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レイモンド・チャンドラー かわいい女 [日記(2007)]

かわいい女 (創元推理文庫 131-2)

かわいい女 (創元推理文庫 131-2)

  • 作者: レイモンド・チャンドラー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1959/06
  • メディア: 文庫

 『かわいい女』も清水俊二の訳である。奥付を見ると初版が1959年で1993年に第66刷である。1959年以来34年間改訳されずに版を重ねているとは驚く。アマゾンで調べると2007年現在も改訳された様子はない。48年間そのまま版を重ねたことになる。財布を「紙入れ」、売春宿を「曖昧宿」など今や死語となった訳語には恐れ入るが、そうした時代がかった訳語の古めかしさを別にすれば、(『長いお別れ』同様に)清水俊二の訳は軽快でしゃれている。

 これは訳者の才能なのだろうが、原文もすばらしいに違いない。村上春樹が清水俊二訳の『長いお別れ』を読んでいたかどうかは別にして、魅力的な英文を自分の言葉で日本語に置き換えたいと思ったことは十分に想像できる。原題はThe little sister。清水俊二はこれを『かわいい女』と訳した。本書の最後の方、オファメイがマーロウを訪ねた場面。かかってきた電話の向こうで女(ドロレス)が云う「小さなねえちゃんが行かなかった?」。原文はlittle sisterのはずである。チャンドラーは題名もこの場面もlittle sisterと書き、清水俊二は『かわいい女』と「小さいねえちゃん」と訳語を変えた。この辺りのチャンドラーと訳者のコンビネーションも本書の魅力である。しかしながら、1959年とは云え、「ねえちゃん」はないでしょう清水さん。

 チャンドラーのハードボイルドは「巻き込まれ型の社交小説」だと丸谷才一が書いていた。社交小説であるかはともかく、マーロウはオファメイから失踪した兄の捜索依頼を引き受け、麻薬とセックスとギャングにまみれたハリウッド映画界の奥深くにある事件に巻き込まれてゆく。事件の謎解きとしゃれた会話と名訳が楽しめる。 →☆☆☆☆


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