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今宵、フィッツジェラルド劇場で (2006) US <A Prairie Home Companion> [film reviews]

 アルトマン監督の遺作となった今作。完成後も監督は、次回作に打ち込みつつあったというけれど、今作が最後となるかもしれないという予感は、少なからず持っていたような仕上がり。舞台となった、「プレイリー・ホーム・コンパニオン」というラジオショウは実在し、実在の司会者、ギャリソン・キーラーが本人役をやり、原案も脚本も彼のものとか。

ミネソタはセントポールにある、フィッツジェラルド劇場。歴史ある人気ラジオショウ、「プレイリー・ホーム・コンパニオン」は、最後の生放送の時間を迎えようとしている。収録を前にして、馴染みの出演者達が集まりはじめ、いつもと変わらぬ語り口のギャリソン・キーラの司会と共に、公開放送がはじまる。そんな中、謎の美女の噂が流れたり、劇場を取り壊す会社の役員が顔をみせたり。ただじゃ終わらないショウの裏幕を、思う存分みせていく---

ラジオショーの映像が観られるって、なんとも面白い。例えばTVショーは、"オーディエンスに観られている"という前提の元にエンターテイメントしているから、スターの立居振舞に作り込み感があるけれど、ラジオショーなら司会者、歌手の"声"さえエンターテイメントしていれば、とりあえずOK。ハプニングもアドリブも、そこには私たちとなんら変わらない日常を持つ彼ら(出演者)がいることを感じさせる。特に今作は、公開ラジオといっても劇場にいるオーディエンスはまったく無視した作りになっていて、舞台上の内輪もめや団結、涙、笑いは、明らかに彼らの人生の縮図だ。いつもと変わらず、淡々と司会進行をするギャリソン、陽気な下ネタ笑いを提供する、ダスティ&レフティのカウボーイデュオ、センチな心を健気に隠して、美しいハーモニーを聴かせる、ロンダとヨランダのジョンソン姉妹デュオetc何処から切っても程よい味感があった。

アルトマン監督の作品中、けっこう地味?なのに好きなのは『クッキー・フォーチュン』。痛快なドンデン返しをシラッとやってのけた、ジュリアン・ムーアにノックアウト。『ブギーナイツ』、『ビックリボウスキ』etcの彼女の存在感が、私自身には嫌な方に向いていたけれど、今作のジュリアンにガッツーンとやられて、今じゃいちばん好きな女優になったという記念すべき作。

クッキー・フォーチュン

 

クッキー・フォーチュン

  • 出版社/メーカー: エスピーオー
  • 発売日: 2000/09/08
  • メディア: DVD

最後に。病状のよくないアルトマン監督のスタンバイとして、PTAが現場待機していたことを知り、グッときた。

 

◇監督:ロバート・アルトマン <Robert Altman> ◇原案:ギャリソン・キラー <Garrison Keillor> ケン・ラズブニク <Ken LaZebnik> ◇脚本:ギャリソン・キラー <Garrison Keillor> ◇撮影:エド・ラックマン <Edward Lachman> ◇編集:ジェイコブ・クレイクロフト <Jacob Craycroft> ◇音楽監督:リチャード・ドウォースキー <Richard Dworsky> ステファン・ムーシャ <Stephane Moucha>◇出演:メリル・ストリープ <Meryl Streep> リリー・トムソン <Lily Tomlin> ケヴィン・クライン <Kevin Kline> トミー・リー・ジョーンズ <Tommy Lee Jones> ジョン・C・ライリー <John C. Reilly> ウディ・ハレルソン <Woody Harrelson> ヴァージニア・マドセン <Virginia Madsen> マーヤ・ルドルフ <Maya Rudolph> リンジー・ローハン <Lindsay Lohan> メアリールイーズ・バーク <Marylouise Burke>


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コメント 4

トミュウ

こんばんは!
アルトマンの遺作ということを抜きにしても、この作品見て良かったと思いました。
舞台なんだけど「裏側」みたいな、ラジオならではの面白さがありましたね。
『クッキー・フォーチュン』も気になるなあ。ぜひチェックしたいです。
TBさせていただきます〜。
by トミュウ (2007-04-24 22:55) 

クリス

トミュウさん、こんばんは。
笑える所も多かったのに、私が観た劇場はシーンとしてたから皆さんがどう捉えていたか心配だったんですけどね。
登場する人々にじわじわと親近感を覚えていく作品でした。ラストのダイナーシーンもすごく良かったです。私まで、懐かしさを感じてしまいました。
by クリス (2007-04-24 23:41) 

coco030705

こんにちは。
蟻銀さんが書かれているように、ラジオ番組だからこそ、
出演者達の生の姿が見れたのでしょうね。
心がほんわりと温かくなるような、いい映画でしたね。
TBさせていただきます。
by coco030705 (2007-05-01 09:15) 

クリス

cocoさん、こんにちは♪
ラジオショーの舞台、舞台裏って、そんなに気にしたことなかったんですが、この作品を観ると生々しいやりとりが濃密で、非常に面白かったです。
天使なのか堕天使なのかわかりませんが、彼女の存在がアルトマンらしかったんじゃないかと思います。nice!をありがとうございましたー。
by クリス (2007-05-03 11:12) 

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