司馬遼太郎 この国のかたち(5)(6) [日記(2008)]
先日まで読んでいたアメリカのハードボイルドと本書では落差が激しいです。『この国のかたち』は(4)で中座し、後続を入手したため再開です。
時々の雑誌などの求めに応じて書いた随想209編をまとめると『この国のかたち』がおぼろげに見えてくるという程度のものです。作家の小説や晩年まで精力を傾けた『街道をゆく』の補遺や再録の形をとって『この国のかたち』を語っています。補遺の形をとっているぶん肩が凝らずに読め、また『統帥権』を語るくだりの様に作家の生の姿が現れて面白いです。『鉄』は『街道をゆく』の『出雲路』辺りに、『海軍』は『坂の上の雲』あたりと内容がだぶっています。司馬遼ファンにはおなじみの展開でしょう。
(6)の『雑話・船など』では
「昭和40年代のいつごろからか、私は書斎の中の船乗りになった。
余儀ないことながら、一種の船ぐるいだった。道を歩いていても、体にあたる風のことをあれこれ考えたりした。いまは西北の風だから帆をどのように上手廻しして”まぎり”して風上にのぼってゆかねばならない、といったぐあいであった。」
『坂の上の雲』『菜の花の沖』を書いている頃のことらしいのですが、司馬遼さんが道を歩きながら風を感じて、空想で帆船を操船している様を想像すると思わず笑ってしまいます。ほほえましい記述です。
あまり面白くありません →☆☆★★★
コメント 0