLですねえ。
「水に流して」は本当に名演でした。
グッと来るなんてもんじゃなかったっスよ。

>リアルタイムにエディットを知っていたファンが高齢なことを考えると、いささか意地悪にうつったかもしれない

視点がnice!
by ken (2007-10-20 23:54) 

Sardanapalus

ありきたりな伝記映画と思って敬遠していましたが、そんなに良かったのなら見に行こうかと思います(^^)出演俳優陣は元々気になっていましたしね♪

>親友モモ役のシルヴィー・テステューは、『ビヨンド・サイレンス』の主人公
おおお、懐かしい!こちらも良い映画ですよね!テステューも出ているなら、何とかスケジュールを調整しないと…。
by Sardanapalus (2007-10-21 00:37) 

ミック

「ゆる会」で話をしている時にも思いましたが、
「いろいろな方向から映画を見ているのだなぁ。」と、思いました。
私は毎回、映画について行くのに必死で、余裕がないです。
ものすごい洞察力に感服です^^!
次回の「ゆる会」でも、鋭いクリスさんの話を聞きたいです!
by ミック (2007-10-21 19:44) 

クリス

kenさん、どこか客観的に作品を捉えようとしてるのかもしれませんねぇ。気持ちを入れた感想を書くこともできるんですが、余りに自己満足すぎる気がして。nice!をありがとうございます。

Sardanapalusさん、てすてゅーも成長していて、年月の流れを感じました。あの映画もよかったですよね。心に残ってます。

ミックさん、私も同じことを感じました。kenさんに「『アマデウス』のモーツアルトに似てますね」といわれて、私はあの映画をサリエリ目線でしか観ていなかったんでハッとしましたよ。
by クリス (2007-10-21 20:33) 

ジジョ

こんにちは(^-^)☆
ホント、マリオンにはあげてもいいです。賞を。
変貌ぶりに全然しらない女優かと思ってしまいましたヨ、、
by ジジョ (2007-10-22 00:51) 

魚河岸おじさん

クリスのクールな視点は、何でも熱く語りたがるボクには
風呂上りのビールのような爽快感があります
これからも、潔い記事楽しみにしております
ヨイ記事です・・・・
by 魚河岸おじさん (2007-10-22 19:00) 

魚河岸おじさん

スイマセン
さんを付けるの、忘れてしまいました・・・・
by 魚河岸おじさん (2007-10-22 19:02) 

クリス

ジョジョさん、マリオンには圧倒されましたね~!普段の可愛らしさの面影がなかったデス。さすが女優~。nice!をありがとうございます。

魚河岸おじさん、私も前は熱く語ってた頃もあったのにな~、何故か客観的になってきちゃいました。良いものは良くて、心の奥底じゃとても好きなんですが・・・。
by クリス (2007-10-22 21:29) 

coco030705

こんばんは。だいぶ前に見たんですが、やっとレビューが書けました。
マリオンの演技と歌は本当にすばらしかったですね。映画の現在と過去が交差する描き方もとてもおもしろくて、その意味でもいい映画でした。
TBさせていただきますね。
by coco030705 (2007-12-17 01:28) 

クリス

cocoさん、こんばんは。
コメントが遅くなってしまってごめんなさい!
マリオンの彼女がアメリカ人やったら、完璧オスカーなんですけど。フランス人だったことでどうなるか・・・といった感じですね。
時間軸の動かし方が面白かったです。そのあたりを解析すると、新たな発見がありそうですよね。
nice!をありがとうございました。
by クリス (2007-12-24 22:56) 

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