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マイクル・コナリー ブラック・アイス [日記(2008)]

ブラック・アイス (扶桑社ミステリー)

ブラック・アイス (扶桑社ミステリー)

  • 作者: マイクル コナリー
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 1994/05
  • メディア: 文庫


 運良くボッシュ・シリーズ第2作を入手しました。
 冒頭でエレノア・ウィッシュからクリスマスカードが届いていますから、(前作を読むと)第1作から1年か2年の後の物語です。ハリウッド署でのボッシュの上司パウンズも、ロス市警の内務監査担当のアーヴィン・アーヴィングも引き続き登場し、『ロス市警のはきだめ』から逃れられず未だハリウッド署にいるわけです。
 第1作が『ブラック・エコー』第2作『ブラック・アイス』第3作が『ブラック・ハート』ですからブラック・シリーズですね。ブラック・エコーは、ヴェトナムのゲリラが潜む死のトンネルのことでした。今回は麻薬です。

 クリスマスの夜、ボッシュの同僚の麻薬捜査官が
『おれは自分がなにものなのかわかった』
という遺書めいたものとボッシュに宛ての麻薬捜査ファイルを残し、散弾銃で頭を撃って自殺するところから幕が上がります。事件を自殺として片づけたい上層部、自殺に納得できないボッシュは組織からはみだした捜査を開始します。
 今回もボッシュは警察組織からはスポイルされた存在です。強盗殺人課に在籍しているにもかかわらず、警官殺しという重要事件からは意識的に外され、年度末に検挙率の帳尻を合わせるためだけに事件が押しつけられます。押しつけられた事件を追ううちに、殺された同僚の麻薬捜査とのつながりが出てきて、物語は『ブラック・アイス』へと一気に傾斜してゆきます。そして、第一作に続き、本書でもアッと驚くような結末が準備されています。

 この第2作でボッシュの生い立ちが明らかにされます。第1作でも孤児であったことは記されていますが、孤児院と里親を転々としたこと、父親を捜し当てたことが語られます。
 シリーズでは、ボッシュが周囲の迷惑も気にせず煙草を喫う場面が多いですね。組織から逸脱し、文字通り煙たがれる存在を際だたせています。洋の東西を問わず、刑事(または市立探偵)に煙草は付き物でしょう。ボッシュも大抵顰蹙を買うわけで、本書では、恋人の検死医から真っ黒な肺を見せられたりします。きっと作家もスモーカーでしょうね、実生活で遠慮しながら喫煙している反動が反映しているのかもしれません。
 もうひとつ、タフで魅力的な中年女性が登場して堅物のボッシュの心をとらえることもシリーズのお決まりです。『ナイトホークス』ではエレノア・ウイッシュ、『天使と悪魔の街』では●、本書でもシルビアなる女性が登場します。ボッシュが40代前半?の中年ですから、丁度いいカップルかもしれません。
 さらに毎回の如く、IAD(内務監査担当)が敵役として登場します。ボッシュは身内のIADとも戦いながら捜査をしなければならないのです。ボッシュが組織からはみ出た警官だからIADの監査対象となるのか、IADが監査するからますますはみ出た行動をとるのか、ともあれ身内の敵をよういすることで、一匹狼、喧嘩屋、殺し屋のボッシュが際だってくるわけです。
 ハリー・ボッシュ シリーズを読む楽しみは、負の経歴を背負った刑事が、有能であるが故に一匹狼となり、身内の敵と戦いながら事件を解決してゆく面白さなのです。ひょっとして、ボッシュのビルドゥンクス・ロマン刑事版を読むことになるのでしょうか?

ナイトホークスの方が好み →☆☆☆★★


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