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サラ・ウォーターズ 半身 [日記(2008)]


半身 (創元推理文庫)

半身 (創元推理文庫)

  • 作者: サラ ウォーターズ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2003/05
  • メディア: 文庫


 ロバート・ゴダードが面白かったので『積ん読』から引っ張りだしてきました。同じくイギリスのミステリーです。サラ・ウォーターズは、19世紀のロンドンを舞台にした泥棒一家の活躍を『王子と乞食』の少女版?でまとめあげた『荊の城』が面白かったです。本書も19世紀ロンドン、今度は監獄を舞台に謎が展開します。若い貴婦人と女囚という取り合わせは、前作同様の作者好みでしょう。序章で『支配霊』まで登場し、ゴシック・ミステリーには打ってつけの設定です。
 ヒロイン マーガレットが、監獄の奥深くにある凶悪犯を収容した獄舎で、もう一人のヒロイン シライナ・ドーズに出会うくだりが暗示的です。


『その房からは信じられないくらいの静寂が漂ってきた・・・わたしが訝しみだした頃、静けさは破られた。静寂を破ったのはため息、たったひとつのため息-完璧な、まるで物語の中のため息のように聞こえた。』

 物語は、1874年の現在をマーガレット、1872年の過去をシライナと、それぞれが独白する形で進展します。何故マーガレットが監獄を訪れるようになったのか?シライナが監獄に収監された罪の真実とは?それぞれ匂わせてはあるのですが、このふたつの謎でストーリーをひっぱってゆきます。
 題名となっている『半身』とは何なのか(広辞苑によると読んで字の如く、全身の半分)。作者はマーガレットにこう語らせます。

 『私達(マーガレットとシナイラ)は身も心も魂もひとつ-わたしは彼女の半身。光り輝くひとつの魂をふたつに割られた、その半身なのだもの。』

 ネタバレであまり書けませんが、最後にはどんでん返しが用意されていす。結末を読んで、今まで読まされた400頁(全部で483頁)は何なんだ!これがミステリーか?と正直思いました(と言いつつ結構興味津々で頁をめくりましたが)。『荊の城』は泥棒一家が登場し、騙し騙されでミステリー仕立てなのですが、本書はマーガレットとシライナの少女趣味的関係をえんえんと読まされ、挙げ句の果てがコレです。顔文字で言えば^^;でしょう。
 『半身』にミステリーを期待すると?ですが、視点を変えて寓話と考えると違った様相をおびてきます。マーガレットの『物語』は最後に容赦のない現実に打ち砕かれ『妄想』へと転落しますが、これこそが本書の主題であったとすれば、これはなかなか説得力のある『小説』です。
最後の1行
 
『言ってごらん、おまえは誰のものか』
 
これは効きます。
サマセット・モーム賞を受賞しているのもその辺りかと思われます。
 
 ミステリーを期待すると →☆☆
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